• HOME
  • 著書/論文
  • 東京都の「まちと調和したデータセンターに向けたガイドライン」の公表

Publication

ニュースレター

東京都の「まちと調和したデータセンターに向けたガイドライン」の公表

著者等
渡邉啓久川口裕貴荒井耀章(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Infrastructure, Energy & Environment Legal Update ~インフラ・エネルギー・環境ニュースレター~ No.61/NO&T Real Estate Legal Update ~不動産ニュースレター~ No.18(2026年4月)
関連情報

ニュースレター

特集

本ニュースレターの英語版はこちらをご覧ください。

業務分野
キーワード

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1. はじめに

 近年、生成AIやクラウドサービスの急速な普及に伴い、データ処理需要は飛躍的に増大しています。これに対応する基盤として、データセンターは、社会経済活動を支える基幹インフラとしての性格を一層強めており、とりわけ都市部においては、その立地需要が顕著に高まっています。一方、データセンター開発に際しては、環境への配慮やまちづくりとの整合性確保といった地域共生の観点も重要性を増しています。

 こうした状況を踏まえ、東京都は、2026年3月31日、「まちと調和したデータセンターに向けたガイドライン」(以下「本ガイドライン」といいます。)を公表しました。本ニュースレターでは、本ガイドラインの概要及び実務への影響を概説いたします。

2. 本ガイドラインの概要

(1) 本ガイドラインが示した2つの視点

 本ガイドラインを理解するにあたっては、東京都が示した以下の二つの視点が重要です。

 第一に、東京都は、本ガイドラインの冒頭で、データセンターを「デジタル都市を支える社会の基幹インフラ」と位置づけ、電力需要、脱炭素やまちづくりとの整合を図りながら、その整備促進を後押しする旨を明確にしました。

 続いて、データセンターの建設に当たっては、環境及びまちづくりとの両立を図るだけでなく、早期に地域とコミュニケーションを深めることが重要であるとの認識を示しました。この観点から、本ガイドラインは、①ステークホルダー(事業者、住民や行政)が対話を進める前提として「データセンターとは何か」を示し、②データセンター開発事業者向けに、立地・規模や環境性能等の観点から遵守すべき法令上のルールを整理しつつ、地域住民との早期のコミュニケーションや、地域共生や環境配慮を図る計画作りを促しています。

(2) 各種ルールへの適合

 本ガイドラインでは、データセンター開発に際して典型的に検討が必要となる各種の法規制を整理しています。その中でも特徴的なのは、都市計画法及び建築基準法に基づく用途地域規制に関し、施設内容等によって規制が異なるため所管行政庁への確認が必要であるとしつつも、データセンターは一般的に、(より制約を受ける「工場」などではなく)「事務所」として取り扱われるケースが多いと明示している点です。データセンターが「事務所」に該当するのであれば、用途地域規制上は、下記の図表の通り、住居専用地域を除く幅広い用途地域において整備することが可能となります。

 ただ、用途地域上許容されることをもって直ちにデータセンターの開発が可能となることを意味するわけではありません。本ガイドラインは、データセンターの開発に際して、高さ制限、日影規制等の建築規制、地区計画やまちづくりガイドライン、環境性能の確保に関する各種規制のほか、緑化、騒音・振動など周辺環境への配慮を図る基準への適合が必要となる点にも注意を促しています。

(出典:本ガイドライン5頁より抜粋)

(3) 早期からの対話による理解と調整

 本ガイドラインが特に強調しているポイントが、データセンター開発事業者がなるべく早期に地域住民とのコミュニケーションを深め、地域の関心事項を踏まえつつ円滑に理解と調整を進めていくことが重要であるとの点です。データセンターは、景観、騒音や排熱への懸念等から地域住民との認識ギャップが生じやすい側面があります。

 本ガイドラインでは、計画初期段階からの情報共有及び対話の開始を求めるとともに、行政による早期の情報把握の重要性を指摘するほか、下記の図表のような手順例を示すとともに、円滑な対話に向けたポイントも示しています。

<円滑な対話に向けたポイント>

  1. 各種申請等を契機とした早期からの対話:法令等で定められた説明以外にも、機会を捉えて近隣住民と早期からコミュニケーションを行うことが重要であること。
  2. 地域の理解を深めるための情報開示・説明:地域住民の説明に当たっては、法令等で定められた項目に留まらず、地域の関心事項(例えば、(a)施設の概要や事業スケジュール、(b)日影・風・電波障害・主要な視点場からの見え方、交通への影響対策といった周辺地域への影響と対策、(c)消費電力やCO2排出等の地球環境への影響と対策、(d)緑化計画、外観上の工夫など地域貢献等の工夫)についても丁寧に説明していくことが大切であること。
  3. 施設利用開始後の継続的なコミュニケーション:データセンターが地域の一員として共生していくためには、完工後利用が開始された後も、引き続き円滑な対話と調整が図られる環境づくりが重要であること。

(出典:本ガイドライン8頁より抜粋)

3. 実務への影響

 本ガイドラインは法的拘束力を有するものではありませんが、東京都における今後の行政運用や許認可実務において重要な参照基準となるでしょうし、東京都以外の地域における今後のデータセンター関連のルールやガイドラインの策定にあたっても、先例としての意義を有するものと想定されます。

 なお、本ガイドラインにおいても示唆されるとおり、東京都下においても、都レベルの条例や本ガイドラインのほかに、区市町村レベルにおける条例や指導要項等によって、各自治体の実情に即した追加的なルールが現在又は将来においても存在し得ることに注意が必要です。例えば、江東区では、2025年12月に「大規模データセンターに係る建築計画の早期周知に関する指導要綱」を制定(今年2月施行)し、今年3月には「江東区大規模データセンター建設計画における話し合いガイドライン(区民向け)」を策定し、地域における合意形成プロセスを制度的に補強する動きがみられています。

 東京都においてデータセンター開発を計画している事業者にとっては、本ガイドラインの内容を十分に理解し、区市町村レベルのルール作りの動向にも注意しながら、早期に行政との情報共有を進め、地域住民の理解増進のための施策を工夫し、事業計画にも反映していくことが求められるでしょう。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


全文ダウンロード(PDF)

Legal Lounge
会員登録のご案内

ホットなトピックスやウェビナーのアーカイブはこちらよりご覧いただけます。
最新情報をリリースしましたらすぐにメールでお届けします。

会員登録はこちら

弁護士等

インフラ/エネルギー/環境に関連する著書/論文

石油・天然ガス・その他資源に関連する著書/論文

環境法に関連する著書/論文

不動産・REITに関連する著書/論文

不動産投資/証券化に関連する著書/論文

ファイナンスに関連する著書/論文

不動産ファイナンスに関連する著書/論文

  • HOME
  • 著書/論文
  • 東京都の「まちと調和したデータセンターに向けたガイドライン」の公表