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ニュースレター

デジタルトークンへの証券規制の適用関係に関するガイドラインの公表(シンガポール)

著者等
酒井嘉彦
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Asia Legal Update ~アジア最新法律情報~ No.265(2026年1月)
業務分野

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1. はじめに

 シンガポール証券先物法(Securities and Futures Act)は、日本の金融商品取引法に相当する法令として、株式、債券、ビジネストラスト持分等の証券、集団投資スキーム持分、デリバティブ商品等の資本市場商品(capital markets products)の発行・募集規制やその取扱いに関するライセンス規制等を定めている。

 近時シンガポールでは、デジタルトークンの形態による資本市場商品(資本市場商品に関する権利義務を表象するデジタルトークン)の発行・募集や、セカンダリー取引、決済、カストディ等の資本市場のバリューチェーン全体での活用への関心が高まりを見せている。ブロックチェーン技術を活用してトークン化された資本市場商品はその設計次第で多用なメリットが考えられ、一般的には、例えば従来型の資本市場商品よりも小口かつ迅速な発行・募集ができること、取引の透明性の向上、取引コストの削減、投資リターンを含めて柔軟な設計が可能なこと等が挙げられている。

 2025年11月、シンガポール金融庁(Monetary Authority of Singapore。「MAS」)は、デジタルトークンに係る証券規制の適用関係の明確化と責任あるデジタル資産エコシステムの促進を目的として、資本市場商品のトークン化に関するガイドライン(Guide on the Tokenisation of Capital Markets Products。「本ガイドライン」)を公表したため、その概要を紹介する。なお、ブロックチェーン技術を活用して証券等をデジタル化したものを一般的にセキュリティートークンと呼ぶこともあるが、本ガイドラインでは敢えてセキュリティートークンという用語を用いないとしているため、本稿ではデジタルトークンの形態による資本市場商品を「CMPsトークン」という。

2. デジタルトークンの証券先物法上の「資本市場商品」への該当性

 CMPsトークンについても、経済的実質や内在するリスクが同じである限り、トークン化されていない資本市場商品と同様の証券先物法上の規制要件が基本的に適用される。その上で、技術中立的なアプローチが採用され、デジタルトークンの資本市場商品への該当性は、該当トークンの経済的実質に注目し、トークンの特徴、意図、スキーム及び付随又は派生する権利の内容等を総合的に踏まえて判断される。

 本ガイドラインでは、資本市場商品の類型毎に、デジタルトークンの資本市場商品該当性の検討に参考になる17事例のケーススタディが例示されている。

 なお、MASは、デジタルトークンの発行・募集にあたり、資本市場商品該当性及び証券関連法(証券先物法、Financial Advisers Act及びこれらの関連下位法令)の適用関係について専門家による法的アドバイスを受けることを強く推奨している。

3. CMPsトークンの発行・募集に対する証券関連法の適用

(1) 証券先物法の適用

 原則として、CMPsトークンは、トークン化されていない資本市場商品と同様の発行・募集に関する証券先物法の募集勧誘規制の適用を受け、例えば、その募集については原則として目論見書の交付が必要となり、また、集団投資スキーム持分の場合にはMASへの登録が必要となる。もっとも、証券先物法上の適用免除規定(少人数私募の場合や機関投資家・適格投資家への募集で所定の要件を満たす場合等に、目論見書要件やMAS登録要件を免除する規定)も、CMPsトークンの発行・募集の場合にも同様に適用される。

(2) CMPsトークンの募集に関する投資家への開示

 資本市場商品の募集に関する目論見書には、発行体及び対象商品に関して投資家の投資判断のために必要となる十分な情報を開示する必要がある。CMPsトークンの募集に目論見書の作成が必要となる場合には、トークン化/CMPsトークンの特徴及びリスクを踏まえた開示をする必要があり、その例は以下の通りである。

特徴 トークンを支える技術
  • 分散型台帳技術(DLT/distributed ledger technology)の種類
  • スマートコントラクトの活用とガバナンス
  • トークンのミント、発行、譲渡、償還及びバーンに関するプロセスと管理方法
  • DLTネットワークの構築と運用に関与する主要な者とその役割
権利義務
  • トークンの特徴、意図及びスキーム
  • 所有権の記録方法
  • 発行体等がDLTネットワーク上の記録を修正・上書きする権利
  • スキーム全体に係る法的な規制枠組みとその評価
カストディ
  • トークンの保有・管理の形態
  • 裏付資産がある場合のその管理の取決め
リスク テクノロジー及びサイバーリスク
  • DLTネットワーク/スマートコントラクトの不具合に関連するリスク
  • セキュリティ侵害(サイバーアタックを含む)に関連するリスク
  • パブリック・パーミッションレス・ブロックチェーン等の特定の種類のブロックチェーンの利用に関連するリスク
オペレーションリスク
  • サービス提供者との取決めに違反が生じた場合のリスク
法規制上のリスク
  • 発行、取引又は償還に影響を与え得る法規制枠組み上のリスク
  • 法規制の不確実性又は法改正に伴ってトークンの価値に生じ得るリスク
カストディリスク
  • カストディの取決めに関連するリスク(秘密鍵の紛失・盗難等)
  • カストディの取決めに関連する裏付資産がある場合のリスク
その他のリスク
  • トークンの活発な取引市場を欠いた場合の価格リスクや流動性リスク等

4. CMPsトークンに関連する活動を行う事業体への証券関連法の適用

 CMPsトークンに関連する活動及びそれに関与する仲介業者やサービス提供者は、トークン化されていない場合とは異なる場合があるところ、MASは、それらの活動の実質に注目して規制対象行為該当性やライセンス要件の適用有無を判断する。

 例えば、以下の者が規制対象行為に該当する活動を行う場合には、関連するライセンスを取得し、また、MASの承認又は認可を得る必要がある(但し、ライセンスの適用免除規定に該当する場合は除く。)。

  • CMPsトークンのプライマリー募集又は発行のためのプラットフォームを運営する者
  • CMPsトークンの取引のためのプラットフォームを運営する者
  • CMPsトークンのカストディサービスを提供する者
  • CMPsトークンに関してフィナンシャルアドバイスを提供する者

 また、これらの者も証券関連法上のAML/CFT規制の適用を受ける。

5. 証券関連法の域外適用

 CMPsトークンに適用される証券先物法の規定は、シンガポール国外の者が規制対象行為の一部を国内で行う場合や国外で行われた規制対象行為がシンガポールにおいて実質的かつ合理的に予見可能な効果を有する場合にも域外適用され得る。

 また、CMPsトークンに適用されるFinancial Advisers Actの規定も、シンガポール国外の者が、シンガポールの公衆又はその一部に対してサービスを提供する場合等にも域外適用され得る。

6. おわりに

 MASは、デジタルトークンの利用分野における動向・発展は未だ流動的な部分があるため、本ガイドラインの随時改訂を行い、資本市場のバリューチェーン全体においてトークン化活動に関与する業界関係者に対し、規制上の明確性を継続的に提供していくと述べており、今後のアップデートにも注目したい。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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