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ニュースレター

女性活躍推進法改正のポイント

著者等
清水美彩惠中坪真緒(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Labor and Employment Law Update ~労働法ニュースレター~ No.27(2026年3月)
業務分野
キーワード

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1 はじめに

 2025年6月11日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号、以下「女性活躍推進法」といいます。)が改正され(以下、今般の改正を「本改正」といい、本改正後の女性活躍推進法を「改正女性活躍推進法」といいます。)、2026年4月1日(一部の規定は同年10月1日)から施行される予定となっています。本改正に伴い、2025年12月23日、関連省令※1や指針※2が改正され、2026年2月18日に関連通達等も公表されています。

 本改正においては、①男女の賃金格差や女性管理職比率等の女性の活躍に関する情報公表義務の強化、②女性の職業生活における活躍の推進は女性の健康上の特性に配慮して行われるべき旨の明確化等がなされました。本ニュースレターでは、本改正について概説しつつ、本改正に対応する上での実務上のポイントを解説します。

2 女性活躍推進法の概要

 女性活躍推進法は、女性の職業生活における活躍を推進する目的で制定された法律であり、企業に対して、女性の活躍を推進するために実施すべき事項を定めています。同法は、常時雇用する労働者が100人を超える企業に対して、①女性の職業生活における活躍を推進するための行動計画(一般事業主行動計画)の策定・届出(8条)及び②自社の女性の活躍に関する情報公表(20条)を義務付けています(常時雇用する労働者が100人以下の企業に対しては、いずれも努力義務とされています。)。

 ①一般事業主行動計画の策定・届出に関して、(i)自社の女性の活躍に関する状況を把握し、女性の活躍を推進するための課題を分析すること、(ii)(i)の結果を踏まえて、女性活躍の推進に関する数値目標や取組内容等を定めた行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ること、(iii)策定した行動計画を社内に周知するとともに、外部に公表することが義務付けられています。

 ②女性の活躍に関する情報公表に関しては、(i)女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績又は(ii)職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績のいずれかに区分された各項目から、企業の規模に応じて必要な項数を選択し、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」や自社のホームページにおいて定期的に公表することが義務付けられています。

3 女性の活躍に関する情報公表義務の強化

(1) 情報公表における必須項目の拡大(女性管理職比率の公表義務化)

 女性活躍推進法に基づく女性の活躍に関する情報公表に関して、本改正前は、常時雇用する労働者数が300人を超える企業について、①男女の賃金額の差異に関する情報に加えて、②(i)女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績及び(ii)職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績の各区分からそれぞれ1項目以上(合計2項目以上)を選択して公表することが義務付けられていました。また、常時雇用する労働者の数が101人から300人までの企業については、上記(i)又は(ii)のいずれかの項目を1項目以上選択して公表することが義務付けられていました。

 本改正により、常時雇用する労働者数が300人を超える企業について、①男女の賃金額の差異に関する情報に加えて、②女性管理職の比率に関する情報も必須項目として公表することが義務付けられ、さらに、上記(i)及び(ii)の各区分からそれぞれ1項目以上(合計2項目以上)を選択して公表すること、常時雇用する労働者の数が101人から300人までの企業については、上記(i)又は(ii)のいずれかの項目を1項目以上選択して公表することに加えて、新たに、①男女の賃金額の差異に関する情報及び②女性管理職の比率に関する情報を必須項目として公表することが義務付けられました(改正女性活躍推進法20条1項及び2項、改正後の一般事業主行動計画等に関する省令※3 19条1項及び20条1項)。

 以上の本改正の概要を整理すると、以下のとおりです。

企業等規模 本改正前の公表項目 本改正後の公表項目
従業員数301人以上
  1. 男女間賃金差異

表1及び表2の各区分からそれぞれ1項目以上(合計2項目以上

  1. 男女間賃金差異
  2. 女性管理職比率

表1及び表2の各区分からそれぞれ1項目以上(合計2項目以上

従業員数101~301人 表1又は表2のいずれかの区分から1項目以上
  1. 男女間賃金差異
  2. 女性管理職比率

表1又は表2のいずれかの区分から1項目以上

※公表必須項目を青枠で囲って示している。

※本改正により追加された公表必須項目を赤字で示している。

表1 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績
  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  • 男女別の採用における競争倍率
  • 労働者に占める女性労働者の割合
  • 係長級にある者に占める女性労働者の割合
  • 役員に占める女性の割合
  • 男女別の職種又は雇用形態の転換実績
  • 男女別の再雇用又は中途採用の実績
表2 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績
  • 男女の平均継続勤務年数の差異
  • 10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
  • 男女別の育児休業取得率
  • 労働者の一月当たりの平均残業時間
  • 雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間
  • 有給休暇取得率
  • 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

(出所)厚生労働省「女性活躍推進法が改正されました!」(2026年2月18日改定版)を参考に作成

 本改正に基づく情報の公表時期については、男女間賃金差異の公表に関する通達※4及び女性管理職比率の公表に関する通達※5(以下「女性管理職比率通達」といいます。)によれば、本改正が施行される2026年4月1日以後に事業年度が終了し、新たな事業年度が開始した後、速やかに公表するものとされています。この場合の「速やかに」については、事業年度が終了した後、おおむね3か月以内とされています。例えば、事業年度が4月1日から3月31日までの企業の場合、おおむね2027年6月末までに情報を公表する必要があります。なお、公表する情報については、特段の事情のない限り、公表時点で得ることができる最新のものとする必要があり、その後の情報公表については、おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして行う必要があります。

(2) 女性管理職比率の公表

 本改正により新たに公表が義務付けられる「女性管理職の比率」における「管理職」の定義について、女性管理職比率通達の第3(1)には、以下のとおり記載されています。

  • 「管理職」とは「課長級」及び課長級より上位の役職(役員を除く。)にある労働者の合計をいう。
  • 「課長級」とは、①事業所で通常「課長」と呼ばれている者であって、その組織が二係以上からなり、若しくは、その構成員が10人以上(課長を含む。)のものの長、又は、②同一事業所において、課長の他に、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容及び責任の程度が「課長級」に相当する者(ただし、一番下の職階ではないこと。)のいずれかに該当する者をいう。

    • 「課長級」であるか否かの判断に関しては、まずは名称や係の数、構成員の人数等で形式的に要件①に該当するか否かを判断した上で、該当しない場合は、要件②に該当するか否かを実態に即して事業主が判断する。
    • なお、一般的に「課長代理」や「課長補佐」は「課長級」に該当しない。

 また、女性管理職比率の公表に当たっては、公表した数値が上記の「管理職」の定義に沿うものである旨及び実際に計上している各企業の役職名を明記することが望ましいとされています。

 さらに、女性管理職比率通達は、女性管理職比率の大小それ自体のみに着目するのではなく、要因及び課題の分析を行い、改善に向けて取り組んでいくことが重要であり、事業主においては、女性管理職比率の数値を公表するに当たり、単に数値を公表するだけではなく、説明欄において、要因及び課題の分析の結果等のより詳細な情報や補足的な情報を公表することが望ましいとしています。

 女性管理職比率通達は、説明欄における追加的な情報公開の例として、以下を挙げています。

自社における女性管理職比率の背景事情・要因の説明及び課題の分析
  • 以下のような事情がある場合には、追加情報として公表する。

    • 女性管理職比率は低い水準にあるものの、所属業界内の平均と比較すると比較的高い水準にある
    • 女性の採用拡大を初めて間もない状況にある
    • 管理職候補である係長級の女性職員は着実に育成されている
  • 法定の情報公表項目である「採用した労働者に占める女性労働者の割合」や「係長級にある者に占める女性労働者の割合」等を併せて公表する。
  • 平均勤続年数の男女差が女性管理職比率に影響していることや、雇用管理区分別の採用制度を導入しており、総合職に占める女性比率が低いことなどが明らかになった場合は、その旨及びそれらの改善に向けた取組の内容を追加情報として公表する。
男女別管理職登用比率の公表 女性管理職比率は、女性労働者が多い企業においては高くなりやすい面があることから、男女それぞれの労働者数を分母とし、男女それぞれの管理職数を分子とする男女別管理職登用比率を、参考値として記載する。
時系列での情報の公表 単年度ではなく、時系列で複数年度にわたる変化を示すことにより、事業主において継続的に女性活躍推進に取り組んでいることを説明する。
女性管理職比率の上昇に向けた取組の説明 以下の情報を公表する。

  • 女性管理職比率が比較的低い要因及び課題の分析を踏まえた、女性管理職比率の上昇に向けた取組の内容
  • 複数年度にわたって進めてきた取組の内容や、当該取組を進めてきたことによる女性管理職比率の数値の変化

4 職場における女性の健康支援

 改正女性活躍推進法2条は、女性の職業生活における活躍の推進は、女性の健康上の特性に留意して行われるべき旨を明確化しました。本改正に伴い、女性活躍推進法7条に基づいて定められている事業主行動計画策定指針(平成27年11月20日内閣官房、内閣府、総務省、厚生労働省告示第1号)が改正され、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定するに当たっては、男女の性差を踏まえ、特に職場における女性の健康上の特性に係る取組が行われることが望ましいことが明記されました。女性活躍推進法に関する通達※6によれば、「女性の健康上の特性」とは、例えば月経、妊娠・出産(不妊治療を含む。)、更年期症状などが想定されるが、これらは限定列挙ではない、とされています。事業主行動計画策定指針の別紙2(6)は、女性の健康上の特性に係る取組の例として、以下を挙げています。

職場におけるヘルスリテラシー向上のための取組
  • 女性の健康上の特性に関する研修会の開催
  • 婦人科検診等の検診受診の重要性を含めた、健康課題に関する啓発冊子の配布や動画の配信等
休暇制度の充実・柔軟な働き方の実現
  • 生理休暇を取得しやすい環境の整備
  • 女性の健康上の特性に配慮した休暇制度の整備(不調時の休養、治療・通院、検診等の多様な目的で利用することができる休暇制度等)
  • 女性の健康上の特性に配慮した柔軟な働き方を可能とする制度の整備(所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワーク等)
健康課題を相談しやすい体制づくり
  • 女性の健康上の特性について相談及び対応可能な体制構築(産業医、カウンセラーの配置や外部の相談先の紹介、オンラインによる健康相談)
  • 女性が気軽に利用・相談できるオンラインによる相互交流の場の設置
その他の取組
  • 婦人科検診の受診に対する支援
  • 妊婦等が利用できる休憩スペースの設置

 事業主行動計画策定指針は、女性の健康上の特性に係る取組を行うに当たっては、健康に関してはプライバシー保護が特に求められることに留意する必要があるとしています。また、性別を問わず使いやすい特別休暇制度の整備及び職場全体の働き方改革等、女性だけでなく労働者全体を対象として取り組むことも有効であるとしています。

5 最後に

 今般の改正により、女性の活躍に関する情報公表義務が強化され、特に女性管理職比率に関する情報を公表することが義務付けられました。各企業は、本改正を踏まえ、女性の活躍に関する情報公表について準備を進めることが求められます。

 企業における女性の活躍に関する情報公表や、女性の活躍を推進するための取組に関して、本ニュースレターをお役立ていただければ幸いです。

脚注一覧

※2
事業主行動計画策定指針(平成27年11月20日内閣官房、内閣府、総務省、厚生労働省告示第1号)

※3
正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令」(平成27年10月28日厚生労働省令第162号)

※4
「男女の賃金の額の差異の算出及び公表の方法について」(令和8年2月18日雇均発0218第2号)

※5
「管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合の算出及び公表の方法について」(令和8年2月18日雇均発0218第3号)

※6
「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の施行について」(令和8年2月18日雇均発0218第1号)

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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