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ニュースレター

営農型太陽光発電に係る制度見直し案の概要

著者等
宮城栄司、渡邉啓久、河相早織、田澤拓海(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Infrastructure, Energy & Environment Legal Update ~インフラ・エネルギー・環境ニュースレター~ No.62/NO&T Food System and Nature Law Update ~農林水産・食品ビジネス法務ニュースレター~No.12(2026年5月)
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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1. はじめに

 農林水産省は、2026年4月15日、望ましい営農型太陽光発電に関する検討会(第6回)を開催し、「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」(以下「農山漁村再エネ法」といいます。)に基づく基本方針の改定案概要を提示し、望ましい営農型太陽光発電の考え方が明記されました※1。これに加え、新たな制度設計を含む関係規定の改正の方針や、既存事業者への対応の厳格化に係る方針も示されています。

 本ニュースレターでは、同検討会で示された、営農型太陽光発電に係る制度見直し案を概説します。

2. 望ましい営農型太陽光発電の考え方

(1) 農山漁村再エネ法に基づく基本方針(告示)改定案

 営農型太陽光発電※2は、特例的に一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立てて上部空間に太陽光発電設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う取組をいいます※3。適切に実施すれば、作物の販売収入に加え、発電電力の自家利用等による農業経営の改善が期待できますが、営農の適切な継続が大前提であるにもかかわらず農業との両立が図られているとは言いがたい不適切な事案の存在も指摘されています※4。

 農林水産省は、営農型太陽光発電の適正化のため、農山漁村再エネ法に基づく基本方針を改定し、営農型太陽光発電のあるべき姿を明確化した上で、地方公共団体等が当該基本方針に沿って望ましい営農型太陽光発電の適否を判断できるよう、関連制度の見直しを行う方針を示しました。

 基本方針の改定案概要においては、望ましい営農型太陽光発電の考え方について、①栽培に必要な労働力が確実に確保されていること、栽培する農作物が一般的な販売ルートが確立している品目であること等の営農に関する方針、②発電設備の遮光率が30%未満であること(遮光率での判定が困難な発電設備においては日射量の減少が20%未満であること)、発電設備の最低地上高が概ね3m以上、支柱の間隔が概ね4m以上確保されていること等の発電設備に関する方針、③地域における協議会等及び地域計画の協議の場合において合意が得られていること、発電事業者から営農者等に対し、適正な利益還元が行われること等の地域との共生に関する方針といった形で、具体的な取組基準が示されています。

 また、各地域における農業・農村の振興の方針や経営形態の特色に対応するため、市町村が国の基本方針を踏まえて農林漁業の健全な発展と調和のとれた再エネ発電の促進に関して定める基本計画(農山漁村再エネ法第5条)において、営農型太陽光発電の形状・形態に係る基準について、各市町村における特例的な対応を定めることができる※5との内容も盛り込まれています。これにより、市町村が主体となり、地域の特性を踏まえた新しく前向きな取組の促進が期待されています。

(2) 営農型太陽光発電に係る制度設計の見直し

 営農型太陽光発電に係る制度設計も大幅に見直されます。営農型太陽光発電を行うにあたり農地を使用するための一時転用許可は農地法に基づき行われていたところ、新たな制度の下では、農山漁村再エネ法に基づく設備整備計画認定(農山漁村再エネ法第7条)を受けることを一時転用許可の条件として位置付け、農地法単独では考慮することが難しい地域共生等の観点を営農型太陽光発電の制度に組み込む方針が示されています。設備整備計画認定を取得するためには、設備整備計画の内容が、市町村の定める基本計画に適合するものであることが必要であり(同条第3項)、これにより、基本計画の趣旨に沿った「望ましい営農型太陽光発電」に適合する案件が適切に導入される仕組みを構築することが企図されています。かかるフローの実現にあたり、農地法に基づく取扱いから農地法及び農山漁村再エネ法に基づく取扱いとするため、農地法施行規則等の関係規定の改正の方針も示されています。

<新しい制度の手続きフロー>

 (出典:農林水産省説明資料4頁より抜粋)

3. 既存事業者への対応の厳格化

 営農型太陽光発電に取り組んでいる既存事業者への対応についても、厳格化の方針が示されています。既存事業者への取締りは、法の不遡及の原則等を踏まえ、現在の基準を適用しつつ、基本方針に示された新たな基準への適合を促進するため、農山漁村再エネ法に基づく基本方針に、以下のとおり再許可時の許可基準として追加する事項や、「望ましい取組」を明確化する項目を設ける案が示されました。

【再許可時の許可基準に追加】

  1. 栽培に必要な労働力が確実に確保されていること
  2. 栽培品目について、50万円以上の生産・販売実績等を有しているなど、業としての農業の持続性が確保されていること
  3. 栽培農作物が、地域で一般的に栽培され、市場価値があり、一般的な販売ルートが確立していること
  4. 原則毎年収穫可能な品目であること。やむを得ない場合でも3年以内に計画収量を確保できること

【「望ましい取組」として明確化】

  1. 営農者が地域計画において、10年後の農業を担う者として位置づけられていること
  2. 発電設備の遮光率が30%未満(遮光率での判定が困難な設備は日射量の減少が20%未満)
  3. ほ場からの最低地上高が概ね3m以上、かつ、支柱の間隔が概ね4m以上確保されていること
  4. 発電事業者から営農者等に対し、適正な利益還元が行われること 等

 また、農業との両立が図られていない等、不適切な事案に対しては、国が、許可権者等(都道府県・市町村・農業委員会)と一体となって取締りに関与する方針が示されています。国による実態調査の対象を拡大するとともに、不適切事案が明らかになった場合の取締りに係るルールや基準の明確化・厳格化が図られます。

<国主導の取締り強化案>

実績報告書の提出・不適切事案の指導
  • 年1回の書面による確認
  • 【拡充】都道府県と一体的に対応する国の審査・現地調査の対象を4ha→2haに引下げ
  • 【新設】作物の生育期間中に現地調査することをルール化
  • 【新設】栽培実績や衛星データ等から国も不適切案件を捕捉
勧告※6・命令
  • 【新設】勧告・命令の判断基準を国で明確化※7
  • 【新設】国が捕捉した勧告・命令相当の事案を許可権者等へ通知
許可取消※8・撤去・再許可
  • 【新設】勧告後に改善がない場合は再許可しないとの判断基準を国で明確化
  • 【新設】撤去費用のチェックの強化等のため、再許可の期間を短縮することを国で明確化

(出典:農林水産省説明資料6~7頁より作成)

4. 最後に

 営農型太陽光発電に係る制度見直し案は、制度運用に係る有識者による意見交換を経て、検討会にて了承されました。早ければ来年にも新しい制度の運用を開始すべく、今後、関連規定の整備が進められる予定です。新制度は、新規の営農型太陽光発電案件のみならず、既存の事業者にも少なからず影響を及ぼすものとなることから、今後の議論を注視する必要があります。

脚注一覧

※1
2025年12月、政府は、地域との共生や環境への配慮を大前提とした再生可能エネルギーの導入にあたり、「不適切事案に対する法的規制の強化」「地域の取組との連携強化」「地域共生型への支援の重点化」という3つの柱からなる「大規模太陽光発電事業に関する対策パッケージ」を策定し、関係省庁連携の下、速やかに施策の実行を進める方針を示しました。当該方針の中で、農林水産省は、「望ましい営農型太陽光の明確化・不適切な取組への厳格な対応」を明確にすることが求められていました。

※2
営農型太陽光発電一般に関しては、長島・大野・常松法律事務所 農林水産・食品プラクティスチーム編『農林水産・食品ビジネス法務 投資・融資におけるポイント解説』(2025年、商事法務)251頁以下もご参照下さい。

※3
農地法施行規則第30条第2項

※4
農林水産省によれば、2023年度末において、営農型太陽光発電設備の下部農地での営農に支障があったものの割合は、約5,200件のうち24%(1,200件超)にのぼります。

※5
基本方針改定案においては、市町村により特例的な対応を行うことが認められるケースとして、公的機関による複数年の試験栽培結果等の科学的根拠の提示により基本理念の着実な実現が確保される場合や、都道府県の機関と試験的栽培を行う場合が示されています。

※6
FIT/FIP交付金を受けている案件については、交付金の一時停止措置が講じられる可能性もあります。

※7
例として、実績報告書の未提出、是正の指導に従わない、2年以上継続して収量要件を大幅に下回っている、営農計画どおり収穫が行われない等といった事項が示されています。

※8
FIT/FIP交付金を受けている案件については、FIT/FIP認定の取消措置が講じられる可能性もあります。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


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