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ニュースレター

暗号資産への投資と金融商品取引法 ―暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告を受けて―

著者等
佐々木修星野慶史(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T FinTech Legal Update ~FinTechニュースレター~ No.10(2025年12月)
業務分野
キーワード

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 金融審議会の暗号資産制度に関するワーキング・グループにおいて暗号資産に係る規制のあり方について議論がなされてきましたが、2025年12月10日にこれまでの議論を取りまとめた報告書※1(以下「本報告書」といいます。)が公表されました。

 本報告書は、「暗号資産投資についてお墨付きを与えるものではない」との留保を付しつつも、暗号資産の規制法を資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます。)から金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)に変更した上で、暗号資産を有価証券とは異なる規制対象として位置付けて、各種の規制見直しの方向性を打ち出しています。

 規制見直しの対象事項は多岐に亘りますが、本ニュースレターでは、暗号資産が投資対象に含められてきている状況を踏まえ、暗号資産の利用者の観点から特に重要と思われる情報提供規制及びインサイダー取引規制について、本報告書を基に現時点で想定される規制を概観します。

今般の規制見直しの概観※2

 本報告書は、暗号資産を巡る喫緊の課題として以下の事項を掲げています。

  1. 情報提供の充実
  2. 適正な取引の確保・無登録業者への対応
  3. 投資運用等に係る不適切行為への対応
  4. 価格形成・取引の公正性の確保
  5. セキュリティの確保

 その上で、これらの課題は、伝統的に金商法が対処してきた問題と親和性があると考えられることから、金商法の規制枠組みを活用することが適当であるとしています。もっとも、有価証券は権利を表章するものが対象となっているのに対して、暗号資産は必ずしも権利を表章するものではなく、本報告書においては暗号資産は有価証券とは別の規制対象として金商法において規制されることが適当であるとしています。

 なお、金商法で規制対象とする暗号資産の範囲については、現行法上の暗号資産※3とすることが適当であり、資金決済法上の暗号資産に該当しないNFTやステーブルコインは、金商法の規制対象外とすることが想定されています※4

情報提供規制※5


1. 総論

 暗号資産の取引としては、有価証券の取引と同様に、新規に販売される暗号資産の取引と既に流通している暗号資産の取引があるところ、いずれの場合においても、取引の判断を行うために必要となる情報が利用者に提供されることが重要です。かかる観点を踏まえ、本報告書では、利用者に対し新規販売時の情報提供及び継続的な情報提供の両方が行われることが想定されています。


2. 新規販売時の情報提供

 利用者に対する新規販売時の情報提供としては、暗号資産の取扱いを行う交換業者や中央集権的管理者(存在する場合)が以下の情報提供を行う必要があるとされています※6

新規販売時に情報提供される内容

情報のカテゴリー 項目の例
1 暗号資産の技術性・専門性に関する情報 暗号資産の性質・機能や供給量、基盤技術、付随する権利義務、内在するリスク等
2 中央集権的管理者に関する情報(中央集権的管理者が存在する暗号資産の場合) 当該者の情報、調達資金の使途に関する情報、対象事業に関する情報、暗号資産の保有状況等
3 リスクに係る情報
  • 時価総額、流通状況(流動性リスク)
  • 発行済数量、発行可能数及びその変更可否、過去の発行・償却状況、今後の発行・償却予定、中央集権的管理者及びその関係者の保有状況(希薄化リスク)
  • 中央集権的管理者に関する情報、調達資金の使途、利用状況、対象事業の事業計画、対象事業の進捗の状況(事業リスク)
  • 価値移転認証の仕組み、コード監査・セキュリティ監査に関する情報(技術・運営上のリスク)
4 商品性に係る情報 暗号資産の開発経緯や技術、トークノミクス、ユーティリティに関する情報

出典:本報告書10~11頁をもとに当職らにて作成


3. 継続情報提供


(1) 適時の情報提供

 暗号資産の取引判断に重大な影響を及ぼす事象が発生した場合には、新規販売時に情報提供した暗号資産の発行者又は交換業者に対し、適時の情報提供を行うことを義務付けるべきとされています※7


(2) 定期的な情報提供

 発行者の事業活動等(発行者に関する情報や調達資金の利用状況、対象事業の進捗状況、発行者やその関係者の保有状況に関する情報等)について、適時の情報提供を補完するものとして、適時の情報提供義務を負う発行者に対し、定期的な(年1回)情報提供を行うことを求めることが想定されています※8

インサイダー取引規制※9


1. 概要

 金商法では既に暗号資産も一定の不公正取引規制の対象となっていますが、本報告書では暗号資産についてインサイダー取引規制等についても整備すべきであるとの指摘がなされています※10。本報告書により示されたインサイダー取引規制の概要は以下のとおりです。

暗号資産に係るインサイダー取引規制の概要

出典:本報告書の参考資料30~33頁をもとに当職らにて作成

 暗号資産を利用(投資)しようとする機関投資家や企業との関係では、大口取引に該当すれば「大口取引を行う者の関係者」として直接的に規制対象者とされますが、そうでなくとも、図中のメインの規制対象者から重要事実の伝達を受ける場合には、第一次情報受領者として規制対象となる可能性がある点に留意が必要です。


2. 課徴金制度・その他のエンフォースメント

 不公正取引規制の実効性を確保するため、上場有価証券等の不公正取引規制と同様に、インサイダー取引を含む不公正取引について、課徴金制度や証券取引等監視委員会における犯則調査権限の創設等により、エンフォースメントの実効性を確保し、違反行為への抑止力を高めるべきとされています※11

最後に

 本ニュースレターでは、暗号資産の利用者(投資者)の観点から重要と思われる、情報提供規制及びインサイダー取引規制について、本報告書に基づいて現時点で想定される規制を概説しました。

 この点、利用者の観点では、情報提供規制により充実化される情報を検討して投資判断を行いつつ、また、インサイダー取引規制を始めとした不公正取引規制に抵触することのないよう留意する必要があるなど、利用・投資に係る行動様式や社内体制構築への影響が予想されます。

 暗号資産を巡る規制は、本報告書を受け、更なる議論の結果変更を受ける可能性がありますが、暗号資産の利用(投資)の開始・拡大を検討する場合においては、規制の動向を注視しつつ上記のような影響について現時点からイメージできるようにしておくのが有用と思われます。本ニュースレターが、そうした検討の一助となれば幸いです。

脚注一覧

※2
本報告書4~9頁

※3
資金決済法第2条第14項参照

※4
また、規制の複雑化等を避ける観点から、暗号資産に係る規制は資金決済法から削除することが適当であるとされています。

※5
本報告書9~19頁

※6
なお、暗号資産の発行者や交換業者による少人数(49名以下)又はプロ投資家(適格機関投資家)向けの勧誘については、情報提供規制が免除されることが適当であるとされています。

※7
本報告書15頁

※8
本報告書15~16頁

※9
本報告書30~35頁

※10
インサイダー取引規制の他には、例えば、安定操作取引の禁止の規定についても整備することが適当であるとされています。

※11
本報告書34頁

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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