Publication

ニュースレター

インドのPress Note 3の改正の決定

著者等
山本匡シェジャル・ヴェルマ一色健太(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Asia Legal Update ~アジア最新法律情報~ No.272(2026年3月)
業務分野

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1. Press Note 3

 インドへの外国直接投資は、インドの外国為替管理法であるForeign Exchange Management Act, 1999(通称「FEMA」)に基づき制定されたForeign Exchange Management (Non-Debt Instruments) Rules, 2019(以下、「FEM NDI規則」という。)により規制されている。FEM NDI規則上、インド非居住者がインドに外国直接投資を行う場合、インド政府の事前承認を必要としない場合(Automatic Route、以下、「自動承認ルート」という。)と、事前承認を要する場合(Approval Route又はGovernment Route、以下、「政府承認ルート」という。)がある。

 政府承認ルートが適用される外国直接投資の一つとして、Press Note 3(以下、「PN 3」という。)に基づく規制が適用されるものがある※1。これは、インドと陸上国境を接する国、すなわちアフガニスタン、中国(香港及びマカオを含む。)、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン及びミャンマー(以下、「インド隣接国」という。)の企業がインドの会社に直接又は間接に投資しようとする場合、又はインド隣接国に所在し、若しくはインド隣接国の国民が、インドへの投資の実質的所有者である場合、投資対象のインドの会社が行う事業の種類を問わず、必ずインド政府の事前承認を取得しなければならないというものである。簡略化すると、インド隣接国の企業やインド隣接国の国民、居住者(以下、総称して「インド隣接国企業等」という。)が、直接又は間接にインドの会社に投資しようとする場合、インド政府の事前承認が必要となるということであり、典型的には、中国からインドの会社への直接又は間接の投資がこれに該当する。インド政府の事前承認は、インド隣接国企業等が新たにインドに会社を設立する場合だけではなく、既存のインドの会社の資本証券(株式等)を譲り受けたり、新たに発行される資本証券を引き受けたりする場合にも必要となる。

 PN 3は、新型コロナウイルスのパンデミックに乗じたインド企業の買収を抑制するため、2020年にインド政府が導入したものであり、その後6年間改正されてこなかった。しかしながら、2026年3月10日にインド政府は、インド隣接国の投資家が非戦略的、非支配的な持分のみを保有するケースにもPN 3に基づく規制が適用されることで、PEファンド、VCファンドといったグローバルファンド等の投資家からの投資に悪影響を及ぼすとみられていたことを背景に、外国直接投資の拡大及びビジネス環境改善の推進等を目的として、インド隣接国からの投資に関するガイドラインの改正を承認した旨を公表した※2

2. 改正内容

 本ニュースレター執筆日(2026年3月12日)現在、2026年3月10日付のインド政府の公表内容は必ずしも明確でないところがあるため、詳細はFEM NDI規則の改正を待つ必要があるが、概要は、以下のようなものと思われる。

(1) 実質的所有権の定義及び判定基準

 実質的所有権の定義及び判断基準は、Prevention of Money Laundering Rules, 2005において用いられているものによることとし、実質的所有権は、投資家であるエンティティーのレベルで判断する。インド隣接国企業等が支配権を有さず、その実質的所有権が10%以下である投資家によるインドの会社に対する外国直接投資は、適用される産業別の投資上限、参入ルートその他の付随する条件に従い、自動承認ルートによる投資が可能である※3。ただし、かかる投資について、投資先のインド企業がインド政府商工省産業・国内取引促進局(DPIIT)に対し、関連情報・詳細の報告を行う必要がある。

(2) 特定の産業への投資の迅速な審査

 資本財、電子資本財、電子部品、ポリシリコン及びインゴット・ウェーハの製造産業へのインド隣接国からの投資の申請に関する承認は60日以内に処理し、決定する※4。この場合、投資先企業の議決権の過半数及び支配権は、常に、インドに居住するインド国民又はインドに居住するインド国民が所有かつ支配するインドの企業が保有しなければならない。

3. 最後に

 インド非居住者がインドに外国直接投資を行う場合に、PN 3に基づき政府承認ルートが適用されるか、自動承認ルートが適用されるかは常に留意すべき点であり、それは、日本企業がインドに外国直接投資を行う場合も同様である。なぜなら、これまでPN 3に基づく政府承認ルートの適用の有無は、インドの会社への直接の投資家ではなく、その実質的所有権者、つまりインドの会社に投資しようとする日本企業の最終的な実質株主に遡って判断されてきたからである。

 今回の改正の決定はPN 3自体を廃止するものではないが、PN 3の適用基準及び実質的所有権者をどのエンティティーのレベルで判断するかが明確化されたという点で好ましい決定である。また、政府承認ルートが適用される場合でも、いくつかの産業について迅速なタイムラインが提示されたことも、当該産業への外国直接投資を促進する上で好ましい決定である。

 一方で、今回の改正の決定によると、自動承認ルートに該当する場合でも投資先のインド企業は、DPIITに関連情報・詳細を報告する必要があるとのことである。現在、インド非居住者による外国直接投資についてはインド準備銀行(Reserve Bank of India)への事後報告が必要とされている。今回の改正の決定で、インド準備銀行への事後報告に加えてDPIITへの追加の情報提供が必要となるのであれば、その内容によっては投資先のインド企業のみならず投資家側でも情報収集等の負担が生じる可能性はある。

脚注一覧

※3
今回の改正前も、実務的には、インドの会社への直接の投資家(直接の株主になろうとする者)がインド隣接国企業等でない場合、直接の投資家に対するインド隣接国企業等の実質持分保有割合が10%未満であれば、インド政府の事前承認は不要であろうという取扱いがなされていた。

※4
内閣官房長官の下にある事務次官級委員会(CoS)は、これらの産業を変更することができるとされている。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


全文ダウンロード(PDF)

Legal Lounge
会員登録のご案内

ホットなトピックスやウェビナーのアーカイブはこちらよりご覧いただけます。
最新情報をリリースしましたらすぐにメールでお届けします。

会員登録はこちら

弁護士等

海外業務に関連する著書/論文

アジア・オセアニアに関連する著書/論文

インドに関連する著書/論文