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CCS最新動向:海底下処分のためのCO2輸出に向けたロンドン議定書6条の改正受諾・暫定的適用の宣言と輸出貿易管理令の改正

著者等
渡邉啓久島田潤也髙橋優(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Infrastructure, Energy & Environment Legal Update ~インフラ・エネルギー・環境ニュースレター~ No.55(2026年1月)
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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに~国内外CCS事業を巡る動向

 2050年のカーボンニュートラル達成に向け、省エネ・再エネの促進、蓄電池の活用など、さまざまな脱炭素技術の導入が進められていますが、省エネや脱炭素化が容易でない産業セクターなど、当面CO2の排出が避けられない分野にとっては、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)の活用は不可避です。2025年12月26日に改定・公表された「分野別投資戦略(ver.3)」※1においても、CCSは2025年カーボンニュートラルの実現に向けた重要な技術であり、①先進的なCCS事業を2030年までに開始させるべく、日本におけるCCS事業環境整備とビジネスモデル構築を進めること、②同時に、日本からのCO2輸出を前提とした海外でのCCS事業を推進すること、③CO2分離回収プラント、液化輸送船、トータルエンジニアリングなどCCSバリューチェーンにおける産業競争力を強化することが方向性として示され、2023年から10年程度の目標として、国内排出削減約4,000万トン、官民投資額約4兆円以上が目標とされている分野です※2

 国内におけるCCS事業※3に関しては、「二酸化炭素の貯留事業に関する法律」(以下「CCS事業法」といいます。)が2024年5月に成立し、探査に関する規律(同年8月5日施行)、試掘に関する規律(同年11月18日施行)がそれぞれ施行し、北海道苫小牧沖(2025年2月21日指定)及び千葉県九十九里沖(同年9月17日指定)の2区域が試掘の特定区域※4として指定されています。本年は、同法中の貯留事業及び導管輸送事業に関する規律の施行(公布の日から2年以内である2026年5月23日まで)を控えています。

 一方で、二酸化炭素の国外輸送に関する規制上の手当も進められています。昨年12月16日、政府は「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年の議定書の2009年の改正」の受託書を国際海事機関(IMO)事務局長に寄託し、同時に同改正の暫定的適用を宣言しました。また、本年1月19日に施行された輸出貿易管理令の改正により、CCS目的のCO2の輸出承認制度が導入され、CO2の国外輸送に向けた制度的手当が大きく前進しました。本稿では、輸出貿易管理令の改正に至る経緯を採り上げつつ、CO2の国外輸送の実現化に向けて残された課題を概説いたします。

CO2の国外輸送に関する国際ルール

 現在の国際条約の下では、海底下への貯留を想定したCCSのためのCO2の国外輸送は、極めて厳しい国際ルールに従った場合にのみ許容されています。国際ルールの内容は複雑ですが、概要は次の通りです。

 CO2の輸出は、廃棄物等の投棄による海洋汚染の防止を目的として1972年12月に採択され、1975年8月に発効した「ロンドン条約」(廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約※5)(日本は1980年に締結)と、ロンドン条約による海洋汚染の防止措置をさらに強化※6するために1996年11月に採択され、2006年3月に発効した「ロンドン議定書」(1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年の議定書※7)(日本は2007年に締結)により、国際的に規制されています。

 ロンドン議定書第4条の下で、締約国は、廃棄物その他の物※8の海域における投棄※9を原則として禁止されており、例外的に、浚渫物や下水汚泥など附属書Ⅰに列挙される限定された物質に限って、厳格な条件の下で、海洋投棄の許可を付与することが認められてきました(リバースリスト方式)。その後、2006年11月のロンドン議定書改正により、一定の純度の高いCO2含有ガスについても、海洋投棄を検討することができることになりました※10。ロンドン議定書の同改正の国内実施のため、日本は2007年に「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」(以下「海洋汚染防止法」といいます。)を改正し、同法に二酸化炭素の海底下貯留に関する許可制度※11を導入しました。

 しかし、ロンドン議定書第6条は、締約国は、投棄又は海洋における焼却のために廃棄物その他の物を他の国に輸出することを許可してはならないと定めていますので、自国で排出されるCO2を投棄のために他国に輸送することは、依然として認められていませんでした。一方、2009年の締約国会議では、国際輸送を可能にするためのロンドン議定書の改正案が採択され、第6条第2項が新設されました※12

ロンドン議定書2009年改正

第6条 廃棄物その他の物の輸出

  1. 締約国は、投棄又は海洋における焼却のために廃棄物その他の物を他の国に輸出することを許可してはならない。
  2. 1の規定にかかわらず、附属書一の規定に基づく処分のための二酸化炭素を含んだガスの輸出については、関係国が協定を締結し、又は取決めを行っていることを条件として、これを行うことができる。当該協定又は当該取決めには、次の事項を含める。当該協定を締結し、又は当該取決めを行っている締約国は、機関(筆者注:国際海事機関)にその旨を通報する。

    1. 輸出国と受入国との間の許可を与える責任の確認及び配分であって、この議定書その他の適用可能な国際法に適合したもの
    2. 非締約国に輸出する場合には、少なくともこの議定書と同等の規定(附属書二の規定に適合する許可の付与及び許可の条件に関する規定を含む。)であって、当該協定又は当該取決めが、海洋環境を保護し、及び保全するためのこの議定書に基づく締約国の義務に違反しないことを確保するためのもの

 第2項の追加により、関係国において一定の協定又は取決めがあることを条件※13として、CO2の投棄目的での輸出を可能とする規律が追加されたわけですが、同改正は、締約国の2/3以上が改正の受諾書をIMO(国際海事機関)に寄託することという発効要件を満たしていないため(2025年12月現在、締約国56カ国のうち日本を含む16カ国のみが受諾)、未発効の状態が継続しています。ところが、その後の2019年の第14回締約国会議にて、ノルウェーが「条約法に関するウイーン条約※14」第25条(暫定的適用)の規定に従い、ロンドン議定書第6条第2項の暫定的適用を提案し、採択されるに至りました。これにより、暫定的適用に関する宣言書をIMO事務局に寄託した締約国(2025年12月現在、日本、ノルウェー、英国、オランダ、スウェーデンなど13カ国)に関しては、ロンドン議定書第6条第2項を遵守することを条件に、海域でのCCSのためのCO2の輸出が可能となったのです。

 日本においては、外国為替及び外国貿易法に基づく輸出貿易管理令の改正によって国内担保措置を講じることとし、CCS目的のCO2を輸出令別表第2に追加することで経済産業大臣の輸出承認の対象としつつ、輸出先との間でロンドン議定書と整合的な協定又は取決めが作成されているかどうかや、輸出内容が当該協定又は取決めに即しているかどうか等を審査するための承認基準等の整備に向けた検討が進められてきました※15。このような検討を踏まえて、日本は、2025年12月16日、ロンドン議定書第6条の改正の受諾書をIMOに寄託するとともに、2026年1月19日から当該改正を暫定的に適用する旨の宣言を行いました※16

輸出貿易管理令の改正

 上記の議論を踏まえ、政府は、2025年11月14日に、輸出貿易管理令別表第2の第35の5の項に、ロンドン議定書付属書I 4・1に規定する処分を行うために輸出される同付属書I 1・7に規定する二酸化炭素を含んだガスを追加する内容の輸出貿易管理令の一部を改正する政令を閣議決定しました(同月19日公布)。改正後の政令は、ロンドン議定書第6条の改正の暫定的適用が開始された2026年1月19日に施行されました。

 今後、事業者が海底下処分を想定したCCS目的のCO2の輸出を行うに当たっては、「二酸化炭素を含んだガスの輸出確認証の交付要領」(令和8年1月13日付20260107資庁第4号)に従い資源エネルギー庁長官から「輸出確認証」の交付を受けた上で、経済産業大臣の輸出承認申請を行う必要があります。

輸出確認証の交付基準

  1. 輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号)別表第2の35の5の項の中欄に掲げるものであって、次のイ及びロに該当するものであること。

    1. 輸出する二酸化炭素を含んだガスが、輸出に係る受入国との協定又は取決めに即した、極めて高い割合の二酸化炭素から構成されているものであること。ただし、当該二酸化炭素を含んだガスの起源となる物質並びに利用される回収工程及び隔離工程から生じる付随的な関連物質が含まれ得るものとする。
    2. 輸出する二酸化炭素を含んだガスにいかなる廃棄物その他の物もこれらを処分する目的で加えられていないものであること。
  2. 当該確認申請に先立ち、我が国が受入国との間で締結した協定又は受入国との間で行った取決めであって、次のイ及びロの内容を含むものに即した輸出内容であること。

    1. ロンドン議定書その他の適用可能な国際法に適合した輸出国と受入国との間の許可を与える責任の確認及び配分
    2. 非締約国に輸出する場合には、ロンドン議定書と同等の規定(附属書二の規定に適合する許可の付与及び許可の条件に関する規定を含む。)であって、当該協定又は当該取決めが、海洋環境を保護し、及び保全するための同議定書上の締約国の義務に違反しないことを確保するためのもの

おわりに~残された課題

 本年1月19日付で、日本のロンドン議定書第6条の改正の暫定的適用に関する宣言が発効し、その国内担保措置として改正輸出管理貿易令が施行されました。

 一方、実際のCO2の国外輸送に際しては、前述の通り、ロンドン議定書第6条第2項を遵守する必要があります。アジア圏においてCO2の貯留のポテンシャルが高いとされるインドネシアやマレーシアなどは同議定書の非締約国ですので、これらの国に対して国外輸送を行うためには、96年議定書に沿った許可の仕組みを同国内にて整備してもらうこと等の法整備が必要となります。

 日本は、アジア地域におけるCCUSの拡大や国際的な連携強化を図っていくため、日本のほかASEAN10か国、米国及び豪州が参画する「アジアCCUSネットワーク」を率先するなどしておりますので、こうした枠組等を通じて受入国における法整備が進んでいくことも期待されています。特に、マレーシアでは昨年CCUS法が整備され、同年10月17日には、マレーシア経済省と日本の経済産業省がCCS分野での二国間の協力強化に向けた協力覚書に署名し、同月26日の日・マレーシア首脳会談※17において、両首脳は、両国間でCCSが進展していることを高く評価しました。マレーシアは、経済産業省所管の事業として独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が執行する令和6年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」に選定された国内外の9プロジェクト(海外プロジェクトは4つ)のうち、「マレーシア マレー半島沖北部CCS事業」、「マレーシア サラワク沖CCS事業」及び「マレーシア マレー半島沖南部CCS事業」※18の3つが集中している国でもあります。2026年は、受入先として期待される国々との間の二国間協議の進展も注目されます。

脚注一覧

※1
「分野別投資戦略」は、政府が、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向け、重点分野毎の取組の方向性や投資促進策等をまとめた戦略であり、鉄鋼、化学、紙パルプ、セメント、自動車、蓄電池、航空機、SAF、船舶、くらし、資源循環、AI・半導体、水素等、次世代再エネ(ペロブスカイト太陽電池、浮体式等洋上風力、次世代型地熱)、原子力・フュージョンエネルギー及びCCSの16分野それぞれについて、GXの方向性と投資促進策等を取りまとめたものです。

※2
分野別投資戦略(ver.3)69頁

※3
CCS事業は、製油所、発電所、化学プラントなどのCO2排出源から、アミンを用いた化学吸収法やエーテルを用いた分離吸収法などによってCO2を分離・回収し、(分離・回収場所が貯留適地から離隔している場合は貯留適地まで輸送したうえで)地中又は海中の貯留層にCO2を貯留する事業を指します。CCSと法務に関しては、弊所カーボンニュートラル・プラクティスチーム編『カーボンニュートラル法務(第2版)』(金融財政事情研究会、2025年)106頁以下を参照。

※4
貯留層が存在し、又は存在する可能性がある区域として経済産業大臣が指定する区域を指します(CCS事業法第3条第1項)。

※5
正式名称は、“Convention on the Prevention of Marine Pollution by Dumping of Wastes and Other Matter 1972”

※6
当初のロンドン条約は、有機ハロゲン化合物、水銀・水銀化合物、カドミウム・カドミウム化合物、高レベル放射性廃棄物などの有害廃棄物を限定的に列挙してこれらの海洋投棄を禁止するブラックリスト方式を採用した。

※7
正式名称は、“1996 Protocol to the Convention on the Prevention of Marine Pollution by Dumping of Wastes and Other Matter, 1972”

※8
「廃棄物その他の物」とは、「あらゆる種類、形状又は性状の物質」を指しており(ロンドン議定書第1条第8項)、これにはCO2も含まれます。

※9
「投棄」には、「廃棄物その他の物を船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物から海底及びその下に貯蔵すること」も含まれますので(第1条第4.1.3項)、船舶上から、あるいは、陸域に設置した貯留施設から圧入井を経由して海底下の帯水層にCO2を貯蔵することも、「投棄」に該当することになります。

※10
附属書I「投棄を検討することができる廃棄物その他の物」第1.8項、第4項

※11
CCS事業法制定附則第14条に基づき、海洋汚染防止法から同許可制度は削除され、CCS事業法における貯留事業の許可に一元化されます。

※12
和訳は外務省のウェブサイトより引用

※13
すなわち、(1)ロンドン議定書や他の適用ある国際法と整合する、輸出国と受入国間における許可責任の確認と配分に関する事項が定められること、(2)非締約国に対する輸出の場合、ロンドン議定書の内容と最低限同等の条項(許可の発行、ロンドン議定書別紙2の条項を遵守するための許可条件に関する事項を含む。)が定められることが求められています。

※14
正式名称は、“Vienna Convention on the Law of Treaties (1969)”

※15
第9回カーボンマネジメント小委員会 資料3「カーボンマネジメント/CCUS政策を巡る状況について」(2025年6月)44頁

※16
外務省告示第461号(2025年12月17日付)。なお、2024年の通常国会において、ロンドン議定書第6条の改正の受諾については、衆議院(同年5月7日)及び参議院(同年5月25日)においてそれぞれ承認されていました。

※17
概要は外務省のウェブサイトの通り。

※18
残る一つの海外プロジェクトは「大洋州CCS事業」。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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