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令和8年度税制改正大綱⑤:防衛増税関係(源泉徴収廻り)

著者等
平川雄士
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Tax Law Update ~税務ニュースレター~ No.51(2026年1月)
関連情報

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「令和8年度税制改正大綱」につきましては以下もご参照ください。

業務分野

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 与党による令和8年度税制改正大綱(「本大綱」)の解説の第5弾として、防衛増税(防衛力強化に係る財源確保のための税制措置)関係(136頁)につき、源泉徴収の廻りに焦点を当てて、簡潔に触れたいと思います。第1弾から第4弾までのトピックと比べれば、極めて地味なものではありますが、実務上は重要なところです。

所得税額の1%分の防衛増税、しかし源泉税率は当面は変更なし

 令和8年度税制改正により、「防衛特別所得税」を創設する改正が行われます。この改正は、昨年の令和7年度税制改正では、政治状況ゆえに見送られていたところです。

この改正は、要するに、以下のようなものです:

  1. 防衛特別所得税の税率は、所得税額の1%
  2. 防衛特別所得税の課税期間は、当分の間
  3. 現行の復興特別所得税の税率が1%下がり、所得税額の1.1%となる
  4. 現行の復興特別所得税の課税期間を、令和29 年(2047年)末まで延長
  5. 以上は、令和9年(2027年)分以後につき適用
  6. 個人の申告所得税のみならず源泉徴収に係る所得税についても当然適用あり

六 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置

1 防衛特別所得税(仮称)の創設

(1) 納税義務者
  1. 所得税の納税義務者は、基準所得税額につき、防衛特別所得税を納める義務がある。
  2. 所得税の源泉徴収義務者は、その源泉徴収に係る所得税の額につき、防衛特別所得税を徴収し、納付する義務がある。
(2) 税額の計算
  1. 防衛特別所得税額は、その年分の基準所得税額に1%の税率を乗じて計算した金額とする。
  2. 防衛特別所得税の課税期間は令和9年以後の当分の間とする。
  3. 基準所得税額の計算その他上記①及び②以外の税額の計算については、復興特別所得税と同様とする。
(3) その他
  1. 申告、納付等、源泉徴収等、質問検査権及び罰則等については、復興特別所得税と同様とする。
  2. その他所要の措置を講ずる。

2 復興特別所得税の改正

  1. 復興特別所得税の税率を1.1%(現行:2.1%)に引き下げる。
  2. 復興特別所得税の課税期間を令和29 年まで(現行:令和19 年まで)の間とする。
  3. その他所要の措置を講ずる。

(注1)上記(1)の改正は、令和9年分以後の所得税等について適用する。

(注2)令和8年度税制改正後も、東日本大震災からの復旧・復興に要する財源については、引き続き責任を持って確保する。

 租税法務の実務家として、所得税につきこの種の付加税としての増税がある場合に最も気になる点は、源泉税の税率です。特に、資本市場・金融関係の取引案件では、課税関係の開示書面を正確に書く必要があるため、この点が重要となってきます。源泉税の税率は、日本国内の取引だけの問題ではなく、非居住者・外国法人が関係するクロスボーダー取引(外債発行やグローバルオファリング案件など)においても当然ながら問題となります。また、当職らの職責外ですが、源泉税率の変更がありますと、取引に係る各種システムの改修等々も必要となります。

 この点は、もう今や昔となりますが、復興特別所得税が導入された際に表面化しました。従前は、金融取引関係の源泉税率といえば、15%や20%といったキリのいい数字だけ頭に置いておけばよかったのですが、2013年から復興特別所得税が課されることとなり、その準備段階から、同税を考慮に入れた源泉税率をどのように正確に記載すればよいのかという点が一応は検討されました。

 結論としては、現状の実務もそうですが、現行の復興特別所得税の税率(所得税額の2.1%)を源泉所得税の税率に織り込んで表記した、15.315%(源泉所得税15%および復興特別所得税0.315%)、20.315%(源泉所得税15%および復興特別所得税0.315%ならびに住民税5%)や20.42%(源泉所得税20%および復興特別所得税0.42%)などといった、小数点以下を含む見慣れない数字での記載がなされることになりました。今や、これらの数字は、もはやお馴染みのものとして実務に定着していると思います。同様に、個人の申告所得税についても、いわゆる限界税率としては、55.945%という数字(所得税45%、復興特別所得税0.945%および住民税10%)が定着していると思います。

 そのような中で、所得税率に変更がありますと、また源泉税率が変わるのは面倒だな、との思いがあるわけですが、結論としては、当面は(=令和29 年(2047年)末までは)、トータルでの源泉税率は上記のままで変更はないことになります。すなわち、防衛特別所得税が1%課される(プラス)代わりに、復興特別所得税が1%減って(マイナス)1.1%となるので、トータルでの2.1%は変わらないということです。本大綱には明言などはありませんが、この措置は、源泉税率を変更することの実務的な煩雑さに配慮したものであるともいえるのかもしれません。

源泉税の課税期間やブレイクダウンの記載については、変更の対応要

 とはいえ、以下の各点については、実務対応として、現状の記載を変更する必要があるものと考えられます:

  1. 2.1%のブレイクダウンには変更が生じます。例えば、現状において「15.315%(源泉所得税15%および復興特別所得税0.315%)」などという文言で開示がなされている場合は、「15.315%(源泉所得税15%ならびに復興特別所得税0.165%および防衛特別所得税0.15%)」などという文言に変更する必要が生じるものと思われます。
  2. 課税期間について、復興特別所得税については、現状は令和19 年(2037年)末までと開示されていると思われますが、令和29 年(2047年)末までと記載を変更する必要が生じます。他方で、防衛特別所得税の課税期間は、「当分の間」とされており、これは実務的には無期限つまりは半永久であることを意味します※1。すなわち、防衛特別所得税と復興特別所得税とでは、課税期間にズレが生じます。防衛特別所得税についても令和29 年(2047年)末までと記載するのは、テクニカルには正しくないということになります。
  3. いつから変更が生じるかについては、源泉税については、令和9年(2027年)1月1日以後となります。
  4. 上記の変更対応をすべき時期も問題ではあります。法的には、開示書面の作成時点が、令和8年度の税制改正法案が可決され法律として成立し公布された時点(つまりは3月末頃)以後となる場合に、上記の記載の変更を行うというのが筋であるように思われます。なお、本大綱及びこれを受けた政府の大綱が出ている以上は、既に現時点で、法案の可決成立と公布を条件としてということで、上記の変更につき触れておいてはどうかという向きもないではないと思われますが、上記の変更が投資家等にとってどれほどの重要性があるのか等を考慮して判断することになろうかと思われます。

具体的な開示の記載はどうなる

 以上を踏まえますと、例えば、現状において源泉税率につき「15.315%(源泉所得税15%および復興特別所得税0.315%)」となっている記載については、

  1. 令和8年(2026年)12月31日以前は、15.315%(源泉所得税15%および復興特別所得税0.315%)
  2. 令和9年(2027年)1月1日以後令和29 年(2047年)12月31日以前は、15.315%(源泉所得税15%ならびに復興特別所得税0.165%および防衛特別所得税0.15%)
  3. 令和30 年(2048年)1月1日以後は、15.15%(源泉所得税15%および防衛特別所得税0.15%)

 のようになると考えられます。

 上記③の場合については、そもそも足下の案件の開示で20年超も後の将来のことを書くのかという問題もあるかもしれませんが、2013年の復興特別所得税の導入当時に2038年以後のことを書いていたのであれば、書いてもおかしくはないし、無用な疑義が予め解消されるという見方もあり得るかと思われます。また、仮に上記③のとおりとなれば、また新たな源泉税率(15.15%)が出現することになり面倒だ、ということになろうかと思われますが、それが問題となるころには、また別途改正が入っているかもしれません(し、当職ももはや弁護士としてこの点を追いかけているということはないかもしれません。)。

脚注一覧

※1
より正確には、将来において別途立法上の措置が講ぜられるまではそのまま存続し効力を有するということになります(法制執務研究会編「新訂 ワークブック法制執務 第2版」784頁)。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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