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ニュースレター

2025年の主要な法改正(タイ)

著者等
佐々木将平
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Asia Legal Update ~アジア最新法律情報~ No.269(2026年2月)
業務分野

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

 2025年にタイにおいて行われた法改正のうち、現地の日系企業全般に影響があり得る主要なものを本稿にて取り上げる。

1. BOI関連の改正

(1) 外国人雇用に関する新基準

 投資奨励委員会(Board of Investment、以下「BOI」という。)により、外国人雇用に関する基準等を定めた新規則が2025年6月に公布され、2026年1月1日※1から施行されている。BOIから投資奨励を受けた事業者に対しては、雇用する外国人従業員のビザや就労許可に関する優遇措置が認められているが※2、外国人の雇用が無制限に認められているわけではなく、一定の条件に服する。新規則において追加された基準のうち、特に留意を要するポイントとしては、以下の点が挙げられる。

  • 従業員数100名超の製造事業者については、タイ人従業員比率を70%以上とすること。
  • 各外国人従業員について、職種毎に定められた最低平均月収(以下参照)以上を維持すること。なお、BOIが公表したQ&Aによれば、平均月収の計算上、賞与や諸手当を含むことも認められている。

<主な基準>

ポジション 最低平均月収
エグゼクティブ 150,000バーツ
マネージャー、エンジニア及びIT専門職 75,000バーツ
(関連する学位を有する場合は50,000バーツ)
オペレーションレベル 50,000バーツ

(2) 外資による土地所有恩典の一部撤廃

 2025年7月22日付のBOIの告示により、2025年9月1日以降、一定の奨励対象事業(鉄製品製造、非鉄金属の鋳造等、金属製品製造、産業用化学品製造、産業用プラスチック製品製造等)に関しては、外資企業による土地所有の恩典は付与されないこととなった。土地法上、外資マジョリティの会社が土地を所有することは原則として禁止されているところ、BOI投資奨励を受ければ例外的に外資による土地所有が可能であったが、それらの各業種については、今後、新たに土地所有の恩典を受けることは不可となった(既に取得済みの土地所有恩典には影響はない。)。但し、過去15年間(2011年から2025年)に同一法人で3件以上のBOI投資奨励プロジェクトを運営し、かつ合計資本投資額50億バーツ以上(土地費用・運転資金除く)の既存事業者は、本告示の対象外となり、引き続き土地所有に関する恩典の付与を受けることが可能である。

2. 汚職防止法の改正

 2025年6月6日に施行された改正汚職防止法(Organic Act on Anti-Corruption (No. 2) B.E. 2568 (2025))において、汚職に関する内部告発を行った者に対する保護制度が導入されている。具体的には、贈収賄、入札談合等に関して、汚職防止委員会(National Anti-Corruption Commission、以下「NACC」という。)や権限を有する担当官に対して善意で通報を行った者は、当該通報行為に起因する刑事、民事及び懲戒処分から免責される旨規定されている(但し、懲戒処分の免責の効果が及ぶのは、公務員に限られるものと解される。)。また、内部告発者に対して訴訟等の法的措置が取られた場合に、NACCが内部告発者の保護や防御のために各種措置(意見の申述、弁護士の選任や訴訟費用の負担等)を取ることが認められており、内部告発者の保護が図られている。

 同改正法においても、汚職行為に関する告発を行った従業員の保護や報復措置の禁止に関して、民間事業者が直接の義務を課せられるものではない。もっとも、内部告発者の保護拡充は、従業員等が当局に対して直接告発を行うことを促す面があることも踏まえると、告発者の保護を含む信頼性の高い内部通報制度を社内で整備し、社内での適時適切な報告を促すことが、汚職に関するリスク低減のためにより重要となったものと言えよう。

3. 労働法関連の改正等

 2025年12月7日に、産休の拡充及び育児休暇の導入を含む、労働者保護法の改正が施行された。主たる改正内容は、以下の通りである。

  • 出産する女性が取得可能な産休を120日に延長(改正前は98日)し、うち60日(改正前は45日)を有休とする。加えて、新生児の疾患時に最大15日追加で休暇(通常賃金の50%を支給する必要あり)を取得可能とする。
  • 出産する配偶者の補助のため、出産後90日後までに最大15日の育児休暇の取得を可能とする※3

 また、労働者福祉基金(Employee Welfare Fund)の制度※4が2025年10月1日からスタートする予定であったが、直前に導入延期となり、2026年10月1日から適用開始予定となっている。10名以上の従業員を雇用する事業所で、プロビデントファンド又はそれに相当する制度を導入していない事業所においては、2026年10月以降、基金に対する拠出金(労使それぞれ賃金の0.25%ずつ)を支払うとともに、労働保護福祉局に対する書類提出が必要となる。

4. 法人登記に関するオンライン申請の義務化

 商務省事業開発局(Department of Business Development、以下「DBD」という。)が、各種法人登記申請(法人設立、新規登録、変更届、解散・清算等)についてオンライン化を進めている。2026年1月1日から、法人登記に関するデジタルプラットフォーム(DBD Biz Regist)を通じたオンライン申請を義務づけ、紙ベースでの登記申請の受付を停止すると公表している(もっとも、本稿執筆時点では依然として紙ベースの申請も受け付けられているようである。)。

 オンライン申請に際しては、署名権限取締役自身がオンライン上で本人確認を行い申請を行う方法に加え、署名権限取締役が署名済みの書類をデータでアップロードする方法も認められる。また、オンライン申請を初めて行う際には、会社の取締役に関する情報等の追加登録が必要となる場合がある。

脚注一覧

※1
新規則の公布後に投資奨励を受けた事業者については、2025年10月1日から適用開始。

※2
例えば、通常、タイにおいて外国人を雇用する場合、外国人従業員1名につきタイ人従業員4名以上の雇用を維持することや、外国人従業員1名あたり200万バーツの登録資本金を有することが必要となるが、BOIの投資奨励を受けた場合、それらの規制は適用されない。

※3
タイでは2025年1月から同性婚を認める婚姻平等法が施行されており、男女問わず(すなわち、同性婚の場合の女性配偶者も)取得が認められる。

※4
労働者保護法13章(126条以下)に規定が存在するが、基金が未設立の状況が続いていた。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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