①オンライン診療に関する届出に係る規制の整備
本医療部会及びパブリックコメント案においては、オンライン診療実施病院等の開設時・変更時に必要な届出事項として、「オンライン診療を実施している旨」を追加することとされました(医療法施行規則第3条、第4条関係)。その際、令和8年4月1日時点で現にオンライン診療を実施している医療機関につきましては、令和9年3月31日までに届出をすれば足りるよう、経過措置を設けることとされました。
Publication
ニュースレター
セミナー
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。
2025年12月5日、第217回通常国会において、医療法等の一部を改正する法律案(第217回国会閣法第21号。以下「本改正」といい、改正後の医療法を「改正医療法」といいます。)が参議院本会議において可決され、同月12日公布されました。本改正は、「高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え、地域において良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築するため、地域における医療機関の機能分化・連携強化に着目した地域医療構想の推進、医師の偏在是正に向けた取組の推進、オンライン診療の推進及び美容医療に係る規制の整備、医療情報の基盤の構築及び利活用の推進等を行う」ことを主たる内容とするものであり、改正の内容も多岐にわたりますが、実務上影響を与え得る事項として、(1)オンライン診療に係る医療法上の規定の整備、(2)美容医療を行う医療機関に係る定期報告義務の実施等の規制強化、(3)地域医療構想の見直しその他医師偏在是正に向けた各種施策の整備、(4)医療DXの推進等が上げられます。
紙面の都合上、直近の施行日が2026年4月1日となる(1)オンライン診療に係る医療法上の規定の整備を中心に、前編と後編に分け、その概要をお伝えいたします。
本稿(前編)においては、本改正の経緯及び改正の概要のうち、オンライン診療を行う医療機関に係る改正医療法の規制の概要についてお伝えし、次稿(後編)においては、オンライン診療受診施設(以下に定義します。)に係る改正医療法の規制の概要や違反時の効果等についてお伝えいたします。
これまで、オンライン診療につきましては医事法制上明示的な規制枠組みは示されておらず、無診察治療等を禁じる医師法第20条等の解釈運用(平成30年3月付厚生労働省医政局長通知「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(その後の改訂を含む。以下「オンライン診療指針」といいます。))により機動的・柔軟にその実施が図られてきました。しかしながら、オンライン診療指針の位置づけが医事法制上明確ではなく、違反する医療機関について行政による規制が機能しにくい等、従前よりその運用には限界が呈されていました。
そこで、本改正においては、「オンライン診療」を医療法に定義し明確に位置づけた上で※1、オンライン診療に係る必要な届出等の手続や、実施に関する基準を定め、これらの違反時の効果を明確化しました。
本稿の執筆時現在、関連する政省令案についてはパブリックコメントが終了した直後であり詳細については公布を待つ状況ではございますが(以下、当該パブリックコメントにおける政省令案を「パブリックコメント案」といいます。)、2026年1月26日に行われた第124回社会保障審議会医療部会(以下「本医療部会」という。)においては、オンライン診療に係る改正医療法の施行のあり方に関して政省令において定めるべき事項の議論も示されています。これらの概要も踏まえた、改正の概要は以下のとおりです。
本改正では、オンライン診療を行う医療機関(以下「オンライン診療実施病院等」といいます。)と、実際に患者がオンラインでの診療を受ける際の施設(以下「オンライン診療受診施設」といいます。)※2のそれぞれについて、以下のとおり、必要な届出等の手続や、実施に関する基準の枠組みを設けることとなりました※3。
[オンライン診療実施病院等に係る事項]
[オンライン診療受診施設に係る事項]
これらのうち、オンライン診療実施病院等に係る事項の概要は以下のとおりです。
本医療部会及びパブリックコメント案においては、オンライン診療実施病院等の開設時・変更時に必要な届出事項として、「オンライン診療を実施している旨」を追加することとされました(医療法施行規則第3条、第4条関係)。その際、令和8年4月1日時点で現にオンライン診療を実施している医療機関につきましては、令和9年3月31日までに届出をすれば足りるよう、経過措置を設けることとされました。
オンライン診療の実施についてはこれまでオンライン診療指針に委ねられていましたが、本改正では、オンライン診療指針の主要な要素※4が省令に引き上げられることとなりました(改正医療法第14条の3。以下「オンライン診療基準」といいます。)。オンライン診療は、オンライン診療基準に従って行うことが求められることが改正医療法上明記されることとなり(改正医療法第14条の3第3項)、この違反については、当局による措置命令等の医療法の処分等(改正医療法第24条の2以下)の対象となることが明確化されました。
また、下記のとおりオンライン診療実施病院等の管理者は、勤務する医師等についてオンライン診療基準に適合させるために必要な措置を講じなければならないこととされました(改正医療法第14条の4)。
オンライン診療基準において規定される事項の概要としては以下のものが挙げられています(改正医療法第14条の3第1項、第2項)。
また、パブリックコメント案によれば、遵守すべき事項として、以下の点が示されています。
オンライン診療基準の枠組みは、従前のオンライン診療指針の枠組みから大きく異なるものではございませんが、当局による措置命令等の医療法の処分等(改正医療法第24条の2以下)の対象となることから、今後の実務運営においては規制枠組みを引き続き注視することが望まれます。また、本改正の施行に合わせ、オンライン診療指針及びチェックリスト(「オンライン診療の利用手順を示した手引書等について」(令和6年3月29日付け医政局総務課事務連絡)の3等)につきましても見直しが行われることとされており※5、併せて留意が必要となります。
本改正では、オンライン診療実施病院等の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、勤務する医師等についてオンライン診療基準に適合させるために必要な措置を講じなければならないこととされました(医療法第14条の4)。
本医療部会及びパブリックコメント案によれば、求められる措置の概要は以下のものとされています。オンライン診療実施病院等においては、これらの適合性確認のための措置を講じるための体制の整備も今後求められることとなります。
また、本医療部会及びパブリックコメント案においては、オンライン診療実施病院等の管理者は、オンライン診療受診施設の設置者に対して、オンライン診療基準への適合性を確認することとされています。
従前より、医療法は、医業については患者・医師間の情報の非対称性が大きく、利用者保護の観点から、限定的な事項・場合以外の広告を禁止してきました※6。
改正医療法では、このような法令上広告が可能となる事項として、オンライン診療について「オンライン診療を行う旨及び当該オンライン診療の内容に関する事項」が含まれることが明確化されたほか、オンライン診療基準を遵守するために必要な事項についても、告示により広告が可能となる事項に含まれることとなりました。
また、現行の広告可能事項(同条第3項各号)の中には、医師又は医療機関が自ら広告する場合を念頭に規定されたものもあることから、オンライン診療受診施設が、オンライン診療を行う医療機関について広告できることも、告示により明確化されることとなりました。
本稿(前編)においては、オンライン診療実施病院等に適用のある本改正の概要についてお伝えいたしました。本改正は、従前医事法制上明確ではなかったオンライン診療に係る各種規制を医療法において規律し、当局による具体的な行政調査権限や行政処分権限に紐付けるものであり、オンライン診療の実施にあたっては注視すべき事項が多分に含まれたものとなります。今後の当局の動向も踏まえ、改正医療法に従った措置を講ずる必要があります。
また、本改正は、オンライン診療に係る規制のほか、美容医療を行う医療機関に係る定期報告義務の整備、医療機関機能(高齢者救急・地域急性期機能、在宅医療等連携機能、急性期拠点機能等)報告制度の整備、外来医師過多区域における無床診療所開設に対する都道府県知事による規制権限の強化(開設事前届出、要請勧告、公表、保険医療機関指定期間の短縮等)、保健医療機関における管理者要件の厳格化(保険医として一定年数の従事経験を持つ者であること等)などの、実務上重要な影響を与える事項等につきましても順次施行されることとされていますので、引き続き関係政省令等の検討状況に留意する必要があります。
次稿(後編)においては、オンライン診療受診施設に係る改正医療法の規制の概要や違反時の効果等についてお伝えいたします。
※1
改正医療法では、「オンライン診療」は、「医師又は歯科医師の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。)と患者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用し、映像及び音声の送受信により、医師又は歯科医師及び遠隔の地にある患者が相手の状態を相互に認識しながら通話することが可能な方法による診療」と定義されることとなりました(改正医療法第2条の2第1項)。
※2
改正医療法では、「オンライン診療受診施設」は、「設置者が、業として、オンライン診療を行う医師又は歯科医師の勤務する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に対して、その行うオンライン診療を患者が受ける場所として提供する施設」と定義されることとなりました(改正医療法第2条の2第2項)。オンライン診療受診施設も「医療提供施設」(医療法第1条の2第2項)の一つと考えられています。
※3
なお、本改正に対応する形で、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則)も改正されることが予定されており、保険薬局による一体的構造・一体的経営の禁止や、患者誘導対価の支払禁止の対象に、保険医療機関のみならずオンライン診療受診施設も追加されることとされています(薬担規則第2条の3。但し、へき地の保険薬局は対象外とされています。)。
※4
本医療部会及びパブリックコメント案において、従前のオンライン診療指針において「最低限遵守する事項」とされていた事項を省令に引き上げることが想定されています。
※5
紙面の都合上詳細は割愛させていただきますが、パブコメ案においては、改正医療法において用いられている用語との整合性を確保するための改正のほか、オンライン診療後、医師が必要と判断した場合に、適切に対面診療につなげられる体制として想定される地域の医療機関との間の連携体制の構築や、対面受診可能な医療機関に確実につなげるための方法等に関する具体例の明示等が図られています。
※6
医療法第6条第3項。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
ニュースレター
日置巴美、滝沢由佳(共著)
ニュースレター
殿村桂司、関口朋宏(共著)
ニュースレター
森大樹、日置巴美(共著)
論文/記事
(2026年4月)
平山貴仁
論文/記事
(2026年4月)
平山貴仁
論文/記事
(2026年3月)
小山嘉信、粂内将人、鳥巣正憲(共著)
ニュースレター
鳥巣正憲、長谷川紘(共著)
ニュースレター
鳥巣正憲、長谷川紘(共著)
ニュースレター
日置巴美、滝沢由佳(共著)
ニュースレター
殿村桂司、関口朋宏(共著)
ニュースレター
森大樹、日置巴美(共著)
論文/記事
(2026年4月)
平山貴仁
ニュースレター
日置巴美、滝沢由佳(共著)
論文/記事
(2026年4月)
殿村桂司、小松諒(共著)
ニュースレター
殿村桂司、関口朋宏(共著)
論文/記事
(2026年4月)
工藤靖
論文/記事
(2026年4月)
平山貴仁
論文/記事
(2026年3月)
小山嘉信、粂内将人、鳥巣正憲(共著)
ニュースレター
鳥巣正憲、長谷川紘(共著)
ニュースレター
鳥巣正憲、長谷川紘(共著)
ニュースレター
日置巴美、滝沢由佳(共著)
ニュースレター
殿村桂司、関口朋宏(共著)
ニュースレター
森大樹、日置巴美(共著)
ニュースレター
鳥巣正憲、長谷川紘(共著)