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中東ビジネスのリスクマネジメントのあり方と実務対応|イスラエルの地政学リスクとオポチュニティおよび現地法律実務の論点


座談会メンバー

パートナー

大澤 大

M&A・コーポレート案件の豊富な経験と、日米欧中をはじめとする各国の経済安全保障に関する深い政策・運用知見を融合し、企業法務全般をサポート。経産省で外為法等の立案から審査・執行、各国連携まで担った経験を背景に、戦略的かつ実務的な助言を提供している。

アソシエイト

松永 隼多

国内外のM&A、買収ファイナンス、金融取引等、企業法務全般にわたりアドバイスを提供している。また、欧州及び中東地域における執務経験を踏まえて、欧州・中東・アフリカ地域における日系企業に関連する法律業務に従事している。

KPMGコンサルティング 地政学・経済安全保障リスク支援サービス マネジャー

滋野井 公季

地政学リスク対応、中長期戦略策定に向けたビジネス環境分析、企業のインテリジェンス機能・体制構築支援、公共部門向けの経済安全保障関連支援などに従事。同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士課程満期退学。アルジャジーラ研究所客員研究員、ハマド・ビン・ハリーファ大学客員研究員、外務省専門分析員などを経て2024年より現職。

CHAPTER
01

イスラエルのビジネスオポチュニティ

大澤

第4回は、イスラエルを取り上げます。イスラエルは、UAEやサウジアラビアなどの他の中東諸国とは異なる性質のオポチュニティやリスクを有していると理解しています。たとえば、イスラエルは、中東屈指の先端技術を有する国であり、日本でも、イスラエルのスタートアップや教育システムなどへの関心が集まっています。まずは、イスラエルにおけるビジネス面でのオポチュニティについて伺いたいと思います。

滋野井

イスラエルは「スタートアップ・ネーション」と呼ばれるほどスタートアップが盛んで、テック系企業の巨大なエコシステムがあり、人口当たりのスタートアップ数は世界トップクラスと言われています。7,000社ほどの新興企業と500社以上のベンチャーキャピタルがあり、国内外から活発な投資が行われています。特にテック系に強く、AI・機械学習やサイバーセキュリティ、ヘルスケアやフィンテックなどが有名です。またアメリカにとって中東の最重要国であり、防衛産業も強固です。
CHAPTER
02

イスラエルの地政学リスク

大澤

日本における防衛費増額の方向性が明確になるなか、イスラエルの防衛産業についても、日本との関係を含め、今後ますます注目を集めていくことになると思います。そこで、イスラエルの地政学リスクや安全保障リスクといった点を含め、イスラエルの地政学の概観についてご説明いただけますでしょうか。

滋野井

イスラエル関連の地政学リスクは大きく2つあると言われています。1つは、同国の安全保障上の脅威として、たとえばイランと再び交戦に発展した際に市街地にミサイルが着弾するリスクや、北部でヒズブッラーと衝突して被害が出る恐れがあります。またはフースィー派のミサイルやドローン攻撃の脅威もありますが、その多くは迎撃されているので被害のリスクは少ないと評価できるでしょう。パレスチナ自治区(ガザ地区)では停戦合意のフェーズ2に差しかかっており、安全保障上のリスクは以前より低いと見積もられています。
もう1つ、よく指摘されているのが、レピュテーション上のリスクです。パレスチナ自治区での戦闘は国際的に大きな批判がありました。現在、昨年10月にトランプ大統領が提案した20項目の停戦案に基づき、第1フェーズの停戦と人質交換がなされ、現在第2フェーズに移行していますが、依然として先行きは不透明であり、イスラエル側の停戦違反なども報告されていました。今後は米国が主導して設立した「平和評議会」や「暫定統治機関」による監督・統治が行われていくと言われていますが、先行きが不透明ななか、特にイスラム圏で事業をする場合、このレピュテーションの問題は無視できないものだと思います。

大澤

確かに私たちがイスラエルに関して企業からご相談いただく内容にもレピュテーションリスクに関するものが少なくありません。後ほど議論するように、イスラエルに関しては、それぞれの属性や立ち位置等によって見方が異なるところがあり、この点も意識したリスクマネジメントが必須といえます。
一方で、中東で最大のリスクとしてイスラエルとイランとの戦争が挙げられると思いますが、この対立が再燃するリスクはあるのでしょうか。

滋野井

結論から述べると、今後数年以内にイスラエルとイランが再び交戦するリスクは高いと見られています。
2025年6月13日にイスラエルの対イラン攻撃で開始された「12日間戦争」ですが、世論調査ではイランに対する攻撃を82%が支持したという統計があります。さらに、攻撃自体は支持するがタイミングは支持しないという評価が10%程度なので、合計すると9割近くがイランに対する攻撃を支持したという調査がありました。他の世論調査でも73%がイラン攻撃を支持しているということなので、基本的には世論の支持を得てイランに対する攻撃が実行されたと言えます。世論の同意が得られているのは大きな点です。
また、「12日間戦争」において、イスラエルはイランの非核化と体制転換が目的だと公表していましたが、この2つの軍事目標は達成されぬまま停戦に至りました。中東の周辺国はアメリカやイスラエルに対して攻撃を留まるように仲介外交を展開していると報じられていますが、事態は緊迫化しています。
このような背景のもとで、2025年末からイランで大規模な反政府デモが起きており、イランの政権側の対応を米トランプ大統領は厳しく批判し、軍事的オプションの行使も示唆しています。中東での戦力展開などさまざまな兆候から、多くの専門家が、アメリカやイスラエルが再びイランへの攻撃を再開する可能性が高まっていると分析しています。これはイスラエルにとって最大の安全保障上のリスクです。
イスラエルのリスクとオポチュニティおよび現地法律実務の論点 イスラエルのリスクとオポチュニティおよび現地法律実務の論点
CHAPTER
03

総合的リスクマネジメントの重要性

大澤

このようなイスラエルの複雑かつ多面的なリスクを有する状況を踏まえると、イスラエル関連については、抽出した特定のリスクごとにそれぞれ個別の評価・手当を加えるだけでは十分ではなく、レピュテーションリスクを含めて総合的に評価・考慮したうえでのリスクマネジメントを行う必要性が高いといえます。たとえば、イスラエル企業と取引すると、快く思わない立場の人たちからデモや不買運動を受ける可能性がある一方、反対にイスラエル企業とは取引しない方針を明らかにすると、親イスラエルの企業とのビジネスに差し障りが生じることもあり得ます。

松永

実際にはさまざまな立場や利害関係を有する当事者がいるなかで、どの立場からレピュテーションリスクを評価すべきか悩ましいですよね。

大澤

おっしゃるとおり、レピュテーションリスクは、日本国内だけを見れば良いのではなく、アメリカ、欧州、アジア、あるいはイスラム圏など、それぞれの立場からどのように評価されうるのかという点も考慮する必要があり、実務的には悩ましいポイントです。そのため、取引相手となるイスラエル企業の属性や具体的な取引関係の内容はもちろん、自社の事業領域やステークホルダーの属性等も踏まえた総合的な検討等を通じて、バランスの取れたリスク評価とリスクマネジメントを行う必要があります。

滋野井

イスラエルには先端的な技術を持つ企業が多く、サプライチェーンの中にイスラエル企業との取引が含まれているというケースも少なくないと理解しています。

大澤

サプライチェーンの中のイスラエル企業との取引に関して、その重要性や位置づけを見つめ直すということは検討に値します。情勢次第ではイスラエル企業との取引方針について考え直さなければならないという場面もあり得ますが、先端技術がかかわる領域や防衛関連の領域等を中心に一筋縄ではいかないこともあるでしょう。そうした事態に備えて、平時から取引関係の位置づけや代替可能性を意識した検討を行っておくことがポイントですね。
イスラエルのリスクとオポチュニティおよび現地法律実務の論点

本座談会は、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。

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