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ニュースレター

中国商務部による対日輸出規制のさらなる強化(2026年11号、12号公告)

著者等
若江悠
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T International Trade Legal Update 国際通商・経済安全保障ニュースレター No.40/NO&T Asia Legal Update ~アジア最新法律情報~ No.270(2026年2月)
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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1. はじめに

 2026年1月6日に中国商務部が公布した2026年1号公告では、日本軍事ユーザー又は軍事用途及び日本の軍事力向上に寄与するエンドユーザーやエンドユースに関して、すべての両用品目の輸出を禁止しました(2026年1月ニュースレター「[速報]中国による日本向け両用品目の輸出管理強化措置 ― 日本企業に対する影響と留意点 ―」参照。)が、春節明け最初の営業日である2月24日、中国商務部は、さらなる日本への輸出規制強化策として、11号公告及び12号公告を公布し、合計40の日本企業等のエンティティを管理制御リスト及び注視リストに追加する措置をとりました。これらの措置は、ある意味では、1号公告で示された「日本軍事ユーザー又は軍事用途及び日本の軍事力向上に寄与するエンドユーザーやエンドユース」に関する輸出禁止という抽象的な要件を、具体的な会社名等をもって例示することにより、より具体化、明確化したものと位置付けることもできますが、引き続き1号公告の規定は有効であり、リストに載っていない日本のエンティティであっても、同公告における上記要件に該当する限りは、輸出が禁止されます(この点は、中国商務部の2月24日記者会見においても明らかにされています。)。

 同記者会見においては、今回の措置は日本の「再軍事化」及び核保有の企図を阻止するためであることが述べられています。先月の1号公告に関する記者会見においてはいわゆる台湾有事に関する高市答弁が理由として述べられていたところです。最近の中国政府高官の発言を見ると、当該答弁への引き続きの批判とともに、日中間の外交文書における合意事項が強調され、そして日本の軍事力強化について「新型軍国主義」として懸念を表明する傾向が強まっていましたが、今回、その方向性が公告の根拠としても明確にされたものといえます。前回ニュースレターでも述べた点と重なりますが、中国政府の立場・認識としては、日本は中国との国交回復にあたり中国に台湾を返還したことを確認したにもかかわらず、高市答弁により、いわゆる台湾有事の場合には日本が武力介入してくる可能性があることが明言された以上、そして、当該事態をも念頭に軍事力の強化(防衛予算の増額、官民学での防衛産業の強化、武器輸出の緩和、敵基地攻撃能力含む安保三文書の改訂、非核三原則の見直しの可能性など)が進められている以上、中国の安全を守るためには、日本の軍事力向上に寄与するような両用品目の輸出は禁止する必要がある(1号公告及び11号公告の根拠)し、そのおそれがある輸出についても慎重に審査する必要がある(12号公告の根拠)という考え方ではないかと推測されます。

 同時に、同記者会見では、今回の措置は、少数の日本のエンティティのみ、かつ両用品目のみを対象とするものであり、日中間の正常な貿易には影響がなく、誠意をもって法令を遵守する日本のエンティティは何ら心配する必要がないことも述べられています。

 以下では、速報として、各公告についてその概要と関連法令上の位置付けをまとめた上、実務上の影響と対応策についても若干記載します。

2. 2026年11号公告:管理制御リスト(管控名单)への追加

 本公告により、日本の防衛装備品や関連技術の研究開発や製造に従事する企業等から成る20のエンティティが管理制御リストに追加され、これらのエンティティに対する中国からの両用品目の輸出が原則禁止されることになりました。加えて、中国外の組織又は個人が中国原産の両用品目をこれらエンティティに移転又は提供することも禁止されます。これはいわゆる再輸出規制と呼ばれ両用品目輸出管理条例49条に根拠がありますが、当該移転又は提供は国境を跨ぐ必要はなく、日本国内での移転又は提供も対象になると解されます。いずれについても、現在進行中の輸出等であっても直ちに停止すべき、とされています。

 管理制御リストについては輸出管理法18条、両用品目輸出管理条例28条から30条までにおいて規定されており、このうち「国家安全及び利益を害する可能性がある」の事由にあたるものとしてリストに掲載されたものと思われます。公告においては、これらのエンティティについて「日本の軍事力向上に参与しているエンティティ」と位置付けが明記されていたことが注目されます(1号公告における基準のうち後半の「軍事力向上に寄与」とは異なる文言を用いているので、より包括的な概念として「軍事力向上に参与」といっているに過ぎず、これらのエンティティが「日本軍事ユーザー」であるという余地も残しているようにも見えます)。

 管理制御リストは、米国の輸出管理規制(EAR)におけるエンティティリスト(Entity List)にならって作られた制度と言われています。米国EARでは、presumption of denial(原則不許可)となっていますが、中国でも特段の必要性があるときに申請の上、許可を得れば輸出が許可されるとされているので、実質的にはほぼ同じといえます。

 管理制御リストへの追加という措置は、(前回のニュースレターで述べた、2026年1号公告に類似した内容の2024年46号公告が出された後の)2025年1月以降、主に米国企業(及び台湾企業)を対象として相次いで行われてきましたが、その一部は、米中交渉に基づく合意により一時効力停止となっています。それらの措置においても、同様に、米国や台湾の軍需装備品や軍事技術・サービスに関連するエンティティが追加されていましたが、公告自体において再輸出規制が明記され、また(上記の通り抽象的とはいえ)掲載理由が明記されたのは今回が初めてです。米国企業の管理制御リストへの掲載は、米中対立の過程において米国による輸出規制の強化(中国テック企業等の米国エンティティリストへの追加を含む)や相互関税の導入等を受けての対抗策として実施される傾向にありましたが、そのような場合を含め、台湾への武器売却や技術供与を行った米国企業が掲載される例も多かったように思われます(掲載後の記者会見において、これら企業は台湾への武器売却等より「中国の主権と領土の保全を著しく損なった」ものと説明された例もありました。そういった企業の中には、信頼できないエンティティリストにも掲載されたものもあります。)。両用品目輸出管理条例30条では管理制御リストから除外されるための要件と手続が規定されていますが、掲載にあたって根拠となった事由が消滅している必要があり、現実的には難しいように思われます。上記一時効力停止の措置を除いて、一度リストに掲載されたエンティティが上記規定に従って除外された例はこれまで公表されていません。

3. 2026年12号公告:注視リスト(关注名单)への追加

 12号公告は、20の日本エンティティについて、両用品目のエンドユーザー及びエンドユースが確認できないとして、「注視リスト」に追加する内容となっています。これらのエンティティへの輸出は禁止されないものの、輸出にあたっては以下の通り、より厳しい審査、手続に服することとなります。

  • 個別許可の必須化: 包括許可や輸出証明書方式の輸出を行うことができず、一件ごとの個別許可申請が必要となります。
  • 個別許可申請の際の追加的提出書類: 輸出許可申請にあたっては、当該エンティティに関するリスク評価報告書を提出するとともに、両用品目を「日本の軍事力向上に寄与する用途に使用しない」旨の誓約書を提出する必要があります。
  • 審査期間の上限なし:商務部による輸出許可の審査は、商務部が審査を開始してから原則45営業日とされていますが、これらのエンティティへの輸出については、当該上限が適用されないこととなります。
  • より厳しい審査:これらのエンティティへの輸出についてはエンドユーザー及びエンドユースについてより厳しい審査が行われ、「日本軍事ユーザー又は軍事用途及び日本の軍事力向上に寄与するエンドユーザーやエンドユース」に該当する場合は、輸出は許可されないことになります。

 「注視リスト」は、両用品目輸出管理条例で初めて導入された制度(同条例26条)ですが、これまでは、少なくとも公表された例はありませんでした。同条において、商務部による両用品目のエンドユーザー及びエンドユースの検証に関し、輸入者又はエンドユーザーが定められた期限内までに検証に協力せず、関連する証明資料等を提供しないことにより、両用品目のエンドユーザー及びエンドユースの確認ができないこととなったときは、当該輸入者又はエンドユーザーを注視リストに追加することができる、とされています。一旦リストに追加されたエンティティであっても、同条に基づき、申請の上、商務部による検証の結果、無断でエンドユースを変更したり第三者に譲渡したりといった事由がないことが確認された場合は、リストから除外される可能性があります。この点は公告本文においても記載されており、そのような方向での対応が期待されているようにも読めます。他方で、 エンドユーザー又はエンドユースの管理要求に違反している(例えば許可なく両用品目の用途を変更する、輸出許可申請や誓約書の記載とは異なる他のエンドユーザーに移転するなどの行為が認められた場合)、国家安全及び利益を害する可能性があるなどの管理制御リスト掲載の事由があると認められた場合は、管理制御リストに移されてしまう可能性もあります。

 注視リストは、米国EARにおける未検証リスト(UVL, Unverified List)にならって作られた制度と言われています。米国EARと違い、管理制御リストへの移行に関連して特に期限は設けられていません。

 今回注視リストに追加されたエンティティについては、防衛装備品の専業メーカー等ではなく、民生品も広く扱うものの、防衛装備品のサプライチェーンにおける(素材、部品部材、電装品、化学品など各種分野での)川上に位置するメーカーや、防衛装備品も扱う商社が含められているものと思われます。これらのエンティティに関しては、軍事転用のリスクに鑑み、より慎重な審査に服するものとし、軍事転用がされないことが十分に確認されて初めて輸出できるものとしたものと理解されます。

4. 日本企業への実務的影響と対応策

(1)実務的影響

 繰り返しになりますが、1号公告は引き続き有効であり、今回リストに掲載されていない日本企業についても、個別の輸出許可の申請において「日本軍事ユーザー、日本軍事用途及び日本の軍事力向上に寄与するエンドユーザーやエンドユース」という基準に該当すると認められたときは輸出が許可されず、またその確認のためのエンドユーザー及びエンドユースの審査には引き続き時間を要するものと思われます。とはいっても、注視リスト掲載企業への輸出については、明確な法的根拠が与えられてしまったこともあり、審査がこれまで以上に長期化する可能性があります。

 いずれのリストについても、基本的にはリストに掲載されたエンティティ自体が規制対象であり、その子会社や関連会社は対象とならないと考えられます。(この点、米国で2025年9月に導入された関連事業体ルールに類似した規定が、中国でもレアアースの域外再輸出ルールを定めた2025年61号公告においては規定されていましたが、いずれも米中合意に基づき効力が停止されています。)なお、当然のことですが、輸出許可において申告されたものと異なるエンドユーザーやエンドユースに転用する場合は別途の許可が必要とされていますので、いわゆる迂回輸出は現行ルール下でも認められない点に注意が必要です。

 各リストについては、上述した米国の例に見る通り、今後の日中関係に改善が見られなければ、さらに追加されていく可能性は否定できません。今回のリストは、一部エンティティについては企業グループ内の一部の子会社にしぼって掲載するにとどまり本体は掲載していない点、多数の有力な素材メーカーが掲載されていない点などからも、そのような余地を残している狙いがあるようにも見えます。

(2)主な対応策

 リストに掲載されていない各企業においてとりうる手段としては、まず、下流の顧客(最終顧客を含む)の再点検を行い、自社の扱う中国原産の原材料・部品のうち両用品目やこれを使った製品が、今回リストに追加されたエンティティに提供されるものでないか確認する必要があります。管理制御リストに掲載されたエンティティがある場合は、供給を継続することによる中国輸出管理法令の違反や、契約上の義務の違反などのリスクを個別に検討の上、対応策を策定する必要があります。注視リストに掲載されたエンティティとの関係では、直ちに供給が不可能となるわけではないですが、中国からの両用品目輸出について審査が長期化し、提出書面に関する厳格な要件が課されることを前提に、取引スケジュールや契約内容を再設定する必要があるかもしれません。

 次に、注視リスト掲載企業としては、自社の下流の商流を確認の上、もし可能な場合は、リストからの除外を申し立てることが検討に値しますが、実際どのような手続が求められるか(中国当局による現地調査が実施されることになるか等)は、前例がないため不透明であり、情報管理の観点からも専門家を起用して慎重な対応を行うべきです。また、管理制御リスト掲載企業は、中国からの両用品目の輸出や中国原産両用品目の再輸出が不可能となったことにより、自社のサプライチェーンに及ぼす影響の範囲を確定の上、代替供給先の確保などが検討されることになると思われます。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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