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医療法の改正と実務上の影響 ~オンライン診療に係る医療法上の規定の整備(後編)~

著者等
鳥巣正憲長谷川紘(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Health Care Law Update ~薬事・ヘルスケアニュースレター(法律救急箱)~ No.41(2026年3月)
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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 2025年12月5日、第217回通常国会において、医療法等の一部を改正する法律案(第217回国会閣法第21号。以下「本改正」といい、改正後の医療法を「改正医療法」といいます。)が参議院本会議において可決され、同月12日公布されました。本改正は、「高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え、地域において良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築するため、地域における医療機関の機能分化・連携強化に着目した地域医療構想の推進、医師の偏在是正に向けた取組の推進、オンライン診療の推進及び美容医療に係る規制の整備、医療情報の基盤の構築及び利活用の推進等を行う」ことを主たる内容とするものであり、改正の内容も多岐にわたりますが、実務上影響を与え得る事項として、(1)オンライン診療に係る医療法上の規定の整備、(2)美容医療を行う医療機関に係る定期報告義務の実施等の規制強化、(3)地域医療構想の見直しその他医師偏在是正に向けた各種施策の整備、(4)医療DXの推進等が上げられます。

 紙面の都合上、直近の施行日が2026年4月1日となる(1)オンライン診療に係る医療法上の規定の整備を中心に、その概要をお伝えいたします。

 このうち、本稿(後編)においては、オンライン診療受診施設(以下に定義します。)に係る改正医療法の規制の概要や違反時の効果等についてお伝えいたします。本改正の経緯につきましては、「医療法の改正と実務上の影響~オンライン診療に係る医療法上の規定の整備(前編)~」(以下「前稿(前編)」と言います。)をご参照ください。

改正の概要~オンライン診療受診施設に係る事項~

 前稿(前編)のとおり、本改正では、オンライン診療を行う医療機関(以下「オンライン診療実施病院等」といいます。)と、実際に患者がオンラインでの診療を受ける際の施設(以下「オンライン診療受診施設」といいます。)※1のそれぞれについて、必要な届出等の手続や、実施に関する基準の枠組みを設けることとなりました。本稿の執筆時現在、関連する政省令案についてはパブリックコメントが終了した直後であり詳細については公布を待つ状況ではございますが(以下、当該パブリックコメントにおける政省令案を「パブリックコメント案」といいます。)、2026年1月26日に行われた第124回社会保障審議会医療部会(以下「本医療部会」といいます。)においては、オンライン診療に係る改正医療法の施行のあり方に関して政省令において定めるべき事項の議論も示されています。これらの概要も踏まえた、改正の概要は以下のとおりとなります※2

[オンライン診療実施病院等に係る事項]

  1. オンライン診療に関する届出に係る規制の整備
  2. オンライン診療実施基準の整備
  3. オンライン診療に係る管理者責任の整備
  4. オンライン診療に係る広告規制の枠組みの明確化

[オンライン診療受診施設に係る事項]

  1. オンライン診療受診施設の設置届出等の届出に係る規制の整備
  2. オンライン診療受診施設に係る所定事項の公表義務の整備
  3. オンライン診療受診施設に係る広告規制の枠組みの明確化

 これらのうち、オンライン診療受診施設に係る事項の概要は以下のとおりです。

①オンライン診療受診施設の設置届出等の届出に係る規制の整備

 本改正では、オンライン診療受診施設の設置者は、設置後10日以内に、オンライン診療受診施設の所在地の都道府県知事(その所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては、当該保健所を設置する市の市長又は特別区の区長)に届け出なければならないこととされました(改正医療法第8条第2項)。

 また、病院等と同様に、休廃止の際には、休止届出及び廃止等の届出を行うこととされました(改正医療法第8条の2、第9条)。

 設置届出の記載事項としては、本医療部会及びパブリックコメント案においては、以下の事項とされています。

  • 設置者の住所・氏名(or 法人名・主たる事務所所在地)
  • 名称、設置場所
  • 敷地の面積・平面図、建物の構造概要・平面図
  • 定款、寄附行為等(法人の場合)
  • 設置年月日等

 本医療部会及びパブリックコメント案においては、法人であってもオンライン診療受診施設の設置者となることは可能とされ、また、医療従事者であること等の要件は設けられないこととされています。また、オンライン診療受診施設について所定の人員基準や、管理者の設置義務は設けられていません。

 もっとも、本医療部会及びパブリックコメント案においては、設置者が個人の場合は当該設置者が、又は設置者が法人の場合は法人が定めた者が、オンライン診療受診施設の管理・運営を行うことが想定されており、常駐・専任であることを要しないものの、遠隔で施設を管理等する場合を含め、通信機器の不具合や患者急変時等に、患者・オンライン診療を行う医師/医療機関・都道府県が連絡する連絡先を提示し、速やかに対応できる体制が求められています。また、患者の選択に資するため、オンライン診療受診施設の設置者は、当該施設においてオンライン診療を提供する連携医療機関の名称等を公表することが望ましいこととされています。

②オンライン診療受診施設に係る所定事項の公表義務の整備

 本改正では、オンライン診療受診施設の設置者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該オンライン診療受診施設がオンライン診療基準※3に適合する旨その他のオンライン診療実施病院等の管理者のオンライン診療受診施設の選択に資するものとして厚生労働省令で定める事項を公表しなければならないこととされました(改正医療法第14条の5)。公表方法は、ウェブサイトへの掲載その他の方法とされています。

 本医療部会及びパブリックコメント案においては、公表事項として以下の事項が設けられています。本改正の施行にあたっては、このような公表義務を負う点につきましても留意が必要となります。

  • 当該オンライン診療受診施設が、オンライン診療基準のうち、患者がオンライン診療を受ける場所に関する事項に適合すること
  • 当該オンライン診療受診施設で用いられるシステムに、十分な情報セキュリティ対策に関する措置が講じられていること

③オンライン診療受診施設に係る広告規制の枠組みの明確化

 上記のとおり、これまで医療法は、医業については患者・医師間の情報の非対称性が大きく、利用者保護の観点から、医療広告について限定的な事項・場合以外の広告を禁止してきました。一方で、オンライン診療受診施設は、自ら主体的に医業そのものを提供するのではないため、現行の医療法においては医療広告規制の適用対象ではないと解されます※4。そのため、医療法においてオンライン診療受診施設が規律されるにあたり、医事法制下における広告規制枠組みを整備することが求められてきました。

 そこで、本改正では、オンライン診療受診施設についても、医療法上の医療広告規制と同様の枠組みに置かれることが明示されることとされ、「医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合として厚生労働省令で定める場合を除いては、広告をしてはならない」こととされ(医療法第6条の7の2)、従前病院等の開設者において適用のあった広告に関する報告徴収及び立入検査、措置命令等に係る医療法上の規定について、オンライン診療受診施設にも適用があることが明確化されました(改正医療法第6条の8)。

 どのような場合に広告が可能かについて、本医療部会及びパブリックコメント案においては、以下の枠組みが示されています。

  • オンライン診療受診施設が医療を提供するものではない旨を、医療を受ける者が理解できる方法により明示すること
  • 医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない事項の広告であること

 また、具体的にどのような事項の広告が可能かについて、本医療部会及びパブリックコメント案は以下の例を示しています。

  • オンライン診療受診施設の名称、電話番号、所在場所、設置者名
  • オンライン診療受診施設の施設、設備、従業者に関する事項
  • オンライン診療受診施設の管理・運営に関する事項

 これまで医事法制上必ずしも明確ではなかったオンライン診療受診施設に係る広告規制枠組みが医療法上明記され、上記のとおり当局による処分権限の根拠として明確に位置づけられたことから、今後は省令を含め広告のあり方の動向について注視する必要があります。

改正の概要~違反時の効果~

 上述のとおり、本改正では、オンライン診療に係る必要な届出等の手続や、実施に関する基準が定められることとなり、これらの違反時の当局による対応についても、一定の枠組が示されることとなりました。

 具体的には、従前病院等の開設者又は管理者に対して適用のあった報告徴収及び立入検査、措置命令及び業務停止命令並びに開設許可の取消・閉鎖命令に係る規定が、オンライン診療受診施設にも適用があることが明記されました(改正医療法第24条の2、第25条第1項、第2項及び第29条第1項)。本医療部会においては、法令違反又は「運営が著しく適正を欠く(疑いがある)と認める」場合(例:不衛生・危険な環境が放置されている場合)は、当該施設が所在する都道府県等が、当該施設に対して立入検査・是正命令等を講じることが考えられるとされています。

 また、オンライン診療実施病院等においても、改正医療法に基づく上述の規制の違反については、従前同様に報告徴収及び立入検査、措置命令及び業務停止命令並びに開設許可の取消・閉鎖命令に係る規定の適用を受けることとなります。

 行政による対応枠組みとしては、本医療部会及びパブリックコメント案においては、自由診療も含め、原則、オンライン診療実施病院等又はオンライン診療受診施設への指導・立入検査等は、所在の都道府県等が実施することとされました。その上で、オンライン診療は、遠隔で行われるため、オンライン診療実施病院等とオンライン診療受診施設が所在する都道府県等が異なる場合には、都道府県等間で連携する必要が生じ得るため、必要な連携について周知徹底を図ることとされました。

おわりに

 前稿(前編)のとおり、本改正は、従前医事法制上明確ではなかったオンライン診療に係る各種規制を医療法において規律し、当局による具体的な行政調査権限や行政処分権限に紐付けるものであり、オンライン診療の実施にあたっては注視すべき事項が多分に含まれたものとなります。今後の当局の動向も踏まえ、改正医療法に従った措置を講ずる必要があります。

 また、本改正は、オンライン診療に係る規制のほか、美容医療を行う医療機関に係る定期報告義務の整備、医療機関機能(高齢者救急・地域急性期機能、在宅医療等連携機能、急性期拠点機能等)報告制度の整備、外来医師過多区域における無床診療所開設に対する都道府県知事による規制権限の強化(開設事前届出、要請勧告、公表、保険医療機関指定期間の短縮等)、保健医療機関における管理者要件の厳格化(保険医として一定年数の従事経験を持つ者であること等)などの、実務上重要な影響を与える事項等につきましても順次施行されることとされていますので、引き続き関係政省令等の検討状況に留意する必要があります。

脚注一覧

※1
改正医療法では、「オンライン診療受診施設」は、「設置者が、業として、オンライン診療を行う医師又は歯科医師の勤務する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に対して、その行うオンライン診療を患者が受ける場所として提供する施設」と定義されることとなりました(改正医療法第2条の2第2項)。オンライン診療受診施設も「医療提供施設」(医療法第1条の2第2項)の一つと考えられています。

※2
なお、本改正に対応する形で、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則)も改正されることが予定されており、保険薬局による一体的構造・一体的経営の禁止や、患者誘導対価の支払禁止の対象に、保険医療機関のみならずオンライン診療受診施設も追加されることとされています(薬担規則第2条の3。但し、へき地の保険薬局は対象外とされています。)。

※3
改正医療法第14条の3に基づき、オンライン診療を行うにあたり準拠すべき基準として厚生労働省令において定められる基準をいいます。詳細につきましては前稿(前編)をご参照ください。

※4
オンライン診療受診施設は、患者がオンライン診療を受ける「場所」であり、オンライン診療受診施設の設置者はそのような「場所」を提供するサービスを行っていることになりますが、一般に、サービスに関する不当な表示は、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)により禁止されることとなるため、従前においては医療法上の医療広告規制の適用対象ではないと解されていました。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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