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「研究用」検査キットへの薬機法の適用に関するガイドライン案

著者等
鈴木謙輔鳥巣正憲萩原智治(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Health Care Law Update ~薬事・ヘルスケアニュースレター(法律救急箱)~ No.39(2026年2月)
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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 2026年1月20日、厚生労働省は「研究用と称する検査キット等の体外診断用医薬品の範囲に関するガイドライン(案)」(以下「「研究用」検査キットガイドライン案」又は「ガイドライン案」といいます。)を公表しました※1。「研究用」検査キットガイドライン案は、一般の消費者向けに販売される「研究用」と称する検査キットが、薬機法上の「体外診断用医薬品」に該当するか否かの判断基準について、厚生労働省の考え方を示すものです。現在、「研究用」検査キットガイドライン案はパブリックコメント手続中(意見受付締切:2026年2月19日)で、正式なガイドライン発出は2026年3月上旬に予定されています。

 本ニュースレターでは、「研究用」検査キットガイドライン案の内容を速報的にお伝えするとともに、実務に与える影響について検討いたします。

「研究用」検査キットに関するこれまでの経緯

 2021年頃以降、新型コロナウイルス感染症の感染が全国的に拡大していた状況の下、新型コロナウイルス抗原の有無を測定する検査キットが、「研究用」等と称して、ドラッグストアやインターネットにおいて販売されるようになっていました。これらの商品が「研究用」等と称されていたのは、薬機法における「体外診断用医薬品」が「専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないもの」と定義されていること(薬機法第2条第14項)を踏まえたものであったと考えられます。「研究用」であれば「疾病の診断に使用されることが目的とされている」という要件を充足せず、「体外診断用医薬品」(ひいては「医薬品」(薬機法第2条第1項))に該当しないため、薬機法の適用対象外である、という整理を企図したものであったと考えられます。

 厚生労働省は、このような「研究用」検査キットについて、2021年2月以降、複数の通知を発出し、薬機法の適用関係を整理することを試みてきました。2021年2月25日には、研究用と称する検査キットは性能等の確認がなされておらず消費者の自己判断で新型コロナウイルス感染症の罹患の有無を調べる目的で使用すべきでないこと等が注意喚起されるとともに※2、新型コロナウイルス感染症の診断を行うことが可能であると広告する研究用抗原検査キット等については、体外診断用医薬品との誤認を与えるため、指導の対象である旨の考え方が示されました※3。2021年9月27日には、本来は医療機関等での使用が想定されている医療用抗原定性検査キットについて、新型コロナウイルス感染症に係る特例的な対応として、薬局で販売することが認められました※4

 その後は、医療用抗原定性検査キットが一般消費者に利用可能となったことも受けて、あたかも新型コロナウイルス感染症の診断が可能であるかのように誤認させる「研究用」検査キットや、「研究用」と称しながらも研究の用途とは異なる販売方法や標ぼう(例えば「外出前や人が集まるイベントに参加する前に手軽にチェックできる」や「家族みんなの安心のために」、「帰省前に」等)を行う「研究用」検査キットについても指導の対象である旨が示された他※5、あたかも薬機法に基づく承認を受けたものと誤認を与えるような表示が景品表示法に違反するおそれがある旨※6が示される等、徐々に「研究用」検査キットに対する指導監督が強められました。

 このような経緯を踏まえ、2024年7月25日に開催された厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では、国民からの信頼性確保に向けた体外診断用医薬品の規制の見直しが必要であるとして、医薬品該当性に関するいわゆる46通知※7を参考に、体外診断用医薬品の該当性の判断を明確化するガイドラインを作成することが提案されました。ガイドラインの方向性として、例えば、「研究用試薬」と称しつつも、製品表示や販売経路、使用方法等を総合的に勘案し、実態としては人の感染症を診断させる目的で提供されている抗原検査キットについては、体外診断用医薬品に該当する事例として通知等で明示し、無承認・無許可体外診断用医薬品として同法に基づき取締りを行う、との考え方が示されました※8

「研究用」検査キットガイドライン案の内容

1. 基本的な考え方・ガイドラインの対象

 「研究用」検査キットガイドライン案では、大きく以下の2点の考え方が示されています。「研究用」等のディスクレーマーのみに注目するのではなく、販売実態等を総合的に考慮して、通常人の受け止めを踏まえて該当性判断を行うという考え方は、景品表示法に基づく表示規制等にも通じるところがあり、合理的な方向性と考えられます。

  1. 検査キット等が「体外診断用医薬品」に該当するか否かは、体外診断用医薬品としての目的を有しているか、又は通常人が体外診断用医薬品としての目的を有するものであると認識するかどうかにより判断されるべきである
  2. 体外診断用医薬品の該当性については、「研究用」、「医療用」、「診断には使用できない」等の表示のみで判断するのではなく、製品の容器、包装における記載、店頭での広告、インターネット上での販売に係るウェブページ上の記載等の標ぼう事項により、一般の消費者が容易に体外診断用医薬品であると認識できるかどうかを総合的に判断する必要がある

 また、「研究用」検査キットガイドライン案の対象は、「一般の消費者向けに販売される研究用抗原定性検査キット」とされています。ガイドライン案の策定の端緒は新型コロナウイルス感染症の「研究用」抗原定性検査キットの流通であったものの、ガイドライン案の対象疾患は、新型コロナウイルス感染症に限定されず、「例えば、インフルエンザ、性感染症等の診断に用いる製品やがんの罹患リスクを判定する製品も対象である」とされています。検査に用いる検体についても、「人体から得られた物であれば唾液、尿、鼻腔ぬぐい液、穿刺血等、その種類を問わない」とされています。

 ここで、「がんの罹患リスクを判定する製品」が対象として挙げられている点が注目されます。がんの罹患リスクを判定するものも含め、民間事業者の非臨床検査サービスについては、2025年3月28日に、厚生労働省より、利用者の個別の検査結果を用いて当該利用者の疾患の罹患可能性を通知する場合や、利用者の罹患リスク分類が適切な医学的・科学的根拠に基づかない場合には、サービス提供事業者が医師法第17条にいう「医業」を行っていることになる旨の考え方が示されていたところです※9。このような民間事業者の非臨床検査サービスが、薬機法ではなく医師法への適合性という観点から議論されている背景としては、サービス提供事業者から利用者に対して提供される物品が検体採取キット等の雑品に限られ、試薬等がサービス提供事業者の外部に流通しない場合も多いことから、必ずしも薬機法の規制が適用されるとは限らない点がある、とも考えられます。

 「研究用」検査キットガイドライン案が念頭に置く「がんの罹患リスクを判定する製品」の具体的な内容・製品構成は必ずしも明らかではないものの、今後の実務においては、両ガイドラインに留意した製品開発をする必要があると考えられます。

2. 体外診断用医薬品とみなされる標ぼう事項

 「研究用」検査キットガイドライン案では、以下の標ぼうを行う場合は体外診断用医薬品に該当するとの考え方が示されています。

標ぼうの類型
感染症等の疾患の診断目的や診断用途である旨が明示又は暗示されているもの
  • 「陽性の場合は医療機関を受診してください」等の検査結果によって感染症に対する対応を促す記載があるもの
  • 具体的な疾患名や疾患名を容易に想定させる表現・用語(新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス A/B等の病原体名等)により、当該疾患の診断目的であると暗示させるもの
  • 確定診断ではなく、PCR検査等を行うためのスクリーニング目的での検査や、罹患の疑い(感染の可能性等)を判定するもの
感染症等の疾患に罹患していること又は罹患していないことが確認できる旨が明示又は暗示されているもの ※健康な状態であること(疾患に罹患していないこと)の確認や判定も診断の一種とされている
諸外国において、体外診断用医薬品やそれに相当するものとして、承認、第三者認証機関等による認証等がされている旨を明示又は暗示する表現があるもの
  • ISO13485を取得している旨
  • FDA(米国)、Health Canada(カナダ)等で承認等を取得している旨
  • 欧州で体外診断用医薬品としてCEマークを取得している旨
薬機法に基づく承認を受けた体外診断用医薬品を用いた検査(PCR 検査、抗原検査等)等の疾病の診断に用いる検査と比較することにより、あたかも疾病の診断が可能であるかのように誤認させるもの
性能や使用方法から疾病の診断の目的で使用することを暗示する表現等を伴うもの
  • PCR陽性検体に対しての感度が正確であると確認されている旨の説明
  • 有症状者や感染後〇〇日~〇〇日目の者を対象とする旨の説明
  • 〇〇株に有効である旨の説明
  • 使用方法の説明における、人から検体を採取する旨の説明や図
  • 人から検体を採取するために使用するもの(例:スワブ、ランセット)又は研究用途での使用が想定されないもの(例:絆創膏)を同梱するもの

3. 研究機関等のみを対象としたものとの区別

 研究機関等で研究に用いられる研究用試薬は、一般に、薬機法の適用対象外と整理されています。これは、「研究用」であれば「疾病の診断に使用されることが目的とされている」という要件を充足せず、「体外診断用医薬品」(ひいては「医薬品」(薬機法第2条第1項))に該当しないためであり、逆に、研究用試薬の全てについて薬機法上の承認が必要であるとすると、研究活動に深刻な支障が生じるものと考えられます。

 「研究用」検査キットガイドライン案は、適用対象を「一般の消費者向けに販売される研究用抗原定性検査キット」としており、研究機関等のみに広告、販売しているなど、明らかに研究機関等のみを対象とした研究用抗原定性検査キットは適用対象外であるとされています。

 他方で、「研究用」等と称することでガイドライン案の適用を回避する抜け道を塞ぐ観点から、以下の場合には、「研究用」等と称していることのみを理由に体外診断用医薬品に該当しないとは言えないとされています。

研究の目的に対する説明が妥当ではないもの
  • 例:人の感染状況等を把握するための疫学調査用と称するもの
    (※各対象者の感染の有無の判断(診断)を行うことを指している可能性が高く、疫学調査用と称することのみをもって、研究用であるとみなすことはできない)
研究機関等ではなく、一般の消費者が使用することを暗示する表現を伴うもの
  • 例:「安心」、「安全」、「不安」といった表現
  • 自宅での使用など、一般消費者が使用する環境を想定する図や表現
  • 日常生活において意義がある旨の表現(外出前の使用の勧奨等)
研究機関等のみを対象とした販売方法であるとみなすことができないもの
  • 例:医薬品等との明確な区別が行われずに広告・陳列し、販売するもの
  • 感染症等の疾患対策の商品と共に陳列販売するもの
  • 明示的・暗示的を問わず、使用者の口コミとして、体外診断用医薬品として用いることができる旨を掲載しているもの

脚注一覧

※2
「新型コロナウイルス感染症の研究用抗原検査キットに係る留意事項について」(令和3年2月25日事務連絡 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部)

※3
「研究用抗原検査キットに係る監視指導について」(令和3年2月25日事務連絡 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)

※4
「新型コロナウイルス感染症流行下における薬局での医療用抗原定性検査キットの取扱いについて」(令和3年9月27日事務連絡 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課)

※5
「新型コロナウイルス感染症の研究用抗原定性検査キットの販売に関する監視指導及び留意事項について」(令和3年12月22日事務連絡 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)

※6
「新型コロナウイルス感染症の研究用抗原定性検査キットの販売に関する留意事項について」(令和4年5月2日事務連絡 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)、「新型コロナウイルス感染症の研究用抗原定性検査キットに関する留意事項について(その2)」(令和4年8月19日事務連絡 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部)、「新型コロナウイルス感染症の研究用抗原定性検査キットの販売に関する監視指導及び留意事項について」(令和4年8月24日事務連絡 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)

※7
「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日 薬発第476号 厚生省薬務局長通知)

※9
「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」(令和7年3月28日最終改正 厚生労働省 経済産業省)。詳細は、本ニュースレターNo. 37「民間事業者による非臨床の消費者向け検査サービスと「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」改正」をご参照ください。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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