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ニュースレター

欧州における浮体式洋上風力発電 ― 大規模化へ

著者等
本田圭松田岳志(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Europe Legal Update ~欧州最新法律情報~ No.39/NO&T Infrastructure, Energy & Environment Legal Update ~インフラ・エネルギー・環境ニュースレター~ No.60(2026年4月)
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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 2026年のホルムズ海峡封鎖によってさらに悪化した中東の情勢の不安定さは、再生可能エネルギーを、長期的な目標から差し迫った国家安全保障上の課題へと転換させたといえます。浮体式洋上風力は、深海域の電力ポテンシャルを解き放つことで、再生可能エネルギーに必要とされる規模を提供することができます。 従来の固定式洋上風力発電プロジェクトは、地理的に浅い沿岸棚に限定されるのに対し、浮体式洋上風力発電プロジェクトは、風速が著しく高く、かつ安定している深海域に展開できるため、より高い設備利用率と信頼性の高い発電を実現できます。さらに、プロジェクトを沖合へ移動させることで、開発業者は景観への影響に伴う一般的な近隣住民の反対(「我が家の裏庭にはお断り(”not in my backyard” (NIMBY))」)という課題を緩和し、漁業や海運などの沿岸活動への干渉を軽減することもできます。

 日本は、大陸棚が狭く、急激に深海へと落ち込む列島という地理的条件から、浮体式洋上風力発電に巨大な潜在能力を有しています。日本の洋上風力発電ポテンシャルの約80%は深海域にあるとされており、そこでは浮体式洋上風力発電のみが実現可能です。さらに、日本は世界第6位の排他的経済水域(EEZ)を有しており、その海域面積は国土面積の約12倍に及びます。2025年の法改正によりその開発が許可されたことを受け、この点は特に重要な意味を持ちます。

 他方、現在、商業規模の浮体式洋上風力発電プロジェクトにおいて主導的な役割を果たしているのは欧州です。いくつかの小規模な商業運転プロジェクトが、大規模な商業プロジェクトのパイプラインへの道を開いてきました。これには、英国の3,600MWのオシアン(Ossian)プロジェクトや、合計1,900MWのセノス(Cenos)及びグリーン・ボルト(Green Volt)プロジェクト、そしてノルウェーの1,500MWのウツィラ・ノルド(Utsira Nord)プロジェクトなどが含まれます。欧州各国政府は、コスト競争力に必要な産業規模に到達するために中心的な役割を果たし、多額の民間投資や借入れによる資金調達を呼び込むためには必要不可欠な長期的確実性を提供するための強固な政策及び規制の枠組みを確立してきました。

現在稼働中の商用プロジェクト

 英国では、北海にキンカーディン(Kincardine; 50MW)とハイウィンド・スコットランド(Hywind Scotland; 30MW)の2つの商業運転中のプロジェクトがあります。ポルトガルにはウィンドフロート・アトランティック(Windfloat Atlantic; 25MW)プロジェクトがあります。プロヴァンス・グラン・ラルジュ(Provence Grand Large; 25MW)は、フランス地中海沿岸沖に位置する、最も最近に完成したプロジェクトです。

 一般家庭に電力を供給するこれらのプロジェクトに加え、ノルウェー沖の北海に位置するハイウィンド・タンペン(Hywind Tampen; 88MW)プロジェクトは、スノレ及びガルファクス沖合の石油・ガスプラットフォームに電力を供給しています。これは、石油・ガス田からの二酸化炭素排出量を削減するための取り組みの一環です。同プロジェクトは現在、世界最大の浮体式風力発電プロジェクトとなっています。

コストの壁を乗り越える

 コストは浮体式洋上風力発電における主要な課題です。均等化発電原価(LCOE)とは、発電設備による電力生産の生涯平均コストを表すもので、正味現在価値ベースで算出されます。固定式洋上風力発電プロジェクトではLCOEが100米ドル/MWhを下回る場合もありますが、浮体式風力発電プロジェクトのLCOEは100米ドル/MWhを大幅に上回っていました。これは主に、初期の浮体式洋上風力発電プロジェクトの規模が小さく、技術やサプライチェーンが未成熟であったことに起因するといえます。独立系業界専門機関DNVの最近の報告書によると、これらの課題に対する改善により、浮体式洋上風力のLCOEはここ数年で低下しており、2050年までに40米ドル/MWhを下回ると予想されています。

開発中の大規模商業プロジェクト

 欧州では、いくつかの大規模な商業用浮体式洋上風力発電プロジェクトが開発中です。英国では、計画段階以降にあるプロジェクトとして、ブキャン(Buchan; 960MW)、ミュア・モーア(Muir Mohr; 798MW)、オシアン(Ossian; 3,600MW)、及びセノスとグリーン・ボルト(Cenos and Green Volt; 合計1,900MW)のプロジェクトが挙げられます。セノスとグリーン・ボルトはINTOGリーシング・ラウンド(後述)の一部であり、発電された電力を活用して、沖合の石油・ガスプラットフォームの脱炭素化を推進する予定です。また、英国ではさらに10件の大規模な商業用浮体式洋上風力発電プロジェクトが計画準備段階にあります。

 欧州大陸では、近時、ノルウェーが、北海に位置するウツィラ・ノルド(Utsira Nord; 1,500MW)プロジェクトの区域を開発業者に割り当てました。イタリアでは、サルデーニャ島沖のイクヌサ(Ichnusa; 504MW)やポセイドン(Poseidon; 1,008MW)といった多くの浮体式洋上風力発電プロジェクトが開発中ですが、そのほとんどは初期段階にあります。スウェーデンでは、同国西海岸のスカゲラク海峡に同じく「ポセイドン(1,400MW)」と呼ばれるプロジェクトが提案されています。フランスでは、南ブルターニュで提案されている「スッド・ブルターニュ1(Sud-Bretagne 1; 250MW)」プロジェクトや、地中海で提案されている「メディテラネ(Méditerranée; 2×250MW)」プロジェクトなどがあります。

大規模プロジェクトにおける担保提供の必要性

 通常、プロジェクト会社の株主は、プロジェクト会社の株式及び株主ローン債権に対する担保を提供します。これにより、担保権者(プロジェクトファイナンス貸付人)は、事態が悪化した場合にプロジェクト会社を支配する手段を得ることになります。また、多くの法域において、この担保は資産レベルでの担保よりも容易に執行可能といえます。

 ただし、プロジェクト会社の株主が財政難に陥った場合、株式担保の執行に影響が生じる可能性がある点に留意が必要です。例えば、英国の倒産法には「管理手続(administration)」と呼ばれる、企業を救済したり、債権者にとってより良い結果をもたらしたりする制度があり、これにより、プロジェクト会社の株主に対する法的措置を停止させることも可能です。

 また、プロジェクトレベルでは、担保パッケージには通常以下が含まれます:

  • (可能な場合)コンセッション契約又は類似の契約に基づく海底上の権利;
  • 設備及びその他の有形資産;
  • 売掛金及び銀行口座;
  • プロジェクト契約上の権利;
  • 認可及び同意(可能な場合);並びに
  • 保険証券。

 このレベルで担保を設定する主な理由は、すべての担保付債権が弁済されるまで、無担保債権者が倒産手続を開始したり、事業再編に干渉したり、資産の売却益に対する権利を取得したりすることを防ぐためといえます。

 さらに、通常は以下のような「準担保」が設定されます:

  • 完工保証 – プロジェクトスポンサーは、プロジェクトが一定期間内に完工しなかった場合、完工するまで債務の支払いを継続することを約束する;
  • ネガティブ・プレッジ – いかなる第三者に対しても担保権を設定しない旨の約束;
  • 直接合意 – プロジェクト会社、貸付人、及びプロジェクト契約上の相手方の間で、当該プロジェクト契約に関して締結される三者間合意であり、これには(1)貸付人が債務不履行を是正する機会を与えるためのスタンドスティル期間及び是正権、並びに(2)貸付人が一定期間プロジェクト会社の義務を履行することを可能にするステップイン権が含まれる;並びに
  • 付随的保証 – 建設会社又はサプライヤーが、関連するサービス及び製品の提供において、すべての関連する専門的基準を遵守したことを確認する、レンダーに対する契約上の確約。

 担保権を第三者に対して対抗力を持たせるため、ほとんどの法域では、担保権の「完全化(perfection)」が求められます。英国のプロジェクト会社の株式に対する担保権の完全化は、株券と署名済み(ただし日付未記入)の株式譲渡書面をレンダーに引き渡すことによって行われ、株主ローンについては、当該株主への担保権設定の通知によって行われます。

 プロジェクトレベルでの担保権の完全化(担保権が英国の会社によって設定される場合)については、カンパニーズ・ハウス(Companies House)への登録が必要となります。資産がイングランドにある場合、不動産に対する担保権についてはさらに土地登記所(Land Registry)への登録が必要となり、契約上の権利についてはさらに当該相手方への通知が必要となります。

投資に対する長期的な確実性 – 政府の重要性

 多くの欧州諸国の政府は、政策及び規制の枠組みを導入することで、浮体式洋上風力発電プロジェクトへの民間セクターによる投資を促進する上で主導的な役割を果たしてきました。その詳細は国によって異なるものの、これらは長期的な確実性を提供し、短期的には開発を加速させることを意図しています。これは、まだ規模拡大に至っていないといえる浮体式洋上風力発電のような技術にとって特に重要といえます。

イギリス

 英国政府は2024年に「クリーン・パワー2030行動計画(Clean Power 2030 Action Plan)」を発表し、2030年までに英国の電力システムを脱炭素化する計画を明らかにしました。浮体式洋上風力に関しては、英国の政策は実証プロジェクトから商業規模の浮体式洋上風力への移行に焦点を当てており、2030年までに5GWの浮体式洋上風力発電容量という国家目標の達成を支援することを目的としています。

 クラウン・エステート(Crown Estate)及びクラウン・エステート・スコットランド(これらは、君主(Monarch)の私有財産以外の所有地を管理する独立した商業企業です。)は、特定の海底区域における風力発電所の建設・運営に関する独占権を付与しており、多くの場合、地元のサプライチェーン要件を併せて課しています。また、クラウン・エステートは、英国の洋上風力発電におけるサプライチェーンの能力と体制の強化を促進するための5,000万ポンド規模の「サプライチェーン・アクセラレーター・ファンド(Supply Chain Accelerator Fund)」や、英国の洋上風力発電プロジェクトの迅速な実現を支援する新たな港湾及びサプライチェーンインフラの建設に投資する最大3億5,000万ポンド規模の「サプライチェーン投資プログラム(Supply Chain Investment Programme)」などの活動も実施しています。

 クラウン・エステート及びクラウン・エステート・スコットランドによる権利付与は、「リーシング・ラウンド(Leasing Round)」と呼ばれる正式な競争入札プロセスを通じて行われます。クラウン・エステートが2023年に発表した最新の「リーシング・ラウンド5」は、ケルト海(南ウェールズ沖)における合計4,500MWの浮体式洋上風力発電プロジェクトのみを対象としたものでした。2021年にクラウン・エステート・スコットランドが発表した最新のリースである「スコットウィンド・リーシング・ラウンド(ScotWind Leasing Round)」では、スコットランド沖の計13,000MWに及ぶ12の個別浮体式洋上風力発電プロジェクトに権利が付与されました。また、クラウン・エステート・スコットランドは2022年に「INTOGリーシング・ラウンド」を開始しました。これは、100MW未満の小規模な革新的プロジェクト(イノベーション要素「IN」)と、石油・ガスインフラに接続される大規模プロジェクト(ターゲット石油・ガス要素「TOG」)を対象としたものです。

 浮体式洋上風力発電プロジェクトは、差額決済契約(CfD)を通じて政府からの資金支援を受けることができます。CfDは「アロケーション・ラウンド(Allocation Round)」と呼ばれる競争的な逆オークション方式で授与されます。このプロセスでは、開発業者が1MWhあたりの入札価格を提出し、入札価格は低い順にランク付けされます。該当する技術枠の予算が枯渇するまで、最も低い入札価格がすべて受け入れられます。落札者には、入札額と同額の行使価格(ストライク・プライス)が設定されたCfDが付与されます。これにより、プロジェクトが発電した電力に対して受け取る保証価格が確定します。プロジェクトの収益が行使価格を上回った場合、プロジェクトは収益と行使価格の差額を返還しなければならないことになります。一方、収益が行使価格を下回った場合、プロジェクトは収益と行使価格の差額を受け取れることになります。

 2024年に実施された第6回割当ラウンドでは、グリーン・ボルト(Green Volt; 560MW)プロジェクトに対し、行使価格139.93ポンド/MWhの指数連動型CfDが授与されました(固定価格型プロジェクトの平均行使価格は55.26ポンド/MWhでした。)。2026年1月に実施された最新の第7回割当ラウンドでは、浮体式洋上風力発電プロジェクト向けに1億8,000万ポンドが特別に割り当てられ、より長期(15年ではなく20年)のインデックス連動型CfDが、大幅に高い行使価格である216.49ポンド/MWh(固定式プロジェクトの平均行使価格91.03ポンド/MWhと比較)で、エレバス(Erebus; 100MW)及びペントランド(Pentland; 92.5MW)の実証プロジェクトに付与されました。

 第8回割当ラウンドは2026年後半に開始される見込みです。なお、持続可能な地域サプライチェーンに投資する開発事業者は、「クリーン産業ボーナス(Clean Industry Bonus)」の申請資格も得られ、これは追加のCfD収益支援として提供されます。

 また、英国政府は2025年に「グレート・ブリティッシュ・エナジー(Great British Energy)」(公営のエネルギー投資会社)を設立し、今後5年間にわたり民間資本と共同で再生可能エネルギープロジェクト及び送電網に83億ポンドを投資し、プロジェクトのリスクを軽減する方針です。さらに2025年には「国家富基金(National Wealth Fund)」も設立され、浮体式洋上風力発電の開発を可能にするため、英国全土の港湾整備に18億ポンドを投資することとなっています。

ノルウェー

 ノルウェーの浮体式洋上風力政策は、同国を世界の石油・ガス分野のリーダーから、洋上風力分野の市場をリードする国へと転換することを目的としています。ノルウェー水資源・エネルギー庁(NVE)は、2040年までに30GWの洋上風力発電容量(浮体式及び固定式を含む。)という目標を達成するため、開発候補地として20カ所を特定しました。

 浮体式洋上風力の旗艦プロジェクトはウツィラ・ノルド(Utsira Nord)であり、計画総容量は1.5GWで、500MWのサイト3か所に分かれています。EquinorとVårgrønn、及びDeep Wind OffshoreとEDFの2つのコンソーシアムが、定性評価による競争を経て、プロジェクト固有の開発権を獲得しました。主な評価基準には、「コスト水準・実現可能性・成熟度」及び「実行能力」(各35%)、並びに、「イノベーションと技術開発」、「持続可能性」及び「地域へのプラスの効果」(各10%)が含まれていました。

 ウツィラ・ノルド地区のこれら2つのコンソーシアムは、2027年又は2028年に開催が予定されている、最大350億ノルウェークローネ(約30億ユーロ)の国家投資支援を巡る入札に参加することになります。参加資格を得るためには、両コンソーシアムとも環境調査や影響評価を通じて計画を具体化し、完全な許認可申請書を提出する必要があります。競争は密封入札方式で行われ、各コンソーシアムは1つの密封入札書を提出し、(350億ノルウェークローネの枠内で)最も少ない国からの支援額で開発する意思のあるコンソーシアムが落札者となります。

 「ウツィラ・ノルド」以外にも、ノルウェー政府機関であるエノバ(Enova)は、小規模で革新的な浮体式風力発電プロジェクトを支援するため、100億ノルウェークローネ(約8億5,000万ユーロ)の支援枠を設けています。この支援金は、2026年から2030年にかけて実施される競争入札を通じて配分される予定です。

 政策の主要な目標の一つは、浮体式洋上風力を活用して洋上の石油・ガスプラットフォームの電化を進め、温室効果ガスの排出を削減するところにあります。政策上の義務として、漁業や地域社会への影響を定期的に評価することが求められており、利益を地域で分配するための「海底税」の導入についても現在議論が進められています。

スウェーデン

 スウェーデンエネルギー庁は、2040年までに電力の100%を再生可能エネルギーで賄うという国家目標を達成するため、30GWの洋上風力発電容量を確保する計画を策定しました。現行の政策では原子力発電の復活も優先されており、2045年までに10基の新規原子炉を建設する計画があるところ、国家としての優先度合いや送電網容量を巡って洋上風力発電と競合する可能性があるといえます。

 また、スウェーデンの洋上風力政策は、国家安全保障上の懸念の高まりを受け、市場主導の「オープンドア」方式から転換しつつあります。2024年末、スウェーデン政府は、バルト海における14件の洋上風力プロジェクトのうち13件(総計約30GW)を却下しました。これは、風力タービンがレーダーやセンサーシステムに干渉し、ミサイルの検知時間を大幅に短縮すると判断されたためです。スウェーデンは現在、オークション方式に基づくセントラル方式システムへの移行期にあるといえます。

 なお、近隣諸国とは異なり、現在、スウェーデンは、洋上風力発電に対してCfD(差額決済契約)や同様の収益安定化措置を提供していません。

フランス

 2026年2月に公表された第3次「エネルギー長期計画(Programmation pluriannuelle de l’énergie)」の草案では、2035年までに洋上風力発電容量を15GWとする現在の目標が設定されています。この目標は、2050年までに45GWへと拡大されています。これらの目標達成において、浮体式技術は極めて重要な役割を果たし、これにより、フランスは地中海や大西洋のより水深の深い海域を活用することが可能となるといえます。

 フランスにおいてプロジェクトを開発するには、開発業者が入札手続において落札する必要があります。入札は、エネルギー担当大臣によって、エネルギー規制委員会(Commission de Régulation de l’Énergie)と共同で作成された入札仕様書に基づき実施されます。同委員会は、消費者の利益のためにフランスの電力及び天然ガス市場の円滑な運営を確保する責任を負う独立行政機関です。

 上記入札は競争的対話を通じて行われます。これは、入札仕様書の最終版が発行される前に、政府と入札者がプロジェクトの特定の条件について協議することを意味します。プロジェクトはCfD(差額決済契約)によって支援されており、このモデルは110億ユーロの国家援助スキームの下でEUにより最近承認されたものです。

 第5回入札は2021年4月、ブルターニュ地方の「Sud-Bretagne 1」(250MW)プロジェクトを対象に開始されました。これはフランスにおける浮体式洋上風力発電プロジェクトとしては初の入札であり、2024年3月時点のCfD基準価格は86.45ユーロ/MWhに設定されました。第6回入札は2022年3月に地中海における「Méditerranée」(2×250MW)浮体式洋上風力発電プロジェクトを対象に開始され、CfDの基準価格は92.70ユーロ/MWh及び85.90ユーロ/MWhに設定されました。

 2026年4月、フランス政府は2つの入札ラウンド(第9回及び第10回)を統合し、約5GWの浮体式洋上風力発電プロジェクトとすることを発表しました。結果の発表は、2026年末から2027年初頭にかけて行われる見込みとなります。

 フランスの公共送電システム運営事業者であるRéseau de Transport d’Electricité(RTE)は、洋上送電網の接続計画及び建設を担当しており、これにより開発業者の財務的・技術的リスクを軽減しています。また、APER法などの最近の法律により、公的協議や環境審査の効率化を通じて、プロジェクト開発期間を12年から6年に半減させるという目標の達成も後押しされる見込みです。

イタリア

 イタリアの政策枠組みは、高水準の目標から具体的な財政的インセンティブや産業支援へと移行しつつあります。「2030年国家統合エネルギー・気候計画(Piano Nazionale Integrato per l’Energia e per il Clima 2030)」では、長期的な脱炭素化の道筋が定義され、2030年までに2.1GWの洋上風力発電が稼働すると期待されています。

 「一次インセンティブ枠組み」(FER2政令)は、革新的な再生可能エネルギーに関するイタリア政策の要といえ、競争入札を通じて3.8GWの洋上風力発電容量を促進することを目的としています。プロジェクトは25年間のCfD(差額決済契約)を競い合い、入札開始価格は185ユーロ/MWhに設定されています。政府は2026年の最初の主要な洋上風力入札に向けて、明確な規則とロードマップを公表する見込みです。

 また、イタリア政府は浮体式洋上風力発電プラットフォームの組立ニーズを支援するため、国内の産業ハブへの投資も行っています。2025年7月の政令により、アウグスタ(Augusta)港とターラント(Taranto)港が主要な洋上風力ハブに指定されました。2027年までに約7,830万ユーロが割り当てられ、浮体式洋上風力発電プラットフォームの製造・組立・進水に向けたこれらの港湾の整備が進められることになります。

スペイン

 スペインの領海は水深が深いため、固定式基礎プロジェクトが多くの場合実現不可能となることから、浮体式洋上風力発電技術が有望な解決策として浮上しています。スペインは2030年までに1~3GWの洋上風力発電容量の設置を目指しています。

 政府は2023年2月に王令第150/2023号(Royal Decree 150/2023)を可決し、洋上風力開発のための5つの海域の境界設定を承認しました。これら5つの海域内において、政府は洋上風力発電プロジェクトの開発ポテンシャルが高い19の区域(ZAPERsとして知られています。)を特定しています。

 2024年9月に可決された王令第962/2024号(Royal Decree 962/2024)は、経済的支援、送電網へのアクセス、及び海洋利用権に関する単一の競争入札プロセスを確立しました。この競争入札手続きでは、主にCfD(差額決済契約)オークション方式による経済的支援、送電網への優先アクセス権、及び公営の政府が所有する洋上・陸上用地の使用権付与における優先権が同時に付与されます。第1回入札は2025年末までに実施される見込みと発表されたものの、現時点ではまだ入札は開始されていません。

ポルトガル

 ポルトガルは大陸棚が短いことから、洋上風力発電の設置ポテンシャルについては、固定式プロジェクト(推定潜在容量最大3.5GW)よりも浮体式技術(推定潜在容量最大40GW)の方がはるかに大きいといえます。「2030年国家エネルギー・気候計画」では、2030年までに洋上風力(浮体式及び固定式を含む。)の設備容量2GWを公式目標としています。

 洋上再生可能エネルギー配分計画(Plano de Afetação para as Energias Renováveis Offshore; PAER)では、開発対象として約2,000km²の海域が特定されています。主な4つのエリアとしては、ヴィアナ・ド・カステロ(Viana do Castelo)、レイショエス(Leixões)、フィゲイラ・ダ・フォス(Figueira da Foz)及びシネス(Sines)が挙げられますが、2025年初頭、地元の漁業や航路への影響を軽減するため、総面積は約470km²ほど縮小されました。

 ポルトガルは、度重なる延期を経た後の初の洋上風力発電入札において、一元化された段階的モデルを採用しました。この入札は2つの段階に分かれており、技術的・財務的能力に基づく事前審査段階に続き、海域の割り当てと経済的支援に関する入札段階が行われます。最大2GW規模の海底区域の正式な割り当てプロセスは、2026年に開始される見込みです。

 また、ポルトガルは、最近、ヴィアナ・ド・カステロ沖における「技術自由区域」に関する規則に署名しました。この7.63km²の区域では、開発業者が革新的な浮体式洋上風力発電技術を試験できるよう、系統接続料金の免除や規制プロセスの簡素化が認められています。また、政府は「Hub Azul Portugal」イニシアチブに9,000万ユーロを投資し、アヴェイロ(Aveiro)、フィゲイラ・ダ・フォス(Figueira da Foz)及びセトゥーバル(Setúbal)の港湾インフラを整備して、浮体式洋上風力発電のサプライチェーンを支援します。

市場の見通し

 欧州における浮体式洋上風力の将来は明るいと見られていますが、この産業の成功は、継続的な技術開発と支援的な政策枠組みにかかっているといえます。これらの要因は、欧州各国政府や開発事業者が設定した浮体式洋上風力プロジェクトの導入に関する野心的な目標を達成する上で、鍵となるだろうと思われます。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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