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The Legal 500: 9th Edition Construction Country Comparative Guide – Japan
(2026年4月)
洞口信一郎、小山嘉信、渡邉啓久、杉本花織(共著)
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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。
エネルギー分野の施策は、国内外の政治・社会情勢、国際的な動向、技術革新、経済成長、そして自然環境の変化等多岐にわたる要素によって決定される。これに応じて、法令及びその運用も柔軟に対応していく必要があるため、最新の情報を追いかけることが肝要である。本稿では、エネルギー事業の中心である発電事業に焦点を当てて、近時のタイにおける発電事業に関する規制の動向や実務についていくつか重要なものを紹介する。
2022年11月25日にエネルギー規制委員会(「ERC」)は発電事業ライセンスの改正案(「ERC規則改正案」)を公表し、パブリックヒアリングを行った。その後、ERC規則改正案の更なる改訂案や施行時期に関する情報は公表されておらず、今なお、その内容はERC内部で検討中と思われる。ERC規則改正案では、以下の通り既存の発電事業ライセンスの内容・分類の再整理が行われている。
| ライセンス名称 | 現行のERC規則 | ERC規則改正案 |
|---|---|---|
|
発電建設ライセンス (タイ発電公社(「EGAT」)、首都圏配電公社(「MEA」)若しくは地方配電公社(「PEA」)(以下、総称して「電力公社」)への配電、自家消費又は顧客への配電(系統連系の有無を問わない)を行う者(緊急用のバックアップ電源としての発電は除く)が取得する必要あり) |
該当のライセンスなし | 発電所の建設開始前までに必要 |
|
発電ライセンス (発電を行う者が取得する必要あり※1) |
発電所の建設開始前までに必要 | 発電所の運転開始前までに必要 |
|
配電システムライセンス (発電所から顧客※2に配電するためのシステムを有する者が取得する必要あり) |
発電所から直接顧客に配電を行うためのシステムを有する者が取得 |
顧客に対するポイント・ツー・ポイント(P2P)での、若しくは、多点間ネットワークによる配電を行うシステムを有する場合、又は、特定の地域(工業団地又はEEC区域等)で配電を行うシステムを有する者は、取得する必要あり。 但し、建物の屋根部分に太陽光パネルを置いて太陽光発電(「屋根置き太陽光発電」)を行う者による同建物向けの配電の場合は取得不要。 |
|
売電ライセンス (発電所から顧客※3に売電を行う者が取得する必要あり※4) |
発電所から直接顧客に電気の売電を行う者が取得 |
以下の者が取得
|
| 発電再販ライセンス | 該当のライセンスなし | 電力公社から購入した電気を最終消費者に再販する者(集合住宅・商業施設のオーナーが想定される)が取得する必要あり |
| 研究ライセンス | 該当のライセンスなし | 法令上明確に規制されていないが、内閣により承認された計画に適合する新たな電気産業に係る臨床実験プロジェクトを行う者が取得する必要あり |
| 特別ライセンス | 該当のライセンスなし | 法令上明確に規制されていないが、内閣により承認された計画に適合する新たな電気産業に係るプロジェクトの運営を行う者が取得する必要あり |
ERC規則改正案では、新たに発電建設ライセンスの導入が提案されており、発電所の建設についてERCによる規制を及ぼすことを明確にしている。現行の法制度では、発電所の建設は通常の建物と同様に建築許可を取得すればよいため、発電所の建設ライセンスは不要である。しかしながら、現行のERC規則においては、発電ライセンス等を取得する前に発電施設の建設を禁じる規定が存在し、発電施設の建設開始前に発電ライセンスの取得を行うことを前提とした規定となっている。つまり、法的には、発電ライセンスの審査過程において発電所の建設を間接的にコントロールできる仕組みとなっている。さはさりながら、現行のERCの実務運用では、発電所の建設段階を積極的に監督しようとする動きは見られない。ERC規則改正案では、発電建設ライセンスの取得を明確に求める姿勢が示されているが、ERCの今後の方針及び実務運用については、引き続き注視する必要がある。
タイで外資企業が事業を展開する際、常に問題となるのが外資規制の一般法である外国人事業法への抵触の有無である。現行の外国人事業法では、外資ステータスの企業がタイで発電事業を行うことは禁止されていない。しかし、ERC規則改正案では、発電事業にも外資規制を導入することが示唆されている。
具体的には、発電事業者の外国人・外国法人の株式保有割合を49%以下とし、外国人・外国法人の人数が過半数とならないことが発電事業ライセンスの申請要件の一つとなっている。また、取締役に関しては、半数以上をタイ人とし、署名権限取締役もタイ人でなければならないとしている。現行のERCの規則では、下記で述べるものを除き、株式の保有及び取締役の資格要件に関して外資に関する制約はない。
もし、発電事業に対してERCが特別に外資規制を課すことになれば、その実務上のインパクトは大きいと考えられる。他方で、ERC規則改正案では、これに対する例外として、他の法律で許容される場合には上記の外資規制が適用されないとされている。仮に、タイ投資委員会(「BOI」)の投資奨励恩典を受けている場合や工業団地で事業許可を受けている場合に、この例外に該当すると言えるのであれば、実務へのインパクトは多少軽減されるため、ERCが現行の実務を考慮しつつ、柔軟な制度設計を行うことが期待される。
なお、現行のERCの規則では、会社の代表者・代理人のうち一人がタイ人であることが発電事業ライセンスの申請要件となっている。ERCは、これまで発電事業ライセンスの申請者の取締役の国籍要件を厳しく見ることはなかったものの、近時では、現行の制度の下でも、タイ人が一定の権限を有する署名権限取締役であることを発電事業ライセンスの申請要件とする事例が出てきており、ERCが外資企業への規制・監督を強化しようとする動きが見受けられる。
2025年11月28日にエネルギー省が発行したプレスリリースによれば、タイの国家エネルギー政策評議会(NEPC)は、独立発電事業者(Independent Power Supplier)による電力供給事業の増加を受けて、発電事業ライセンスの申請受付に関して以下の分類に基づく審査方針を示した。
| グループ1 |
|
申請受付 |
| グループ2 |
|
2025年12月末までに発電事業ライセンスの申請書を提出した場合又はそれ以前に当局からプロジェクトの承認を受けた場合(ERCからCode of Practiceの認証を受けた場合等)に限り、申請受付 |
| グループ3 |
|
グループ2に該当しない限り、申請受付を停止 |
特筆すべきは、第三者が提供する屋根置き太陽光発電以外の発電事業者による顧客への電力供給スキームについては、2026年1月以降の新規の発電事業ライセンスの申請受付を停止するというものである。このプレスリリースはあくまで当局の方針を示したものに過ぎず、法的拘束力を伴うものではないが、ERCはこのプレスリリースを受けて上記のグループ3に該当する新規のプロジェクトの申請受付に消極的になっている点に注意が必要である。
ERCは、2025年10月に、電力公社による独占的な電力の買取制度を緩和する方策の一つとして、BOIの認可を受けて所定の条件を満たしたハイパースケール型のデータセンター運営者が、発電事業者から直接電力の購入を行うことを認める規則案を公表した。タイにおける送電網はEGATの管理下にあり、発電事業者が発電する電力は、送電網を経由しないオンサイトによる売電でない限り、各電力公社へ売電することが求められていた。もっとも、当該規則案によれば、BOIの認可を受けた新規のデータセンター運営者は、所定の条件(RE100等の親会社が掲げる包括的な再エネ電力の調達方針の存在の証明、投資計画の策定、建物あたり最低50 MWのITベースロードを持つこと等)を満たせば、EGATの送電網等を経由して、発電事業者から直接電力を購入することが認められる(但し、上記のデータセンター運営者全体で最大2,000 MWまでの売電に限られる。)。発電事業者は、発電所あたり1,000 kVA以上の発電容量を持った新規の発電所で電力公社や他のオフテイカーとの間で電力購入契約を締結していないこと等が条件となっている。2026年3月末日現在で、ERCより正式施行の公示はなされていないが、公示に向けてエネルギー省において審査が進められているため、引き続きその動向を注視する必要がある。
発電事業に関する分野においては、ERCを初めとする規制当局が法令・規則に定める内容と必ずしも一致しない運用を行っている場合や、以前の運用が何らのアナウンスもなく突然変更されている場合があり、法解釈及び手続きの透明性にはまだ課題がある。他方で、今後は国家エネルギー政策の影響を受け、既存の法制度の見直し、新たな規制の制定、規制の緩和の動きが加速し、その過程で電力規制全体が洗練されていくことが期待される。今後変わりゆく可能性を大いに秘めている電力規制に適切に順応していくためには、過去の実績や経験に囚われず、規制当局と密に連携を取りながらプロジェクトを進めることが肝要といえるだろう。
※1
発電量が1,000 kVA未満の場合を除く。
※2
電力公社への配電は除く。
※3
電力公社への売電は除く。
※4
売電量が1,000 kVA未満の場合を除く。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
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