① Omnibus IV
2025年5月21日、欧州委員会により、中小型企業(small mid-cap enterprises、以下「SMCs」といいます。)※1に対する規制の簡素化を目的とするOmnibus IVが公表されました。Omnibus IVには、GDPR30条に基づく処理記録の作成義務の免除要件を拡大する等のGDPRの簡素化にかかる提案が含まれています※2。
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EUにおいては、引き続きデータ・AI等に関連して多岐にわたる法令改正・立法の動きがありますが、そのうち、2025年の主な法令改正及び立法に関する動向は以下のとおりです。
2025年5月21日、欧州委員会により、中小型企業(small mid-cap enterprises、以下「SMCs」といいます。)※1に対する規制の簡素化を目的とするOmnibus IVが公表されました。Omnibus IVには、GDPR30条に基づく処理記録の作成義務の免除要件を拡大する等のGDPRの簡素化にかかる提案が含まれています※2。
2025年11月19日、欧州委員会により、デジタルに関する様々な法令の遵守コストの削減、規制目標を達成する確実性の向上、企業にとって競争優位性につながることを目的としたDigital Omnibusが公表されました。Digital Omnibusでは、(i)GDPR、データ法(Data Act)、ePrivacy指令等の複数の法令に関する改正提案であるDigital Omnibus Regulation Proposal(以下「オムニバス法案」といいます。)と、(ii)AI法に関する改正提案であるDigital Omnibus on AI Regulation Proposal(以下「オムニバス法案(AI)」といいます。)の2つの改正提案がなされています。
オムニバス法案におけるGDPRの主な改正提案には、(i)個人データの定義の改正(個人データの該当性について事業者ごとに判断すべきことの明記)、(ii)特別な種類の個人データの処理にかかる例外要件の追加(AIの開発・運用の過程における処理であって、特別な種類の個人データの収集その他の処理を回避するための適切な組織的・技術的措置が講じられている場合等)、(iii)データ侵害時の報告義務の緩和(監督機関への報告が必要となる場合の限定及び時間制限の延長等)、(iv)Cookieにかかる規定の追加(自然人の端末機器における個人データの保存又はすでに保存されている個人データへのアクセスについて原則として当該自然人の同意を要する等)が含まれています※3。
欧州委員会が2017年1月10日に公表して以来、長期間にわたって採択されずにいたePrivacy規則案が撤回された旨が、2025年10月6日にEU官報(以下、単に「官報」といいます。)に掲載されました。そのため、Cookieの利用や消費者の端末機器からの情報取得の場面等については、当面はePriavcy指令及びそれを踏まえた各EU加盟国の国内法に基づく規律が引き続き維持されることになります※4。
2025年7月2日、欧州データ保護会議(EDPB)は、GDPRの遵守を容易にし、幅広いステークホルダーとの対話を強化し、法の適用及び執行に関する一貫性を高め、また、新たなデジタル規制の環境における規制横断的な協力を発展させるための新たなイニシアチブに合意し、ヘルシンキ声明として公表しました。
ヘルシンキ声明においては、GDPRの遵守容易化のための新たなツールとして、データ保護当局向けのデータ侵害通知の共通テンプレートその他のテンプレートを作成する意向が示されています。なお、2025年11月5日にEDPBが開始した有益なテンプレート案に関する意見募集(同年12月3日まで)の説明文によれば、データ保護影響評価(DPIA)及びデータ侵害通知のテンプレートについては、すでに作成に取り組んでいるとのことです。
2025年11月17日、EU理事会は、GDPRの執行に関する追加ルールを定める規則案を採択しました。同規則案は、越境データ保護に関する苦情処理の迅速化のために、EU域内における統一的な苦情の受理基準の策定や、調査期限の設定等を通じて、各国のデータ保護当局がGDPRを執行する際の協力体制の改善を図ることを目的とするものです。GDPRの執行に関する追加ルールを定める規則(Regulation laying down additional procedural rules relating to the enforcement of Regulation (EU) 2016/679)は、2025年12月12日に官報に掲載され、2026年1月1日に発効しており、2027年4月2日に適用が開始される予定です。
2025年9月12日、データ法(Regulation on harmonised rules on fair access to and use of data)の主要な規定の適用が開始されました※5。同法は、IoT機器の普及を踏まえて、データのポータビリティの強化やデータの提供者と受領者の関係を規律するルールの整備により、データの生み出す価値を公平に分配することを目的するものです。
2025年11月19日に欧州委員会が公表したオムニバス法案には、データ法の改正提案も含まれています。主な改正提案としては、(i)ユーザー自身又はユーザーが指定した第三者によるデータへのアクセスの要請について、データ保有者が営業秘密の保護を理由に要請を拒否できる事由の追加※6、(ii)公的機関が企業にデータ共有を要請できる場合について、「例外的な必要性(exceptional needs)」から「公共の緊急事態(public emergencies)」への限定、(iii)顧客のニーズに応じてその機能の大半が調整されたカスタムメイドデータ処理サービス(custom-made data processing services)について、同年9月12日以前に締結された契約に基づき提供されていることを条件に、他の提供者のサービスにスイッチングできるように一定の措置を講じる義務の原則免除等が挙げられます。
なお、欧州委員会は、2025年12月16日、ステークホルダー(特に中小企業(small and medium-sized enterprises、以下「SMEs」といいます。)※7)におけるデータ法に関する具体的な質問への回答を得られるよう支援するため、データ法リーガルヘルプデスク(Data Act Legal Helpdesk)を発足したことを公表しました※8。
2025年11月19日、欧州委員会は、特にSMEsによるデータ法への対応を支援することを目的として、データアクセス及び利用に関するモデル契約条項(Model Contractual Terms、以下「MCTs」といいます。)、並びにクラウドコンピューティング契約に関する標準契約条項(Standard Contractual Clauses for Cloud Computing Contracts、以下「クラウドSCCs」といいます。)を公表しました。いずれも使用は任意であり、使用する当事者による修正も可能です。
MCTsには、使用する当事者と使用される場面を踏まえて、(i)データ保有者(data holder)とユーザーとの間の契約(データ保有者がコネクテッド製品/関連サービスのユーザーによる利用により生じたデータの利用を希望する場合)、(ii)ユーザーと第三者であるデータ受領者(data recipient)との間の契約(データ法5条に基づき、ユーザーがデータ保有者に対して、第三者であるデータ受領者へのデータの提供を要請する場合)、(iii)データ保有者と事業者であるデータ受領者との間の契約(データ保有者がデータ法5条に基づき、コネクテッド製品のユーザーから要請を受け、データ受領者にデータを提供する義務を負う場合)、(iv)データ共有者(data sharer)※9とデータ受領者との間の契約(データ共有者がユーザー又は類似の当事者からの要請とは無関係に、任意でデータ受領者にデータを提供する場合)の4つの類型が存在します。
また、クラウドSCCsについては、データ法におけるデータ処理サービス(data processing service)※10の提供者と顧客との間の権利義務関係を契約に落とし込むことを支援するものであり、(i)スイッチングに関する規定、(ii)契約終了に関する規定、(iii)スイッチング中のセキュリティ及び事業継続に関する規定、(iv)契約の非分散(non-dispersion)に関する規定※11、(v)責任に関する規定、(vi)契約の修正に関する規定、(vii)定義規定の7つのパートから構成されています。全パートをセットで使用することが推奨されていますが、一部のみ使用することも可能とされています※12。
2025年9月12日、欧州委員会は、車両データ(vehicle data)に関するガイダンスを公表しました。かかるガイダンスは、自動車セクターのステークホルダー(OEM事業者、サプライヤー、アフターマーケットサービス事業者、保険会社を含みます。)を対象に、データ法第2章におけるデータの範囲とデータアクセスに関するルールに焦点を当てて、車両データに関連するデータ法の主要な義務を説明することを目的とするものです。
AI法(Regulation laying down harmonised rules on artificial intelligence)は、生成AIを含むAIに関する包括的な規制法であり、AIシステムを(i)許容できないリスク、(ii)ハイリスク、(iii)特定の透明性が必要なリスク、(iv)最小リスクの4つのカテゴリーに分類し、リスクがより高いAIシステムについて、より厳格な要件を定めています。
2025年2月2日に、禁止されるAIプラクティス(分類(i))に関する規制及びAIリテラシーの確保義務※13の適用が開始され、また、同年8月2日に、生成AIを典型とする汎用目的(general-purpose)AIモデルに関する規制等の適用が開始されました。残りの規定のうち、AI法附属書Iに該当するハイリスクAIシステム※14に関する規制については2027年8月2日に適用開始の予定であり、それ以外の規定(同法附属書IIIに該当するハイリスクAIシステム※15に関する規制や特定のAIシステムに関する透明性義務を含みます。)については2026年8月2日から適用開始の予定となっています。
もっとも、オムニバス法案(AI)では、これらの規定の適用開始時期を延期することが提案されています。具体的には、ハイリスクAIシステムに関する規律(AI法第3章第1節から第3節)について、(i)AI法6条2項及び附属書IIIのハイリスクAIシステムとの関係では、欧州委員会が遵守を支援するための適切な措置が利用可能であることを確認する決定を採択してから6か月後、又は遅くとも2027年12月2日を適用開始時期とし、また、(ii)同法6条1項及び附属書IのハイリスクAIシステムとの関係では、欧州委員会が遵守を支援するための適切な措置が利用可能であることを確認する決定を採択してから12か月後、又は遅くとも2028年8月2日を適用開始時期とすることが提案されています。また、(iii)合成の音声、画像、動画、又はテキストコンテンツを生成するAIシステム(汎用目的AIシステムを含みます。)が2026年8月2日までにEU市場に上市された場合※16、当該AIシステムの提供者によるAI法50条2項に定める透明性義務(アウトプットにAIによる生成物である旨をマーキング等する義務)の適用時期を2027年2月2日とすることも提案されています。
その他、オムニバス法案(AI)におけるAI法の主な改正提案としては、(i)AIリテラシーの確保義務の削除、(ii)SMCsも対象となるよう、SMEs向けの簡素化規定の適用対象の拡大、(iii)AIシステムのバイアス検知・修正目的のために必要な場合における特別な種類の個人データの処理に関する規定の適用対象の拡大※17等が挙げられます。
なお、2025年10月8日、欧州委員会は、AI法の円滑かつ効果的な施行を支援し、信頼性の高いAIの拡大と欧州全体でのイノベーションの促進に必要な法的確実性を提供するため、AI法サービスデスク(AI Act Service Desk)及び統合情報プラットフォーム(Single Information Platform)を設置した旨を公表しました。また、同年11月24日、欧州委員会は、AI法違反に関する不正告発ツールの運用を開始した旨を公表しました。さらに、同年12月2日、AI法における規制のサンドボックス制度にかかる実施法案について、2026年1月13日までを期限として、意見募集を実施しました。
2025年2月4日、欧州委員会は、AI法に基づき禁止されるAIプラクティスに関するガイドラインを公表しました。このガイドラインは、AI法5条に基づき禁止されるAIプラクティスの内容等について、より詳細な説明や具体例を示すものです※18。
また、2025年2月6日、欧州委員会は、AIシステムの定義に関するガイドラインを公表しました。このガイドラインは、AI法において広範な形で定義されている「AIシステム」の理解を促進する観点から、定義を構成する各要素を明確化しようとするものです。
2025年7月10日、欧州委員会は、AI法に基づく汎用目的AIモデルに関する行動規範の最終版を公表しました。この行動規範の遵守は任意ですが、この行動規範においては、汎用目的AIモデルを提供する事業者及びシステムリスクを有する汎用目的AIモデルを提供する事業者に対するAI法のルールが詳細に規定されており、これに従うことで、AI法への準拠を証明しやすくなるという意味で法的確実性を享受することができます。
さらに、2025年7月18日、欧州委員会は、汎用目的AIモデルの提供者の義務の範囲に関するガイドラインを公表しました。このガイドラインでは、AI法の適用対象となる汎用目的AIモデルの範囲の明確化や、汎用目的AIモデルの修正を行う者がAI法上どのような場合に汎用目的AIモデルの提供者に該当するかの明確化等がなされています※19。また、同月24日、欧州委員会は、学習コンテンツの公表用サマリーの説明文書及びそのテンプレートを公表しました。AI法上、汎用目的AIモデルの提供者は、かかるテンプレートに沿って、学習に使用されたコンテンツのサマリーを作成し公表することが求められています。この他にも、欧州委員会によって、2025年9月9日に汎用目的AIモデルに関して一連のQ&Aの公表、システミックリスクを有する汎用目的AIモデルの提供者の重大なインシデントについてAIオフィス※20に報告するテンプレートの公表が行われています※21。
2025年12月17日、欧州委員会は、AI生成コンテンツのマーキング及びラベリング義務に関する行動規範の第1次ドラフトを公表しました。この行動規範は、生成AIシステムの提供者及びディプロイヤーがAI法50条2項及び4項に基づく義務の遵守を示すための任意のツールとして機能するとされています。
契約外の民事責任に関するルールをAIに適用することを目的するAI責任指令案は、2022年9月に欧州委員会により提出され、2023年12月には、欧州議会とEU理事会との間で非公式に文言の合意が形成されていましたが、同指令案が撤回された旨が、2025年10月6日に官報に掲載されました。
2025年12月17日、欧州議会は、立法イニシアチブレポートを採択し、欧州委員会に対し、職場における自動監視・意思決定システムの透明性、公正性、安全性を確保するための新たなルールの提案を行うよう要請した旨を公表しました。欧州議会の雇用社会問題委員会は、同年6月26日に公表した報告書において、職場におけるアルゴリズム管理(AM)システムの透明性、公平性、安全性を確保するためのEU法案の必要性を唱えていました。欧州議会における立法イニシアチブレポートの採択を受け、欧州委員会は3か月以内に、立法提案を行うか、又は提案を行わない理由をEU議会に回答する義務があります。
サイバーレジリエンス法(Regulation on horizontal cybersecurity requirements for products with digital elements)は、デジタル要素を含むソフトウェアやハードウェア製品を購入する消費者や企業を保護することを目的として、デジタル要素を含む製品についてセキュリティ要件の実装、脆弱性の管理、インシデント報告、サプライチェーンにおけるデューデリジェンスの実施等を求めるものです。2026年9月11日から脆弱性/インシデントの報告義務に関する部分の適用が開始され、2027年12月11日から全面的に適用されます。
サイバーレジリエンス法は、デジタル要素を含む製品を通常の製品、重要な(important)製品、及びクリティカルな(critical)製品の3つに区分し、カテゴリーが上がるごとに厳格な要求事項を定めているところ、2025年11月28日、同法に基づく重要な製品及びクリティカルな製品のカテゴリーについて詳細な技術的説明を提供する実施規則が採択されました。同実施規則は、同年12月21日に発効しています。
サイバー連帯法(Regulation laying down measures to strengthen solidarity and capacities in the Union to detect, prepare for and respond to cyber threats and incidents)が、2025年1月15日に官報に掲載され、同年2月4日に発効しました。同法は、EU全域のサイバーセキュリティを強化するために、各国、政府機関、主要組織の間で、法的に裏付けられた集団防衛、協力、リソース共有の枠組みを提供することを主な目的とするものです。
2019年サイバーセキュリティ法の改正法(Amendment to the Cybersecurity Act on Managed Security Services)が、2025年1月15日に官報に掲載され、同年2月4日に発効しました。同改正法は、2019年サイバーセキュリティ法で既にカバーされている情報技術(ICT)製品、ICTサービス、及びICTプロセスに加えて、いわゆるマネージドセキュリティサービス(managed security service)※22を対象とした欧州認証スキームの採用を可能とすることを目的とするものです。
2025年1月17日、デジタルオペレーショナルレジリエンス法(Regulation on digital operational resilience for the financial sector)(以下「DORA」といいます。)の適用が開始されました。同法は、金融機関向けのサイバーセキュリティ法であり、金融機関のITセキュリティ及びオペレーショナル・レジリエンスを強化し、深刻な業務中断が発生した場合においてもEUの金融セクターがレジリエンスを維持できるようにすることを目的としています。
2023年1月16日に発効した改正ネットワーク及び情報システム指令(Directive on measures for a high common level of cybersecurity across the Union)(以下「NIS2指令」といいます。)により、EU加盟国は、これに対応する国内法を2024年10月17日までに制定する必要があるとされていました。なお、NIS2指令は、サイバーセキュリティリスクの対策に関する措置及び報告義務のベースラインを定める指令です。
しかし、上記の期限までに国内法の整備が進んでいない国が多く、2025年5月7日、欧州委員会は完全な移行を完了していない19の加盟国(ドイツ、フランス、アイルランド、スペインを含みます。)に対して理由付意見書(reasoned opinion)を送付し、2か月以内に対応しなければ欧州司法裁判所(CJEU)への付託を検討すると警告しました※23。
オムニバス法案では、NIS2指令を改正し、欧州ネットワーク情報セキュリティ機関(ENISA)がEU法におけるインシデント報告義務をサポートする単一窓口を設置することの提案がなされるとともに、単一窓口の設置後は、事業者はGDPR、NIS2指令、DORA等の報告を当該窓口にすれば足りるとする旨の提案がなされています。
2025年3月5日に、欧州ヘルスデータスペースに関する規則(Regulation on the European Health Data Space)(以下「EHDS規則」といいます。)が官報に掲載され、同月25日に発効しました※24。EHDS規則は、個人の電子健康データへのアクセスと管理を改善することを目的としており、同時に、欧州の患者の利益のために、特定のデータを研究やイノベーションの目的で再利用できるようにすることを目指しています。同規則は、段階的な施行が予定されています。主要部分は2029年3月26日に適用が開始される予定であり、電子ヘルスデータの二次利用も同日から可能となります。ただし、臨床試験データや遺伝子データなど一部のデータカテゴリーについては、2031年3月26日から二次利用が可能となります。
2025年12月16日、欧州委員会は、バイオテック法案を公表しました。同法案は、最高水準の医薬品を市場に届け、世界的な競争力格差を縮小し、EUがバイオテクノロジー及びバイオ製造における世界的リーダーシップを維持することを目指すものであり、特に健康バイオテクノロジーに焦点を当てています。
バイオテック法案には、臨床試験(clinical trial)における個人データの処理に関する規定が含まれています。例えば、臨床試験のスポンサー及び治験責任医師(investigator)は、臨床試験において一定の個人データの処理を行うことが求められると規定しており、これにより、バイオテック法案に列挙された処理活動について、GDPR6条1項(c)及び9条2項(i)※25を根拠とし得ることが明確化されたといえます。また、バイオテック法案に規定する臨床試験申請の認可等に至る処理については、スポンサー及び治験責任医師はいずれもGDPR上の管理者に該当する旨が明確化されています※26。
2025年11月27日、欧州議会は、EU理事会との間で、決済サービス規則案(Payment Service Regulation)及び第3次決済サービス指令案(Payment Service Directive 3)について合意に達した旨を公表しました。本規則案は、EU全域で決済サービスを調和させ、詐欺防止を強化することを目的とするものであり、また、本指令案は、認可及び監督権限に対処することで決済サービスプロバイダー(PSP)間の公正な競争を確保し、特に遠隔地における現金へのアクセスを改善することを目指すものです。これらは、第2次決済サービス指令において導入されたオープンバンキング※27の枠組みを強化・拡充するものであり、例えば、(i)顧客に決済口座を提供・維持する決済口座サービス提供者(Account Servicing Payment Service Provider、以下「ASPSP」といいます。)※28に対して、顧客がどのサードパーティー・サービスプロバイダー(Third Party Service Provider、以下「TPP」といいます。)に口座アクセスを許可しているかを一元管理できるダッシュボードの提供を義務づける規定や、(ii)ASPSPがオープンバンキングサービスを提供するTPPに対して一定の障壁を課すことを禁止する規定等が含まれています※29。
2025年の英国における主な法令改正及び立法に関する動向は以下のとおりです。
2025年6月19日、Data (Use and Access) Act 2025(以下「DUAA」といいます。)が成立しました※30。同法は、UK General Data Protection Regulation(UK GDPR)で定められている適法化根拠の追加的な適法化根拠の明文化や、自動化された意思決定を活用するための条件の追加、Cookie規制に関する本人同意が不要な場面の拡大と制裁金の高額化などの内容を含み、UK GDPR、Data Protection Act 2018、及びPrivacy and Electronic Communications Regulations 2003(PECR)を改正する事項を含むものです。同法は、2026年6月までに段階的に施行されることが予定されています。
2025年12月19日、欧州委員会は、英国に対する十分性認定の更新を発表しました。これにより、引き続きEUと英国の間で十分性認定に依拠して個人データを移転できることが確認されました。当該十分性認定には2031年12月27日までの6年間の期間が設定されているほか、欧州委員会は、EDPBと連携して4年後に中間レビューを行うことが予定されています。
2025年1月から、競争・市場庁の権限強化やサブスクリプション契約に関する消費者保護等を定める、デジタル市場、競争及び消費者法(Digital Markets, Competition and Consumers Act)(2024年5月24日に成立)が段階的に施行されています。そのうち、サブスクリプション契約に関する規定は2026年秋に施行が予定されています。
SNS等を運営する対象事業者に対して、違法コンテンツの削除や子どもが有害ないし不適切なコンテンツにアクセスすることを防止する義務等を負わせる、オンライン安全法(Online Safety Act 2023)(2023年10月26日に成立)が段階的に施行されています。2025年の主な施行内容としては、2025年1月17日に成人向けコンテンツに関する年齢確認義務が施行され、同年12月11日に一定の収益を有する事業者に対する執行機関(Ofcom)の運用のための費用負担義務が施行されました。
2025年11月12日、サイバーセキュリティ及びレジリエンス法案(Cyber Security and Resilience Bill)が議会に提出されました。同法案は、現行のNIS規則(Network and Information Systems (NIS) Regulations 2018)をアップデートするもので、規制対象となる事業者の拡大、サイバーインシデントの政府・顧客への報告義務、重要サプライヤーの指定、売上ベースの制裁金などの内容を含み、サイバー攻撃からの防御を強化するものです。
2025年1月に、ランサムウェアに関する立法提案が公表され、同年4月まで当該提案に関する意見募集が行われました。同提案は、(i)重要国家インフラ及び公共セクターによる身代金支払の禁止、(ii)身代金支払前の通知義務(支払防止制度の確立)、(iii)ランサムウェア事案の報告義務という3つの内容を柱とし、身代金支払の防止と報告義務の強化を目的とするものです。現時点では、法案は議会に提出されていません。
上記でご紹介した他の、2025年にEU及び英国で採択又はアップデートされた、主なガイダンス等(ガイドライン、勧告、声明等を含む。)は以下のとおりです。
| No. | 採択/公表日 | タイトル |
|---|---|---|
| 1. | 2025年1月17日 | 仮名化に関するガイドライン案(EDPB) |
| 2. | 2025年2月12日 | 年齢確認に関する声明(EDPB) |
| 3. | 2025年4月14日 | ブロックチェーン技術を通じた個人データの処理に関するガイドライン案(Versoin1.1)(EDPB) |
| 4. | 2025年6月4日 | GDPR48条に関するガイドライン(version 2.1)(EDPB) |
| 5. | 2025年7月14日 | デジタルサービス法(DSA)28条4項に基づくオンラインにおける未成年者のプライバシー、安全及びセキュリティの高水準を確保するための措置に関するガイドライン(欧州委員会) |
| 6. | 2025年9月12日 | DSAとGDPRの相互作用に関するガイドライン(EDPB) |
| 7. | 2025年10月9日 | デジタル市場法(DMA)とGDPRの相互作用に関する共同ガイドライン案(EDPB) |
| 8. | 2025年12月4日 | 電子商取引サイトにおいてユーザーアカウントの作成を求めることの法的根拠に関する勧告案(EDPB) |
| No. | 公表日 | タイトル |
|---|---|---|
| 1. | 2025年1月23日 | Consent or Payモデルに関するガイダンス(情報コミッショナーオフィス(ICO)) |
| 2. | 2025年1月31日 | AIのサイバーセキュリティに関する行動規範及び同規範の実施ガイド(科学・イノベーション・技術省(DSIT)) |
| 3. | 2025年6月5日 | AI及びバイオメトリクス戦略(ICO) |
| 4. | 2025年6月16日 | 消費者向けIoT機器及びサービスに関するガイダンス案(ICO) |
| 5. | 2025年7月7日 | ストレージ及びアクセス技術(SATs)に関するガイダンスの一部改訂案(ICO) |
| 6. | 2025年7月30日 | オンライン安全確保のためのプロファイリング・ツールに関するガイダンスの一部改訂案(ICO) |
| 7. | 2025年8月21日 | Data (Use and Access) Act 2025に関連した、認められた正当な利益やデータ保護苦情処理プロセス等に関するガイダンス案※31(ICO) |
| 8. | 2025年8月13日 | ライブ顔認識技術の利用に関するデータ保護ガイダンス(ICO) |
| 9. | 2025年8月28日 | 分散型台帳技術に関するガイダンス案(ICO) |
| 10. | 2025年9月2日 | 暗号化に関するガイダンス(ICO) |
| 11. | 2025年10月31日 | データ保護執行手続に関するガイダンス案(ICO) |
2025年のEU及び英国における主な執行事例は以下のとおりです※32。
| No. | 日付/データ保護当局 | 事業者 | 処分内容 |
|---|---|---|---|
| 1. | 2025年3月10日/ドイツ | Vodafone GmbH | ドイツ市場で事業を展開する通信サービスプロバイダーが、提携代理店が運営する店舗を含む様々な販売チャネルを活用しており、これらの販売チャネルは当該プロバイダーにとって個人データの処理に係る処理者であるところ、(i)処理者の監督・監査について不十分であったこと、(ii)顧客データが詐欺に悪用されるリスクにつながるITシステムの問題があり、実際にいくつかのケースで問題が発生したこと、また、(iii)顧客アカウントの認証プロセスにeSIMの悪用につながるおそれのある問題があったことについて、合計4,500万ユーロの制裁金 |
| 2. | 2025年3月14日/スペイン | CENTROS COMERCIALES CARREFOUR, S.A. | 約11万9,000人が影響を受けたとされるデータ侵害事案について、十分なセキュリティ措置をとっておらず、また影響を受けたデータ主体に通知していなかったとして、320万ユーロの制裁金 |
| 3. | 2025年3月17日/ポーランド | Poczta Polska SA (Polish Post) | ポーランドのデジタル担当大臣が法的根拠なしに国営の郵便事業者であるPolish Postに対してポーランド人の個人識別番号や名前・住所等の個人データを提供し、Polish Postも適法に個人データを処理していなかったとして、644万4,174ユーロの制裁金 |
| 4. | 2025年4月10日/イタリア | Luka Inc. | 生成AIシステムに基づく文字及び音声のインターフェースのチャットボットであるReplikaサービスについて、適切な法的根拠を特定できなかったこと、プライバシーポリシーが不十分であったこと、年齢認証システムが不十分であったこと等を理由として、500万ユーロの制裁金 |
| 5. | 2025年5月2日/アイルランド | TikTok Technology Limited | 十分性認定を受けていない中国への越境移転について、(i)中国への移転がEU域内で保証されているものと本質的に同等の個人データの保護レベルを確保しなければならないところ、中国の法令及び実務における個人データの保護のレベルを適切に評価していなかったこと、及び(ii)2021年当時のプライバシーポリシーでは個人データが移転される第三国(中国を含む)の名称が記載されておらず、移転に係る処理業務の性質について説明されていていなかったこと※33等を理由として5億3,000万ユーロの制裁金 |
| 6. | 2025年6月5日/英国 | 23and Me, Inc. | 約15万5,000人が影響を受けた、サイバー攻撃による健康状態に関する情報を含むデータ侵害の事案について、個人データの適切な保護措置がとられていなかったとして、231万ポンドの制裁金 |
| 7. | 2025年6月23日/ポーランド | McDonald’s Polska Sp. z o.o. | 従業員及びフランチャイズ加盟店のデータが漏えいした事案について、処理者において個人データのリスクに応じて適切なレベルのセキュリティが講じられておらず、管理者と処理者のいずれにおいてもリスク分析もなされず適切な技術的・組織的措置がなされていなかったこと等を理由として、管理者であるフランチャイザーに対して402万2,773ユーロの制裁金※34 |
| 8. | 2025年7月23日/ポーランド | ING Bank Śląski | 銀行が、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策に関する法律で適法とされる場合でないにもかかわらず顧客及び潜在顧客の身分証明書をスキャンしていたこと等を理由として、437万5,273ユーロの制裁金 |
| 9. | 2025年9月1日/フランス |
GOOGLE LLC GOOGLE IRELAND LIMITED |
Gmailメッセージサービスの「プロモーション」タブと「ソーシャル」タブ内のメールの中にメール形式の広告を表示していたことに関して、郵便・電子通信法典に基づいて必要とされるユーザーの同意を得ていなかったこと、及び、広告目的でのCookieの使用に関して、サービスへのアクセス条件であることがユーザーに明確に伝えられていなかったためユーザーの有効な同意が得られていなかったことについて、米国法人に対して2億ユーロ、アイルランド法人に対して、1億2,500万ユーロの制裁金 |
| 10. | 2025年9月1日/フランス | INFINITE STYLES SERVICES CO. LIMITED | フランスで毎月平均1,200万人がアクセスする「shein.com」のウェブサイトにおいてCookieを配置する前にユーザーの同意を得ていなかったこと、情報提供が不十分であったこと等を理由として、1億5,000万ユーロの制裁金 |
| 11. | 2025年9月5日/エストニア | Allium UPI | 子ども及び脆弱性のある人々を含む75万人以上が影響を受けた、購入した医薬品等の情報を含むデータ侵害の事案について、多要素認証が実施されていなかった等、個人データの適切な保護措置がとられていなかったとして、300万ユーロの制裁金 |
| 12. | 2025年10月15日/英国 | CAPITA PLC/ CAPITA PENSION SOLUTIONS LIMITED | 約660万人が影響を受けた、犯罪歴、財務データ、特別な種類の個人データ等のセンシティブな情報を含むサイバー攻撃によるデータ侵害の事案について、(i)管理アカウントの階層化モデルを実装していなかったために攻撃者が重要なシステムに侵入することができ、しかもこの点は3回にわたって脆弱性として報告されていたにもかかわらず改善されていなかったこと、(ii)インシデントに係るセキュリティアラート後に適切に対応しなかったこと、及び(iii)ペネトレーションテストが運用開始時のみ行われその後実施されず、またペネトレーションテストの結果が各事業部門でサイロ化されて十分な対応がとられていなかったこと等を理由として、二社に対して合計1,400万ポンド(800万ポンド及び600万ポンド)の制裁金 |
| 13. | 2025年10月16日/オランダ | Experian Nederland B.V. | 個人の信用スコアの作成に当たり、商業登記簿や顧客データを販売する通信会社やエネルギー会社などの様々な情報源から個人データを収集していたことについて、データ収集に関してデータ主体に対して適切な通知を行っていなかったこと、また、個人データを処理するために適切な法的根拠がなかったこと等を理由として、270万ユーロの制裁金 |
| 14. | 2025年11月14日/クロアチア | 電気通信事業者※35 | ユーザーの個人データをセルビア(EEA外)のグループ会社である処理者に対して移転したところ、(i)2020年4月16日から2022年12月27日までは標準契約条項(SCC)に基づき移転していたものの、それ以降は当該処理者とSCCを締結せずGDPRに基づく適切な保護措置が講じられていない状態になっていたこと※36、(ii)データ主体に対してEEA外であるセルビアへのデータ移転について通知しておらずプライバシーポリシーでもEEA外に個人データが移転されることを明確に示す文言が用いられていなかったこと、(iii)DPOの意見を無視して行った従業員の身分証明書のコピーの収集につき処理の適法性を欠き過度な個人データの処理であったこと、及び(iv)処理者が基本的な個人データ保護措置を講じていなかったこと等を理由として、450万ユーロの制裁金 |
| 15. | 2025年11月25日/スペイン | AENA, S.M.E., S.A. | 空港での顔認識技術の使用に関するデータ保護影響評価(DPIA)において、GDPR35条7項でDPIAに含めなければならないとされている事項について、予定されている処理業務及び処理目的の体系的な記述が十分でなく、また処理の目的に関する処理業務の必要性及び比例性の評価が適切になされていなかったこと等を理由として、1,004万3,002ユーロの制裁金 |
2025年のEUにおける主な裁判例は以下のとおりです※37。
| No. | 日付/裁判所 | 判旨 |
|---|---|---|
| 1. |
2025年2月27日 欧州司法裁判所 |
|
| 2. |
2025年9月4日 欧州司法裁判所 |
|
| 3. |
2025年12月2日 欧州司法裁判所 |
|
データ法3条1項に基づくデザイン義務(ユーザーによる一定の方法でのデータへのアクセスが可能となるようコネクテッド製品や関連サービスを設計等する義務)が、2026年9月12日以降にEU市場に上市されるコネクテッド製品及び関連サービスに適用されます。かかる義務は、コネクテッド製品や関連サービスのデザインや仕様に影響を及ぼすものであり、対応に時間を要することが予想されます。
また、サイバーレジリエンス法の脆弱性/インシデントの報告義務が2026年9月11日から適用開始されます。同法では、悪用されている脆弱性/深刻な(severe)インシデントが発生した場合の当局への初期報告について、厳しい時間的制限(当該事態を認識してから24時間以内)が課されていることに注意が必要です。
さらに、AI法についても、50条の透明性義務が2026年8月2日から適用開始され、同条が定めるAIシステムの類型※40に応じて、AIであることの通知やアウトプットへのラベリング等、透明性を確保するための措置が求められることになります※41。
そのため、これらの各法令について、自社の事業における対応の要否を早期に検討した上で、対応すべき場合には速やかに具体的な対応事項の整理、そのための体制作りと実務的対応への落とし込みをしていく必要があります。また、当局の執行に関する動向についても併せて注視することが重要です。
Digital Omnibusは、欧州委員会による提案であり、法律として成立するためには、EU理事会・欧州議会・欧州委員会の各代表による「三者対話(trilogue)」を経るなどしてEU理事会と欧州議会による共同採択を経る必要があります。特に、オムニバス法案(AI)については、AI法における附属書IIIに該当するハイリスクAIシステムに関する規制等の適用開始が2026年8月2日であることを踏まえ、関係機関は同日までに法案の最終合意に達することを目指すと予想されますので、法案の動向については引き続き注目する必要があります。なお、ハイリスクAIシステムに該当する場合、適用される義務の数や複雑さにかんがみ、対応には相当程度の時間を要すると考えられるため、ハイリスクAIシステムに該当するか否かの判断及び該当する場合の対応事項の整理等については、なるべく早めに進めることが望ましいと思われます。
また、2025年11月19日、欧州委員会は、2026年3月11日を期限として、Digital Omnibusに続くEUのデジタル規制を簡素化するための計画の第二段階であるデジタルフィットネスチェックのためのエビデンス募集及び意見募集を開始しました。Digital Omnibusにおいて、デジタルフィットネスチェックで実施する分析は、デジタル規制のさらなる調整の必要性の検討に用いることが明記されており、2026年以降もデジタル規制の見直しに関する提案がなされる可能性があります※42。
2024年12月8日に発効した新たな製造物責任指令(EU Directive on Liability for Defective Products)は、デジタル時代の製品とその関連リスクの性質を反映した責任規定に更新すること等を目的として従前の製造物責任指令を改正するものであり、アプリケーション、オペレーティングシステム(OS)、AIシステムを含むあらゆる種類のソフトウェアが新指令の適用対象となることが明確化されています。EU加盟国は2026年12月9日までに同指令を国内法に組み込む必要があり、同指令は同日以降にEU市場に上市された製品に適用されることになります。
2026年の欧州委員会作業計画において、同年の第4四半期にデジタル公正法に関する立法イニシアチブを行うことが公表されています。この立法イニシアチブは、ダークパターン、ソーシャルメディアインフルエンサーによるマーケティング、デジタル製品の中毒性のあるデザイン、不公正なパーソナライゼーション手法(特に消費者の脆弱性が商業目的で悪用される場合)など、消費者がオンラインで直面する問題に取り組むことが期待されています。
英国では、DUAAの段階的な施行、並びにデジタル市場、競争及び消費者法のうちサブスクリプション契約に関する規定の施行が予定されています。また、サイバーセキュリティ関連では、サイバーセキュリティ及びレジリエンス法案の審議が進むと考えられ、ランサムウェアに関する法案が議会に提出される可能性もあるものと思われます。
2025年もデータ・AI等に関連して法令改正・立法の動きがありましたが、2026年には、英国のDUAAの段階的な施行が予定されているほか、EUにおける近時の多岐にわたる法令改正・立法を踏まえてデータ法のデザイン義務やサイバーレジリエンス法の脆弱性/インシデントの報告義務、AI法の透明性義務等の重要な義務の適用が開始されることになります。また、GDPRを中心として当局による積極的な執行が継続しており、既存の法令についても遵守を確保できているかの確認の必要性も高まっている状況にあるといえます。このため、既存の法令への対応を進めていくとともに、新たな法令の適用に向けた準備が求められる場面が増えていくものと思われます。最新の実務動向について把握する必要性がますます高まっていくと考えられますので、弊所としても引き続きこうした対応のサポートや情報発信を積極的に行って参りたいと考えております。
※1
Omnibus VIにおいて、欧州委員会は、SMCsを従業員750人未満であり、かつ売上高1億5,000万ユーロ以下又は貸借対照表上の総資産1億2,900万ユーロ以下の企業と定義しています。もっとも、2025年9月24日には、EU理事会において、SMCsの基準を従業員1,000人未満であり、かつ売上高2億ユーロ以下又は貸借対照表上の総資産1億7,200万ユーロ以下の企業に引き上げる交渉方針の承認を行った旨が公表されており、SMCsの基準は今後の手続の中で変更される可能性があります。
※2
具体的には、①処理記録の作成義務が免除される対象を、従業員数が250名未満の企業又は組織から、750名未満の企業又は組織に拡大することが提案されています。また、②人数要件を満たしてもなお処理記録の作成義務が免除されない場合について、現行の(i)個人データの処理がデータ主体の権利及び自由に対してリスクを発生させる可能性がある場合、(ii)個人データの処理が一時的ではない場合、又は(iii)処理がGDPR9条1項の特別な種類の個人データ若しくはGDPR10条の有罪判決及び犯罪行為に関連する個人データを含むものである場合のいずれかを満たす場合から、個人データの処理がデータ主体の権利及び自由に対して高いリスクを発生させる可能性があり、GDPR35条のデータ保護影響評価(DPIA)が必要となる場合に限定することが提案されています。
※3
オムニバス法案及びオムニバス法案(AI)については、2025年12月個人情報保護・データプライバシーニュースレターNo.62「GDPRの改正提案を含む欧州委員会によるDigital Omnibusの公表」もご参照ください。
※4
なお、オムニバス法案におけるGDPRへのCookieにかかる規定の追加は、ePrivacy指令を改正し、規律の一部をGDPRに移行するものです。
※5
データ法3条1項に基づくデザイン義務については、2026年9月12日以降にEU市場に上市されるコネクテッド製品(connected product)及び関連サービス(related service)に適用されます。また、データ法の適用開始日(2025年9月12日)以前に締結された契約であっても、(i)期間の定めがないもの、又は(ii)2034年1月10日より後に終了する契約については、2027年9月12日以降、事業者間のデータアクセス・利用に関する契約条項のうち一方的に課された不公正な条項の拘束力を否定するルールが適用されます。
※6
具体的には、データ保有者は、営業秘密を開示した場合に、EUと同等の営業秘密保護法制を有していない第三国に所在する第三者、又は当該第三者の直接的若しくは間接的な支配下にあるEU域内の第三者により、当該営業秘密が不正に取得又は使用されるおそれが高いことを証明したときは、所管当局への通知を行うことにより、データへのアクセスを拒否することができるとされています。
※7
2003年5月6日付欧州委員会勧告において、SMEsは、従業員数250人未満であり、かつ、売上高5,000万ユーロ以下又は貸借対照表上の総資産4,300万ユーロ以下の企業と定義されています。
※8
なお、欧州委員会は、2026年1月22日、データ法に関するFAQ(Version 1.4)を公表しています。
※9
「データ共有者」は、データ法上の用語ではないものの、MCTsでは、多様なシナリオにおいて任意でのデータ共有が行われる可能性があることを踏まえ、データ共有を行う主体についてデータ共有者という用語が用いられています。
※10
IaaS(Infrastructure-as-a-Service)、PaaS(Platform-as-a-Service)及びSaaS(Software-as-a-Service)といったクラウドサービスが典型例とされています。
※11
専用の安全なオンライン上の場所において、顧客が契約書類に容易かつ継続的にアクセスできる状態を確保することや完全かつ構造化された形式でダウンロード又はエクスポートできるようにすること等、サービス提供者に対し、顧客が契約内容を確認・取得できるよう、透明性とポータビリティの確保を求める規定です。
※12
なお、データ法におけるクラウドSCCsは、GDPRに準拠した規定は組み込まれていないため、例えば、EEA域外への個人データの移転を伴う場合にはGDPRにおける個人データの域外移転のための標準契約条項を締結するなど、GDPR上の要件を満たすための対応が別途必要となります。
※14
附属書Iに該当するハイリスクAIシステムとは、自動車等、一定のEU製品関連法で規制される製品又はその安全コンポーネントとして使用されるAIシステムであって、当該法令において第三者適合性評価を受ける必要があるものをいいます。
※15
附属書IIIに該当するハイリスクAIシステムとは、重要インフラ(安全関連部品)、教育(特に入学及び学習評価)、及び雇用(特に採用及び業績評価)等の附属書IIIに定義される高リスク分野の少なくとも1つに該当し、かつ、自然人の健康、安全又は基本的権利を害する重大なリスクをもたらすAIシステムをいいます。
※16
なお、2026年8月2日以降に当該AIシステムをEU市場に上市する場合には、当該AIシステムの提供者は、その時点で直ちにAI法50条2項に定める透明性義務を遵守する必要があります。
※17
AI法上、適用対象はハイリスクAIシステムの提供者に限定されていますが、改正案では、(ハイリスクAIシステムの提供者のほか、)ハイリスクAIシステムのディプロイヤー並びにその他のAIシステム/AIモデルの提供者及びディプロイヤーが対象とされています。
※18
同ガイドラインの内容については、2025年4月テクノロジー法ニュースレターNo.60/欧州最新法律情報No.34「<AI Update>欧州AI法「禁止されるAIプラクティス」に関するガイドラインの公表」もご参照ください。
※19
汎用目的AIモデルの提供者の義務の範囲に関するガイドラインについては、2025年11月11日にFAQも公表されています。
※20
AIオフィスは、AIシステム及び汎用目的AIモデル、並びにAIガバナンスの実施、モニタリング及び監督に貢献することを目的とする欧州委員会内の組織です(AI法3条(47))。
※21
ハイリスクAIシステムについても、重大なインシデントについての各加盟国の当局への報告に関して、2025年9月26日にガイダンス案及び報告テンプレートが意見募集用に公表されています(意見募集は同年11月7日まで)。
※22
一般に、企業や組織の情報セキュリティシステムの運用管理を、社外のセキュリティ専門企業等が請け負うサービスをいいます。
※23
その後、例えばドイツにおいては、NIS2指令を踏まえた国内法が2025年12月5日に成立し、同月6日に発効しました。
※24
また、欧州委員会は、2025年3月5日にFAQを公表しています。
※25
GDPR6条1項(c)は管理者が服する法的義務を遵守するために処理が必要な場合を個人データ処理の適法根拠としており、また、同9条2項(i)は、データ主体の権利・自由を保護するための適切かつ具体的な措置(特に職業上の守秘義務)を定めたEU法又は加盟国法に基づいて、国境を越える健康上の重大な脅威からの保護や、医療・医薬品・医療機器の品質・安全性の高い基準の確保など、公衆衛生分野における公共の利益のために処理が必要な場合を特別な種類の個人データの処理が認められる例外事由としています。
※26
ただし、両者が共同管理者に当たるか、それとも(共同管理者ではない)別々の管理者に当たるかについては明確にはされていません。
※27
オープンバンキングとは、大要、銀行が保有する顧客の口座情報等について、顧客の同意に基づいて第三者(決済指図伝達サービス事業者や口座情報サービス事業者等のフィンテック事業者等)がアクセスできるようにする仕組みをいいます。
※28
典型的には銀行がこれに当たります。
※29
なお、オープンバンキングの概念を、決済口座以外の幅広い金融商品に拡大することを目的として提案された金融データアクセス規則案(Financial Data Access Regulation)については、2025年4月1日及び同年6月17日にそれぞれEU理事会・欧州議会・欧州委員会の各代表による「三者対話(trilogue)」が開催されています。
※30
DUAAの詳細については、2025年7月個人情報保護・データプライバシーニュースレターNo.58/欧州最新法律情報No.35「英国Data (Use and Access) Act 2025の成立」をご参照ください。
※31
DUAAに関連して、本文で言及したもの以外にも、ICOが公表している現行のガイダンスについては、同法による改正を踏まえたアップデートが予定されています。
※32
2026年に入ってからも、2026年1月13日に、フランスのデータ保護当局によりFREE MOBILE及びFREEに対して、2,400万人の加入者が影響を受けたデータ侵害の事案について個人データの適切な保護措置がとられていなかったこと、データ主体への通知内容が不十分であったこと、加入者の個人データを過度に長期間保持していたこと等を理由として、合計4,200万ユーロの制裁金が科されたという事案があります。
※33
なお、アイルランドのデータ保護当局の公表文によれば、調査の過程で更新された2022年12月時点の同社のプライバシーポリシーにおいてはデータが移転される第三国が特定されるなどしており、GDPR13条1項(f)の要件を満たした内容になっているとのことです。
※34
同事案では、処理者に対しても4万3,680ユーロの制裁金が科されています。
※35
当局のウェブサイトにおいては、執行の対象となった事業者名は公表されていません。
※36
当局の具体的な決定内容は確認できてないものの、処分内容としては、本来、2022年12月27日までに2021年6月4日に欧州委員会が公表した新しい雛形のSCCを締結すべきであったにもかかわらず、事業者がかかる対応をしていなかったことについて、2022年12月27日以降GDPR第5章の越境移転に係る規制への違反を認定したものと考えられます。
※37
本文で紹介した他にも、オンラインで鉄道チケットを購入する際に、顧客に「Sir」又は「Madam」のいずれかにチェックを入れることで敬称と性自認を示すことを義務付けていることについて、GDPR6条に関して、契約履行に必要な場合(同条1項(b))には該当せず、また、正当な利益(同項(f))を満たさない場合があり得る旨を判示した2025年1月9日の欧州司法裁判所の判決もあります。
※38
同事案は、当該オンラインマーケットプレイス上で、ある女性が性的サービスを提供しているという虚偽かつ有害な広告を身元不明の第三者が掲載したことについて、オンラインマーケットプレイスの運営者の責任が問われました。
※39
なお、本文で述べた他にも、電子商取引指令12条から15条の仲介サービス提供者の責任に係る規定(同14条1項による免責など)はGDPRには適用されない旨も判示しています。
※40
具体的には、①チャットボット等の対話型のAIシステム、②音声、画像、動画、テキストコンテンツを生成するAIシステム、③感情分析や生体情報による分類を行うAIシステム、④公共の利益にかかる事項の周知を目的として公開されるテキストを生成し、操作するAIシステムが対象となります。
※41
ただし、上記1(3)①でも述べたとおり、オムニバス法案(AI)では、2026年8月2日までにEU市場に上市された合成の音声、画像、動画、又はテキストコンテンツを生成するAIシステム(汎用目的AIシステムを含みます。)との関係では、AI法50条2項に定める透明性義務(アウトプットにAIによる生成物である旨をマーキング等する義務)の適用時期を2027年2月2日とすることが提案されています。
※42
また、オムニバス法案及びオムニバス法案(AI)の説明文書には、データ法やAI法に関する複数のガイドライン(例えば、データ共有に際して請求可能な対価を明確化する合理的な補償に関するガイドライン、データ法の定義を明確化するガイドライン、AI法におけるハイリスク分類の実務的な適用に関するガイドライン等)の作成を行う旨が記載されているため、ガイドラインの策定状況についても注視する必要があります。
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