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データセンター事業と水の確保~工業用水道の活用の展望~

著者等
渡邉啓久
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Infrastructure, Energy & Environment Legal Update ~インフラ・エネルギー・環境ニュースレター~ No.56/NO&T Real Estate Legal Update ~不動産ニュースレター~ No.17(2026年2月)
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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1. はじめに

 昨年12月2日、経済産業省の下に設置された産業構造審議会 地域経済産業分科会 工業用水道政策小委員会(以下「小委員会」といいます。)において、データセンターへの工業用水供給のあり方について審議が行われました。近年、クラウドサービスやAI需要の拡大を背景にハイパースケールクラスを中心とするデータセンターの開発が各地で進められていますが、サーバー機器の高密度化等に伴って、その冷却方式も、従来主流であった空冷方式からより高効率な水冷方式への移行が進んでいます。その結果、データセンターの開発・運営において、電力供給や通信ファイバーと並び、大量の水の供給を確保することは重要な条件となっています。そのため、データセンターの開発・運営事業者の観点では、安定的かつより低コストで水を調達できる環境の確保が重要性を増していますが、その際、上水道と比較して安価な工業用水の活用の可否が問題となります。

 もっとも、従来の工業用水の供給に関する規制の下では、工業用水道からデータセンターへの安定的な水供給が十分に担保されているとはいえず、この点が課題とされてきました。昨年12月の小委員会では、多額の投資を伴い設備更新や税収を含め地域経済に大きな波及効果をもたらし、地域経済を牽引する事業となり得るデータセンターは工業発展のみならず地域の成長基盤を支える重要な設備であるとの認識の下、その安定稼働を確保する観点から、重点的に事業促進を図る区域において地域経済を牽引する、あるいはそれに準ずる役割を担うデータセンターに対して工業用水を供給できる仕組みの検討を進める方針が示されました。

2. 工業用水道事業法とデータセンター向け雑用水供給の関係

(1) 工業用水道事業法と雑用水供給

 工業用水の供給事業に関しては、昭和33年10月24日に施行された工業用水道事業法が規律しています。同法は工業用水道事業を規律する事業法であり、2025年3月現在、全国に146の工業用水道事業者(都道府県や市町村といった行政主体の場合も含みます。)が存在し、供給先数は5,624、給水能力は20,795,000㎥/日に上ります※1

 同法で定義される「工業」は「製造業(物品の加工修理業を含む。)、電気供給業、ガス供給業及び熱供給業」を指し、「工業用水」は「工業の用に供する水(水力発電の用に供するもの及び人の飲用に適する水として供給するものを除く。)」と定義されています(同法第2条参照)。そのため、製造業や電気・ガス・熱の供給業に該当しないデータセンター事業については、工業用水道事業法上、工業用水の供給対象外となります。

 もっとも、高度経済成長期を経て、地域における大規模工場の縮小・撤退が進んで工業用水の需要が減少し、工業用水道事業者の経営が厳しくなったという工業用水道事業法制定後の社会事情の変化を踏まえ、かねてから、行政通達により、暫定的な措置として、工業用水道事業法にいう「工業」に該当しない事業に対しても、一定の条件の下で、工業用以外の用途での非飲用水の供給が許容されてきました。これが雑用水の供給と呼ばれる仕組みですが、2025年4月1日現在、この行政通達に基づいて雑用水を供給する事業者は79、供給先の数は953、契約数量は287,000㎥/日に上るとされます※2。通達上の供給ルールは、時代の変遷とともに徐々に緩和されてきましたが、平成26年12月25日付の通達※3では、大要以下の内容が求められています。

平成26年12月25日付通達の条件(平成27年4月1日以降に適用)
項目 概要
(1) 雑用水の供給条件
  • 工業用水道に余剰が生じている場合、工業用以外の用途の水(ただし、人の飲用に適する水として供給するものを除く。)を供給することが可能
  • 雑用水を給水能力の10%を超えて供給しようとする(既に10%を超えて供給している者が、供給先数の追加又は供給量の増量をしようとする場合を含む。)者は、経済産業省に対し、計画書及び供給先一覧表を提出しなければならない
(2) 雑用水の供給区域
  • 工業用水の給水区域に準ずる
(3) 雑用水の供給対象
  • 以下の要件のいずれかを満たす必要がある
  1. 公共施設等であって、地域の開発振興に資する施設(例えば、学校、教育施設、下水処理場、し尿処理場、ゴミ焼却場等)
  2. 地盤沈下対策等のため地下水から水源転換を余儀なくされる施設(施設としては多数考えられるが、特にビルの冷暖房施設が主要な対象となると考えられる)
  3. 産業の健全な発達に資する施設(例えば、操車場等の洗車用水、建設現場、植物工場等の農業用施設、商業施設等が考えられる)
  4. 地域環境と調和を図るため、工業用水道から供給することが適当な施設(例えば、浄水場に隣接する公園などが考えられる)
(4) 工業用水供給との優劣
  • 雑用水供給は暫定的なものなので、将来において工業用水供給の申込みを受けた場合は、工業用水を優先的に供給するものとする

 データセンターは、「産業の健全な発達に資する施設」(上記(3)③)に該当するものとして、雑用水の供給対象に該当するものと考えられます。なお、経済産業省が工業用水道事業者向けに実施したアンケート(2025年10月)によれば、既に7の工業用水道事業者がデータセンター向けに雑用水を供給し、14の事業者が新規建設を予定しているデータセンターからの供給相談を受けていることが明らかになりました※4

(2) 雑用水の安定供給の課題

 行政の運用上の措置として認められるデータセンターへの雑用水供給ですが、あくまで通達に基づく暫定的な措置として行われるものであるため、データセンター事業者から見た場合、安定的な供給確保に懸念が残るのが現状です。工業用水であれば、工業用水道事業法第16条第1項により、原則として、工業用水道事業者は給水義務を負います※5。これに対し、データセンター向けの雑用水供給については、工業用水道事業法それ自体が適用されるわけではないため、法令上、工業用水道事業者に雑用水の給水義務はありませんし、平成26年12月25日付通達により、当初は工業用水道に余剰があったとしても、将来的に工業用水供給の申込みがなされて余剰がなくなった場合、工業用水道事業者がデータセンター向けの雑用水供給を停止するおそれがあります(上記表(4)参照)。

3. データセンター向け工業用水の供給の可能性

 工業用水道からデータセンター一般に工業用水を供給するには、データセンターの運営事業を「工業」(工業用水道事業法第2条第1項)に含めるための法改正が必要となるわけですが、昨年12月の小委員会で示された今後の検討方針は、「重点的に事業の促進を図る区域で地域における経済活動を牽引する事業を行うデータセンターに対して工業用水の供給を行える仕組み」を整えることです(なお、データセンターが上記の重点的に事業の促進を図る区域で地域における経済活動を牽引する事業に準ずる事業を行う場合についても対象に含める可能性がある、とされています。)。そのため、現時点では、工業用水道事業法を改正してデータセンター一般を「工業」の範囲に含めるという方向性よりも、例えば、重点的に事業促進を図るべき特定の区域について、国家戦略特区制度を通じた規制緩和措置を講じるといった特例的な措置が念頭におかれているものと推測されます。この関連では、今月13日を期限として公募が実施されている「GX戦略地域」のうちのデータセンター集積型において選定された地域について、工業用水道からのデータセンター向けの安定的な工業用水の供給が可能となるような特例措置が設けられる可能性も想定されるところです。なお、GX戦略地域に関しては、本ニュースレターNo.54『データセンター開発とワット・ビット連携の加速に向けた「GX戦略地域制度」の本格始動』(2026年1月)をご参照ください。

脚注一覧

※1
第19回 産業構造審議会 地域経済産業分科会 工業用水道政策小委員会「資料2」(2025年12月2日)5頁

※2
前掲注1の資料7頁

※3
経済産業政策局産業施設課長「工業用水道からの雑用水供給に係る運用等について」(26地施設第3号)

※4
前掲注1の資料10頁

※5
工業用水道事業者は、正当な理由がなければ、何人に対しても、その給水区域における工業用水の供給を拒んではならないとされ、例外的に、給水の申込を受けた工業用水の量が同法第17条に規定する供給規程で定める一給水先当りの給水量の最少限度に満たないときに限り、供給を拒否することが許容されます。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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