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速報 令和8年個人情報保護法改正法案 第1回 総論(改正点の概要等)

著者等
森大樹日置巴美(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Data Protection Legal Update ~個人情報保護・データプライバシーニュースレター~No.70/NO&T Technology Law Update ~テクノロジー法ニュースレター~ No.73(2026年4月)
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特集

「速報 令和8年個人情報保護法改正法案」につきましては以下もご参照ください。

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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 政府は、令和8年4月7日、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「改正法案」といいます。なお、改正法案として条番号を記載しているものは、改正後の各法律の条番号を指します。)を閣議決定しました。令和5年秋から約2年半の議論を踏まえた個人情報保護法いわゆる3年ごと見直しについての政府案の提示です。

 個人情報保護委員会は、令和8年1月、「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しの制度改正方針」において、①適正なデータ利活用の推進、②リスクに適切に対応した規律、③不適正利用等の防止及び④規律遵守の実効性確保のための規律の4つの柱を提示し、改正法案の具体化に向けた検討を加速するとしていましたが、改正法案ではこの4つの柱が維持されていると考えられます。

 改正法案には、多数の改正事項が含まれており、この改正法案が成立すると、「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)(以下「法」又は「個人情報保護法」といいます。)が大きく改正されることとなります。また、改正法案のもう一つの特徴として規定が非常に複雑なことが挙げられます。そこで、本ニュースレターでは、改正法案の概要及びポイントを複数回にわたって解説します。初回は、改正法案の理解に資するよう、改正法案提出の背景及び改正点を概観します。

改正法案提出の背景及び改正点

 今回の見直しについては、令和6年6月に個人情報保護委員会から提示された「個人情報保護法いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」※1では規制強化に大きく傾く方向でしたが、その後の検討によって令和7年に入ると、「個人の権利利益への影響という観点も考慮した同意規制の在り方」の見直しや、「個人情報取扱事業者等からデータ処理等の委託を受けた事業者に対する規律の在り方」の見直しが提案される等、DX推進の観点からの検討が進められました※2

1. 適正なデータ利活用の推進 ~1つ目の柱~

 政府は、令和7年6月、「経済財政運営と改革の基本方針2025」において「「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」に基づき取組を加速し、データとAIの好循環を確立するとともに、横断的な法制度について官民データ活用推進基本法の抜本改正、新法など必要な検討を行い、次期通常国会への法案提出を目指す。これを下支えする個人情報保護法の改正案についても、早期に結論を得て提出を目指す。」とし、並行して「規制改革実施計画」や「デジタル社会の実現に向けた重点計画」においてもデータ利活用と個人情報保護法の改正の必要性を提示してきました。また、AIについては、その後同年12月に閣議決定された「人工知能基本計画~「信頼できるAI」による「日本再起」~」では、AI開発等の円滑化に資する個人情報保護法の改正案の早期提出を目指すこととされていました。

 経済成長の一助となるDXの推進、その中で期待されるデータ利活用のためには、政府方針の下、データ利活用をドライブする政策及び環境整備をする政策並びにこれらを実現させるための法整備が必要とされてきました。個人情報保護委員会においても、上述の「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しの制度改正方針」において、「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」を挙げつつ、政府全体の取組とも連携して方針を取りまとめたとしています。

 そして、データ利活用をドライブするために、「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律及び情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が個人情報保護法の改正法案と同日閣議決定されています。これによってデジタル行政推進法を改正し、国等データ活用事業の認定制度が創設することが提案※3されています。

 デジタル行政推進法の改正による国等データ活用事業の制度は、個人情報保護法の改正とともに、政府方針実現のための両輪であるところ、一方の改正法案では適正なデータ利活用の円滑化のためにAI開発の一助となるAI特例が新設され、また、個人情報の保護とデータ利活用の実務との合理的なバランスが保たれるよう目的外利用、第三者提供及び要配慮個人情報の取得時の本人同意の取得に係る例外事由の見直しがなされています。

〈個人情報保護法の改正点〉

  • 適正なデータ利活用の推進

    • AI特例(統計作成等の特例)
    • 個人情報取扱事業者の義務に関する例外事由の拡大

2. デジタル技術の急速な進展に伴うデータ利活用・保護のための環境整備 ~3つの柱~ 

 1つ目の柱である①適正なデータ利活用の推進のほか、今回の見直しでは、②リスクに適切に対応した規律、③不適正利用等の防止及び④規律遵守の実効性確保のための規律の3つの柱が掲げられ、改正法案は、個人情報保護委員会がこれまで公表してきたそれらの内容が反映されたものとなっています。本人の権利利益への影響の有無や個人情報取扱事業者におけるガバナンスの在り方等、個人情報保護法の基本的な在り方に立ち返ったうえで議論し、これらの改正の4つの柱が提示されたものです。その背景としては、個人データ等の取扱態様の変化による個人の権利利益に対するリスクの変化、個人データ等が犯罪行為等の不適正な利用形態で用いられることによる個人の権利利益侵害リスクの高まりが挙げられてきました。そして、規律遵守の実効性確保のための個人情報保護委員会の権限強化が必要であるとされています。それぞれの柱に関する改正点は次のとおりです。

〈個人情報保護法の改正点〉

  • リスクに適切に対応した規律

    • 16歳未満の子どもの個人情報に関する規律の新設
    • 特定生体個人情報(顔特徴データ等)に関する規律
    • データ処理等の委託を受けた事業者に対する規律
    • 漏えい等報告対象事態についての通知義務の緩和
  • 不適正利用等の防止

    • 特定個人への働きかけ可能な個人関連情報等(連絡可能個人関連情報)に係る規律の新設
    • 個人データの第三者提供に係るオプトアウト制度に関する確認義務の追加等
  • 規律遵守の実効性確保のための規律

    • 命令の要件見直し及び勧告・命令に係る是正措置の追加
    • 違法行為中止のための措置の第三者への要請
    • 罰則強化
    • 課徴金制度の導入

改正点の概説

 改正点の概要は次のとおりです。

1. 適正なデータ利活用の推進に係る改正点

(1) AI特例(統計作成等の特例)

 AI開発を念頭に、統計の作成その他の大量の情報から当該情報を構成する要素に係る情報を抽出して分類、比較その他の解析を行うことにより、当該大量の情報の傾向又は性質に係る情報(個人に関する情報であるものが除外されます。)を作成する行為のうち、個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして個人情報保護委員会規則で定めるものを「統計作成等」と定義した上で(改正法案2条13項)、本人の同意を取得することが要求される各規律を前提として次の特例が設けられるとされます。

  • 統計作成等の目的又はそのための提供の目的で現に公にされている要配慮個人情報を取り扱う必要がある場合であって、インターネットの利用等の方法により統計作成等の内容等の事項を公表しているとき、そのような要配慮個人情報の取得について本人同意の取得が不要とされる(改正法案30条の2第1項)。
  • 第三者が個人情報又は個人関連情報を統計作成等の目的で取り扱う必要がある場合であって、インターネットの利用等の方法により統計作成等の内容等の事項を公表、第三者との書面による合意等がなされているとき、そのような個人情報等を第三者に提供することについて本人同意の取得が不要とされる(改正法案30条の2第5項、31条の3第1項)。

 また、公表の継続や、公表されている内容の統計作成等以外での個人情報等の利用・提供の禁止等(改正法案30条の2、31条の3)、本人同意の取得を不要とすることに代わるルールが複数設けられています。

(2) 個人情報取扱事業者の義務に関する例外事由の拡大

 個人情報保護法が①個人情報の目的外利用、②要配慮個人情報の取得、③個人データの第三者提供について、原則として本人の同意を義務付けつつ、一定の例外事由を定めている(法18条、20条、27条参照)ところ、改正法案は、例外事由を拡大することで、個人情報取扱事業者の義務の緩和を図ろうとしています。

  1. 人の生命等の保護又は公衆衛生の向上等のために(特に)必要がある場合等の例外事由の拡大
    現行法では、人の生命等の保護又は公衆衛生の向上等に関して、本人の同意取得が困難な場合に限り例外が認められていますが、改正法案では、同意を得ないことに相当の理由がある場合にも、同意を得ることなく①~③の行為を行うことが可能となります。
  2. 本人の意思に反しないため本人の権利利益を害しないことが明らかである場合の例外事由の新設
    契約履行に必要不可欠な場合等、本人の意思に反せず権利利益を害しないことが明らかな場合について、新たに本人の同意を不要とする例外が設けられます(改正法案18条3項7号、20条2項7号、27条1項8号)。なお、契約履行に必要不可欠な場合のほか、どのような場合が例外となるかについては、その具体的な範囲は個人情報保護委員会規則に委ねられています。
  3. 学術研究機関等の範囲の拡張に伴う例外事由の拡大
    いわゆる学術研究例外(法18条3項5号・6号、20条5号~7号、27条1項5号~7号)について、「学術研究機関等」の定義が見直され、医療提供を目的とする機関や団体が含まれることにより、同意不要となる範囲が拡大されます。これにより、大学病院や研究所に加え、市中の病院や診療所も対象に含まれるようになります。

2. リスクに適切に対応した規律としての改正点

(1) 16歳未満の子どもの個人情報に関する規律の新設

 これまで子どもの個人情報の取扱いはガイドライン等で言及され、実務運用に委ねられてきました。改正法案は、16歳未満の者の個人情報の取扱いについて、あらかじめ当該本人の法定代理人の同意を得て当該保有個人データを取得した場合や、当該本人が当該個人情報取扱事業者に対し自らが16歳以上であることを信じさせるために詐術を用いていた場合等一定の場合を除き、本人は、自己が識別される保有個人データについて、その利用停止等・第三者提供の停止の請求が可能とされ(改正法案35条9項)、個人情報取扱事業者は、その請求に理由があると判明したときは、原則として遅滞なく利用停止等・第三者提供の停止を行わなければならないとされます(同条10項)。

 また、個人情報取扱事業者が16歳未満の者の個人情報を取り扱う場合には、一定の場合を除き、個人情報保護法上の義務として本人に対して行うべき通知(例:利用目的の通知・明示(法21条))や本人からの同意取得(例:目的外利用のための同意取得(法18条1項)、第三者(国内・国外)への個人データ提供のための同意取得(法27条・28条))について、法定代理人に対して行い、又は法定代理人から取得しなければならないとされています(改正法案40条の2第1項)。なお、この規律は、個人関連情報取扱事業者が16歳未満の者に関する個人関連情報を取り扱う場合についても、ほぼ同様の規律が提案されています(同条2項)。

 さらに、個人情報取扱事業者等は、未成年者に関する個人情報等の取扱いについて、その年齢及び発達の程度に応じて最善の利益を優先的に考慮し、権利利益を害することがないよう必要な措置を講ずるよう努めものとされ、法定代理人も同様に、開示請求や同意に当たり本人の最善の利益を優先して考慮すべきものとされています(改正法案58条の3)。

(2) 特定生体個人情報(顔特徴データ等)に関する規律

 生体情報に係る個人識別符号のうち、特別の技術・多額の費用を要せず取得でき、かつ、その取得を本人が容易に認識することができないものを政令で定め、これを変換したものが含まれる個人情報を「特定生体個人情報」と定義(改正法案16条5項)し、個人情報取扱事業者は、特定生体個人情報を取り扱うにあたっては、原則として、利用目的等の法定事項を個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ本人通知又は本人の容易に知り得る状態に置かなければならないとされています(改正法案21条の2)。この「特定生体個人情報」は、個人情報保護委員会が「顔特徴データ等」と呼んで新たな規律が必要としていたものを指します。

 また、保有個人データに含まれる場合、これに係る本人は、特定生体個人情報に含まれる特定生体個人識別符号の作成又は特定生体個人情報の取得についてあらかじめ本人の同意を得ている等一定の場合を除き、当該特定生体個人情報の利用停止等・提供停止に係る請求が可能とされ(改正法案35条7項)、個人情報取扱事業者は、その請求に理由があると判明したときは、原則として遅滞なく利用停止等・提供停止を行わなければならないとされます(同条8項)。

(3) データ処理等の委託を受けた事業者に対する規律

 現行法では、委託元による委託先の監督義務が定められているものの、実務上は技術力等の差から委託先への依存が進み、監督が十分に機能していないとの指摘を踏まえ、委託先に関する規律の見直しが行われています。

 改正法案は、法令に基づく場合等を除き、委託先(再委託先を含む)が委託された個人情報(注:委託先では個人関連情報となるものを除きます。)を業務遂行に必要な範囲を超えて取り扱ってはならないことを明文化しています(改正法案30条の3)。これは従前の解釈を明確化するものと位置付けられ、法令に基づく場合のほか、例外として緊急時の人命救助等が想定されています※4

 また、委託契約において取扱方法、漏えい時の報告義務等の一定事項について合意し、かつ委託先が業務遂行に必要な範囲で当該契約に従って個人情報を取り扱う場合には、委託先に対する各種義務(法第4章第2節〜第4節)及び未成年者の個人情報等の取扱に関する個人情報取扱事業者等の責務(改正法案58条の31項)を原則として免除することが提案されています(改正法案58条の2)。もっとも、個人情報等の取扱いに関する安全管理措置等に関する義務は免除されていません。

(4) 漏えい等報告対象事態についての通知義務の緩和

 現行法上は、個人情報取扱事業者は、個人データの漏えい等が発生した場合には、原則として本人へ通知しなければなりませんが、例外的に、本人への通知が困難な場合であって、代替措置をとるときは、通知義務を免れることとされています(法26条2項ただし書)。

 改正法案は、その本人への通知が困難な場合に加えて、本人への通知が行われなくても本人の権利利益の保護に欠けるおそれが少ない場合として個人情報保護委員会規則で定める場合にも、代替措置をとるときは通知義務を免れることを認めるものです(改正法案26条2項ただし書)。

3. 不適正利用等の防止に係る改正点

(1) 特定個人への働きかけ可能な個人関連情報等(連絡可能個人関連情報等)に係る規律の新設

 現行法上は、「個人関連情報」については、一定の場合における第三者提供のみが規律の対象となっていますが(法31条)、個人関連情報に含まれる特定の個人へ連絡可能な情報を利用したプライバシーや財産権等の侵害を十分に抑止できないことから、改正法案は、特定の個人に対する連絡その他の情報の伝達に利用することができる記述等が含まれる個人関連情報を「連絡可能個人関連情報」と定義した上で(改正法案2条8項)、個人関連情報取扱事業者が、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により連絡可能個人関連情報を利用すること、及び、偽りその他不正の手段により連絡可能個人関連情報を取得することを禁止することを提案します(改正法案31条の2)。なお、この規律は、仮名加工情報取扱事業者による連絡先情報等が含まれる仮名加工情報の取扱い及び匿名加工情報取扱事業者による連絡先情報等が含まれる匿名加工情報の取扱いについても準用することが提案されています(改正法案42条4項、46条の2)。

(2) 個人データの第三者提供に係るオプトアウト制度に関する確認義務の追加等

 現行法上、個人情報取扱事業者は、オプトアウト制度を利用することによって、例外的に、本人の同意を得ることなく、個人データを第三者に提供することができます(現行法27条2項)が、改正法案は、このオプトアウト制度について規制を強化しようとしています。

 具体的には、個人情報取扱事業者がオプトアウトにより個人データを第三者に提供する場合、一定の例外を除き、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、その提供先の名称等及び利用目的を事前に確認する義務を課す(改正法案27条7項)とともに、提供先となろうとする第三者にはその確認に対する虚偽回答を禁止し(同条8項)、その違反には過料を科すこととしています(改正法案186条1号)。さらに、事業者には、当該確認事項及び利用目的に関する記録の作成義務も課すものとされています(改正法案29条1項)。

4. 規律遵守の実効性確保のための規律としての改正点

(1) 命令の要件見直し及び勧告・命令に係る是正措置の追加

 勧告に係る措置をとらなかった場合における命令の要件を緩和し個人の重大な権利利益侵害の切迫性までは必要なく、その害されるおそれがあることが要件とされています(改正法案148条2項)。また、緊急命令については、個人の重大な権利利益侵害の事実があるときに加え、侵害の切迫性があるときが対象とされています(同条3項)。

 そして、違反行為の中止等の是正に必要な措置に加えて、違反行為に係る事実の本人への通知・公表その他の個人の権利利益を保護するために必要な措置をとるべき旨を勧告又は命令できることとされています(改正法案148条)。

(2) 違法行為中止のための措置の第三者への要請

 措置命令を受けた個人情報取扱事業者等がこれに従わない場合に、個人情報保護委員会は、その措置命令がなされた違反行為に係る個人情報等の取扱いに用いるサービス提供者(「取扱関係役務提供者」)に対して、当該個人情報の取扱いの停止、サービス提供の停止等の措置の実施を要請できるとされています(改正法案148条の2第1項)。また、SNS事業者等(「特定電気通信役務提供者」)に対しては、特定電気通信による当該個人情報の流通を防止する措置の実施を要請できるとされます(同条3項)。

(3) 罰則強化

 データベース提供等罪について、法定刑が引き上げられ、また、不正な利益を図る目的での提供に加え、本人等に損害を加える目的で提供したときも罰則の対象とされました(改正法案178条)。そして、不正な利益を図る目的又は本人等に損害を加える目的で、欺罔・暴行・脅迫や個人情報を保有する者の管理を害する行為によって個人情報を取得したときを新たに罰則の対象としています(改正法案180条)。

(4) 課徴金制度の導入

 平成29改正法案は、経済界を中心に制度導入について反対の声が大きかった課徴金制度の導入を提案しています。ただし、当初の構想と比べれば、安全管理措置義務違反が課徴金対象行為から除外される等要件(対象事案)は限定されており、企業への影響を限定しようとしたことがうかがわれます。

① 要件
  1. 課徴金対象行為
    課徴金対象行為は以下のとおりです(改正法案148条の3第1項・2項)。

    • 提供される個人情報を利用して違法な行為又は不当な差別的取扱いを行うことが想定される状況にある第三者に対する個人情報の提供(同条1項1号)
    • 第三者が個人情報の利用を通じて違法な行為又は不当な差別的取扱いを行うことが想定される状況において、当該第三者の求めによる個人情報の利用(同項2号)
    • 法27条1項の規定(第三者提供)に違反する個人データの提供※5(同項3号)
    • 統計作成等の特例に係る規律に違反する個人情報等の取扱い・提供※6(同項4号・5号)
    • 法20条1項の規定(個人情報の適正取得に関する規定)に違反して個人情報を取得し、当該個人情報を利用した場合(改正法案148条の3第2項)
  2. その他の要件(対価要件)
    個人情報取扱事業者が、(ア)の違反行為又は当該違反行為をやめることの対価として金銭その他の財産上の利益を得た場合(改正法案148条の3第1項・2項)
  3. 除外事由(消極的要件)
    (ア)及び(イ)の要件を充足する場合であっても、次の場合は課徴金の納付を命じることはできません。(改正法案148条の3第1項・2項)

    • 個人情報取扱事業者が、違反行為が行われた期間を通じて、当該違反行為を防止するための相当の注意を怠った者でないと認められる場合※7(主観的要件)
    • 違反行為に係る個人情報又は個人データの本人の数が1000人を超えないとき(規模要件)
    • その他個人の権利利益を害する程度が大きくない場合として政令で定めるとき
② 効果(課徴金の額)

 課徴金の額は、違反行為又は当該違反行為をやめることの対価として得た金銭その他の財産上の利益に相当する額として政令で定める方法により算定した額とされます(改正法案148条の3第1項)。なお、課徴金の計算の基礎となるべき事実についての報告や資料の提出要求に応じなかったときは、個人情報保護委員会規則で定める合理的な方法による推計に基づいて課徴金納付命令をすることができます(改正法案148条の4)。また、過去に課徴金納付命令を受けたことがある者についての課徴金額の加算(改正法案148条の5)、自主報告による課徴金額の減額(改正法案148条の6)等も提案されていますが、これらについては景品表示法における課徴金制度が参考になるものと思われます。

③ 手続

 そのほかにも、弁明の機会の付与(改正法案148条の8~10)や行政手続法の適用除外(改正法案148条の16)等の手続に関する規律も提案されていますが、これも他の法令(特に景品表示法)の課徴金制度が参考になるものと思われます。

その他の改正

 改正法案では、行政機関等の義務や罰則についても、改正点の概説に記載された改正事項にあわせて、民間部門の規律との整合性の担保及び行政機関等の性質に鑑み、必要な範囲で同種の改正が行われることとされます。

 また、改正法案では、個人情報保護法の改正に伴って番号法※8及び次世代医療基盤法※9の改正を行うこととされています。例えば、番号法においては、一定の場合に「本人」を「本人の法定代理人」と読み替えて規律を適用すること(改正法案(番号法)43条の2)や、個人情報保護委員会の権限強化(同34条及び34条の2)、罰則の強化(同49条)が挙げられます。また、次世代医療基盤法においては、子ども(16歳未満の者)の医療情報提供について、「本人」を「本人の法定代理人」と読み替えて規律を適用すること(改正法案(次世代医療基盤法)56条の2、58条)、主務大臣の権限強化(同61条)、罰則の強化(同68条、69条)が挙げられます。

 その他、改正法案の附則においては施行期日や経過措置のほか、今回の改正についても、いわゆる3年ごと見直し規定が設けられています。施行期日については、一部を除き、改正法公布の日から起算して2年を超えない範囲内にて政令で定める日から施行するとされています(改正法案附則1条)。過去の法改正や、これまでの法改正時の経緯に鑑みると、おおよそ2年後の施行に向けて、事業者による施行準備に必要な時間が確保されるよう、政令・個人情報保護委員会規則の改正案の提示、ガイドライン・Q&Aの改訂案の提示がなされています。今回の改正も、これまで同様に個人情報取扱事業者におけるデータの取扱いに多くの見直しが要求され得ることから、類似のタイムラインが設定されることが予想されます。

脚注一覧

※1
個人情報保護・データプライバシーニュースレターNo.47(2024年7月)「『個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理』を踏まえた法改正の議論の現状と展望」をご参照ください。

※2
個人情報保護委員会「個人情報保護法の制度的課題に対する考え方について」(令和7年3月5日)

※3
まず、「国等データ活用事業」(国の行政機関等の保有するデータを活用する民間事業者等の事業であって、手続等に関連する民間事業者の業務の処理が改善されることを通じて国民の利便性の向上が図られるもの)に関する指針をデジタル大臣(注:規定上は内閣総理大臣とありますが、デジタル庁設置法の改正によってデジタル庁の所掌事務に追加されており、デジタル大臣とするものと考えられます。)が定め、公表することとされ、デジタル庁の司令塔機能の下で制度運用されることがうかがわれます。そして、民間事業者等は、国等データ活用事業を所管する主務大臣から、当該事業の計画につき認定を受けることができ、また当該事業実施のために必要な国の行政機関等が有するデータの提供を求めることができるとされています。個人情報の利用が含まれ得る事業計画の認定プロセスでは個人情報保護委員会への協議が要求されており、個人情報保護法上の適切性に係る確認が迅速になされることが予定されています。

※4
令和8年1月9日「個人情報保護法いわゆる3年ごと見直しの制度改正方針」別添の第1(1)

※5
本人が16歳未満の場合の読み替え規定の適用による場合を含みます。

※6
具体的には、改正法案30条の2第4項・9項、31条の3第5項の規定に違反する個人情報の取扱い(改正法案148条の3第1項4号)、改正法案30条の2第10項・11項、31条の3第6項・7項の規定に違反する個人情報の提供

※7
改正法案148条の3第2項もほぼ同内容を規定しています。

※8
「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号)

※9
「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律」(平成29年法律第28号)

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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