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令和8年度税制改正大綱③:パーシャルスピンオフ税制の改正

著者等
堀内健司水越恭平(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Tax Law Update ~税務ニュースレター~ No.49(2025年12月)

セミナー

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「令和8年度税制改正大綱」につきましては以下もご参照ください。

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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1.はじめに

 2025年12月19日、与党による「令和8年度税制改正大綱」(「与党大綱」)が公表された。与党大綱の内容は多岐にわたるが、本ニュースレターでは、特に重要な改正と思われる、パーシャルスピンオフ税制に関する改正を取り上げる。なお、与党大綱における他の重要な税制改正については、税務ニュースレター「令和8年度税制改正大綱①:国際課税(グローバル・ミニマム課税、CFC税制、移転価格税制、物品に関するプラットフォーム課税)」及び「同②:暗号資産取引の分離課税」を、それぞれ参照されたい。また、本ニュースレターは与党大綱から推測して読み取れる内容を踏まえて記述しており、最終的な法令等の内容と異なる可能性がある点にはご留意いただきたい。

 なお、2026年1月21日に当事務所が開催予定の「ADVANCE企業法セミナー」では、経済産業省経済産業政策局産業組織課のご担当者をお招きし、パーシャルスピンオフ税制の改正案とともに、同改正案の実務への影響の解説を予定している。

2.パーシャルスピンオフ税制に関する改正(与党大綱106頁)

(1) 今般の与党大綱に至るまでの経緯・背景

 令和5年度税制改正において、親会社が保有する完全子会社の持分を一部(20%未満)残したスピンオフ(パーシャルスピンオフ)について、2023年4月1日から2024年3月31日までの間に産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けることを要件とする1年間の時限措置として、適格組織再編同等に扱われることになった(認定株式分配と呼ばれる)(税務ニュースレターNo.19参照)。その後、令和6年度税制改正において、適用期限が2028年3月31日まで延長されるとともに、スピンオフされる完全子会社が主要な事業として新たな事業活動を行っていることといういわゆる「新事業活動要件」が加えられることになった(税務ニュースレターNo.25参照)。新事業活動要件はパーシャルスピンオフ税制がスタートアップ創出のための措置と位置づけられたことを踏まえたものであると思われる一方※1、安定的な事業収益が直ちに見込まれないスタートアップをスピンオフし上場させることは現実には想定されにくく、パーシャルスピンオフ税制の利用を困難にするものであるなどといった批判もあったところ、現に本ニュースレターの発行日である2025年12月26日時点で令和6年度税制改正後にパーシャルスピンオフに係る事業再編計画の認定を受けたものは存在しなかった※2

(2) 今般の与党大綱の概要

 今般の与党大綱においては、パーシャルスピンオフ税制が恒久化されるとともに、新事業活動要件が廃止され、新たな事業再編計画認定要件が制定されることとなった。その内容は、与党大綱から必ずしも明確ではない部分もあるものの、以下の【図表】のとおりと考えられる。なお、以下で「現物分配法人」とはスピンオフ実施法人を、「完全子法人」ないし「株式分配に係る完全子法人」とはスピンオフ対象法人を意味する。

【図表】与党大綱におけるパーシャルスピンオフの税制適格要件(下線部が現行法との差異)

要件 内容
株式按分交付要件 2026年4月1日以降に産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けた法人が、特定剰余金配当※3として行う現物分配であって、完全子法人の発行済株式等の100分の80超が移転するもので、現物分配法人の各株主等の有する持株数に応じて完全子法人の株式のみが交付されること。
非支配要件 現物分配法人が株式分配の直前に他の者による支配関係がない法人であり、かつ完全子法人が株式分配後に他の者による支配関係があることとなることが見込まれていないこと。
役員継続要件 株式分配前の完全子法人の特定役員※4のすべてが株式分配に伴って退任をするものでないこと。
従業者継続要件 完全子法人の株式分配の直前の従業者のうち、その総数のおおむね100分の80※5以上の従業者が完全子法人の業務に引き続き従事することが見込まれていること。
事業再編計画認定要件 現物分配法人及び株式分配に係る完全子法人が事業の成長発展が見込まれるものとして次のすべての要件を満たし、事業再編計画の認定を受けていること。

  1. 現物分配法人(現物分配法人がその経営を実質的に支配していると認められるものとして一定の関係を有するものを含む。)のその現物分配前に行う事業のうちいずれかの事業について、現物分配法人がその経営資源を集中させるものとして特定しており、かつ、その特定した事業がその現物分配後に現物分配法人(現物分配法人がその経営を実質的に支配していると認められるものとして一定の関係を有するもの(株式分配に係る完全子法人以外の法人で、その一定の関係が継続することが見込まれているものに限る。)を含む。以下同じ。)において引き続き行われることが見込まれていること。
  2. 株式分配に係る完全子法人の現物分配前に行う主要な事業が上記(i)の特定した事業以外のものであり、かつ、その主要な事業が現物分配後に当該完全子法人において引き続き行われることが見込まれていること。
  3. 現物分配法人及び株式分配に係る完全子法人が実施する主要な事業について、その現物分配により生産性向上に関する目標の達成が見込まれること。

(3) 若干のコメント

 まず、パーシャルスピンオフ税制が恒久化されることになったこと、新事業活動要件が廃止されることは、その利用機会の拡大に向けた大きな前進といえる。

 次に、実務上の留意点としては、事業再編計画認定要件の(i)において、「現物分配法人がその経営資源を集中させる」事業を「特定」することが求められることになった。この「特定」については事業再編計画認定の審査手続の中で確認されることになると思われるところ、確認のために提出が求められる資料やその特定の粒度は今後注視する必要がある。例えば、2025年10月1日に実行されたソニーグループによる金融事業のパーシャルスピンオフでは、それに先立つ2023年5月18日にパーシャルスピンオフの検討開始に関する適時開示を実施しているところ※6、こういった適時開示等の対外公表の前提となる機関決定で足りるのかどうか、それ以上の具体的な機関決定やその議事録等の提出が求められるのか、注視が必要である。

 事業再編計画認定要件の(i)及び(ii)のとおり、現物分配法人(スピンオフ実施法人)と完全子法人(スピンオフ対象法人)の事業継続要件が課されている。これらが事業再編計画認定の審査手続において確認されることになるのか、現行法における完全子法人(スピンオフ対象法人)の事業継続要件同様に、事業再編計画認定の審査手続における直接の確認対象とはならないのか、事業再編計画認定の審査手続における確認対象となる場合にはどのような資料の提出が求められるのかは、与党大綱には明記されていないため、改正法令や事業再編の実施に関する指針等での確認を要する。なお、現物分配法人(スピンオフ実施法人)の事業継続要件は現行法では要求されていなかったものであり要件が加重されているといえるが、事業再編計画の認定を得るにあたっての事実上の前提となっていた側面もあるほか、「現物分配法人がその経営を実質的に支配していると認められるものとして一定の関係を有するもの(中略)を含む」として現物分配法人(スピンオフ実施法人)のグループ会社による事業継続でも足りることとされており、現物分配法人(スピンオフ実施法人)と事業を行うグループ法人が異なる場合やスピンオフ実行後の現物分配法人(スピンオフ実施法人)のグループ内における事業再編にも配慮されているといえる。

 最後に、事業再編計画認定要件の(iii)において、現物分配法人(スピンオフ実施法人)に加えて完全子法人(スピンオフ対象法人)が実施する主要な事業について、スピンオフにより生産性向上に関する目標の達成が見込まれることという要件が定められている。従前は、事業再編計画の策定主体は現物分配法人(スピンオフ実施法人)であることから、完全子法人(スピンオフ対象法人)の生産性向上に関する目標の策定は求められていなかった。例えば、ソニーグループによる金融事業のパーシャルスピンオフでは、その事業再編計画※7は現物分配法人(スピンオフ実施法人)たるソニーグループ株式会社のみが策定主体となって、計画の対象となる事業は「(ソニーグループの)金融事業を除く全ての事業」と位置づけられていた。この点、今回の見直し後においては完全子法人(スピンオフ対象法人)における目標も盛り込まれることとなるため、当該完全子法人も事業再編計画の策定主体となるのかという点や、当該完全子法人にも生産性向上以外の指標が要求されることになるのかという点は今後の確認を要するほか、事業再編計画認定の策定プロセス・内容に大きな変容をもたらすものといえる。

脚注一覧

※1
与党令和6年度税制改正大綱9頁

※2
2025年10月1日に実行されたソニーグループによる金融事業のパーシャルスピンオフは、新事業活動要件のない令和5年度税制改正当時の適格要件を前提とするものである。なお、同事案については、堀内健司・水越恭平「ソニーグループによる本邦初の認定株式分配を利用した金融事業のパーシャル・スピンオフ上場の解説」(旬刊商事法務2410号29頁)を参照されたい。

※3
産業競争力強化法31条1項。スピンオフを行う場合には配当決議において現物配当の場合の金銭分配請求権を排除する必要があるところ、同条は、当該決議要件(会社法309条2項10号)を緩和するための規定である。

※4
社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう(法人税法施行令4条の3第4項2号)。

※5
現行法では、100%スピンオフにおける税制適格要件の100分の80という割合が、パーシャルスピンオフでは100分の90という割合に加重されているが、与党大綱ではこれを100%スピンオフと同一の割合に緩和することとされている。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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