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【From New York Office】米国CBPによる強制労働執行運用ガイダンスの公表
塚本宏達、福原あゆみ、近藤亮作、木原慧人アンドリュー(共著)
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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。
2026年5月7日、米国の関税・税関・輸入関連措置等の事件を管轄する国際貿易裁判所(「CIT」)は、The State of Oregon, et al. v. United States, et al.及び Burlap and Barrel, Inc., et al v. United States, et al.において、第2次トランプ政権が1974年通商法122条(「122条」)に基づき導入した10%の追加関税(「122条関税」)について、同条の法定要件を満たしておらず違法であるとの判決を下しました(「本判決」)。
122条は、「大規模かつ深刻な」(”large and serious”)米国の「国際収支赤字」(”balance-of payments deficits”)を含む「根本的な国際決済上の問題」(”fundamental international payments problems”)に対処するため、大統領に対し、最大150日間、最大15%の従価税による一時的な輸入追加関税(課徴金)を課す権限を付与する規定です。今回の122条関税は、2026年2月20日に連邦最高裁がIEEPA関税を違法と判断したことを受け※1、トランプ大統領が同日に発出した大統領布告第11012号※2に基づき、重要鉱物、エネルギー関連製品、農畜産物、医薬品関連製品、電子機器、乗用車・バス・トラック等の一部の特定の除外品を除く全世界からの輸入品に対して課したものです。当初の122条関税の適用期間は、2026年2月24日から同年7月24日までとされています。
本ニュースレターでは、本判決の内容、今後の上訴手続、122条関税の徴収継続及び将来的な還付可能性、並びに米国向け輸出・米国輸入を行う日本企業にとっての実務上の対応等について整理します。
本件は、民間の輸入業者であるBurlap and Barrel, Inc.及びBasic Fun, Inc.の2社、並びにオレゴン州を含む24州が、122条関税は大統領権限の違法又は違憲な行使であるとして、CITに提訴したものです。
本件は、Mark A. Barnett首席判事、Claire R. Kelly判事及びTimothy C. Stanceu判事の3名から構成される合議体により審理されました。
CITは、まず、ワシントン州を除く23州の「非輸入者」(”non-importers”)について、122条関税を現に支払っている、又は近い将来支払うことになるとの具体的な主張が十分ではないとして、原告適格を否定しました。他方で、輸入業者であるBurlap and Barrel, Inc.及びBasic Fun, Inc.、並びにワシントン州については、本案判断に進むことを認めました。
本判決は122条関税の違法性を認めたものの、事案としての救済の範囲は、実際に122条関税を支払ったこと等を示し、実際の損害があることを立証した原告に限定されており、すべての輸入者に直ちに同じ救済が及ぶものではないことに、留意する必要があります。
本判決の中心的な争点は、大統領布告第11012号が指摘した米国の貿易赤字、経常収支赤字及び国際投資ポジションの純マイナス分が、122条にいう「大規模かつ深刻な」米国の「国際収支赤字」に該当するかという点です。
Barnett首席判事及びKelly判事による多数意見は、122条制定当時である1974年において、議会が「国際収支赤字」という用語をどのような意味で用いていたかを重視し、詳細に立法経緯を分析しました。その上で、多数意見は、122条にいう国際収支赤字とは、単に貿易赤字や経常収支赤字を広く含む概念ではなく、三つの概念、すなわち流動性収支、公的決済収支及び基礎収支といった観点から捉えられる国際収支上の赤字を意味すると解釈しました。
その結果、多数意見は、大統領布告第11012号が指摘する米国の貿易赤字等、すなわち、大規模な貿易赤字、経常収支の赤字、純対外投資ポジションのマイナス、そして(経常収支の一部である)一次所得・二次所得収支の赤字が存在することは、122条にいう国際収支赤字には該当せず、同布告は122条の発動要件を満たしていない、すなわち、大統領による122条関税の賦課は権限逸脱(ultra vires)であると判断しました。
また、多数意見は、政府が主張するように122条を広く解釈すると、議会による実質的な制約なしに行政権が広範な関税を課すことを可能にし、非委任原則の問題(non-delegation issue)を含む重大な憲法上の懸念を生じさせ得るとも指摘しました。
この点は、2026年2月20日のIEEPA関税に関する連邦最高裁判決でも指摘されていたように、米国裁判所が、大統領による一方的かつ広範な関税措置について、議会からの明確な授権の有無を厳格に確認する姿勢を示したものといえます。
多数意見は、輸入者である原告適格を有する原告らが恒久的差止命令(permanent injunction)の要件を満たしていると判断し、これらの原告の輸入貨物について、122条関税の徴収を差し止めました。
他方で、CITは、122条関税の対象となるすべての輸入品に広く適用される普遍的差止命令(universal injunction)の要件までは満たされていないと判断しました。
そのため、本判決に基づく差止命令の効力は、現時点では、原告であるBurlap and Barrel, Inc.、Basic Fun, Inc.及びワシントン州に限定されています。
もっとも、政府は本判決を連邦巡回区控訴裁判所(「CAFC」)に直ちに上訴しており、CAFCは2026年5月12日、CITの差止命令について行政上の停止を認めています。そのため、差止命令の効力及び範囲については、今後の上訴審の判断により変更される可能性があります。
Stanceu判事は、122条にいう「国際収支」を、流動性収支、公的決済収支又は基礎収支といった特定の測定方法に限定する多数意見の解釈は、立法経緯を過度に限定的に読むものだと批判し、多数意見に反対しました。
また、国際収支赤字をどのように測定するかという問題は司法府の専門領域ではなく、裁判所は行政当局の経済的判断を後から置き換えることに慎重であるべきだとも述べています。
もっとも、同判事の反対意見の趣旨は、大統領布告第11012号が適法であると積極的に判断するものではなかった点に、留意が必要です。略式判決(summary judgment)を下すためには、重要な事実に関する真の争点が存在しないという要件等を満たす必要があります。多数意見は、第一に、争点となる重要な事実はないと判断し、第二に、大統領布告第11012号は122条にいう「国際収支」を、流動性収支、公的決済収支及び基礎収支流動性により測定されることを前提としていないため違法だと判断しましたが、Stanceu判事は、これらの旨の判断を裁判所が検討している旨の通知が当事者に与えられることもなく、ひいては通知があったならば回答するための合理的な期間も与えられることがないまま略式判決がなされたことには、手続的な違法があるとの立場を示しました。
政府は、本判決の翌日である2026年5月8日、CAFCに上訴しました。また、2026年5月12日、CAFCは、CITの恒久的差止命令について行政上の停止を認めました。
したがって、CITが122条関税を違法と判断したにもかかわらず、現時点では、少なくともCAFCによる追加判断が出るまで、122条関税の徴収が継続される可能性が高い状況です。
また、本件は、IEEPA関税訴訟と同様、米国大統領の関税権限の限界という重要な問題を含むため、CAFCの判断後、さらに連邦最高裁による審査に進む可能性が相当程度見込まれます。他方で、122条関税自体は、2026年7月24日に失効する見込みであり、議会による明示的な延長がない限り、徴税自体はその期限をもって終了することになります。
本判決が今後CAFC又は連邦最高裁において維持され、122条関税の違法性が最終的に確定した場合、過去に納付された122条関税について、将来的に還付を受けられる可能性があります。ただし、争われている122条関税の適法性についての実体的なポイントに関する本件CITの判決の中身が、それらの上級審により認められることが前提であり、CITレベルにおいて2対1の判断となっている本件がどのような帰結となるかは、現時点では予見できません。
122条関税についても、最終的に違法性が確定した場合には、IEEPA関税の場合と同様に、清算(liquidation)又は再清算(reliquidation)を通じた還付手続が利用可能となる可能性があります※3。もっとも、その具体的な方法や時期は、個々の輸入申告の種類、清算状況、CBPが設ける手続、さらには今後の裁判所の命令内容によって左右されると考えられます。
将来の還付可能性を確保するためには、IEEPA関税での対応と同様に、個々の輸入申告エントリの状況を適切に管理しておくことが重要です。
米国関税実務では、輸入時に関税が仮納付され、その後、CBPによる清算により関税額等が最終化されます。清算後は、通常、清算から180日以内にCBPに対する異議申立て(protest)を行わなければ、清算が最終的なものとなり、後日の修正や還付のためにとることができる法的手段が限定される可能性があります。
したがって、特に今後、清算が近づいたエントリや、既に清算済みでprotest期限が近接してきたエントリについては、将来的な還付可能性を保全するためにprotestを行うべきかどうか、個別に検討する必要があります。
また、返還を求めるための訴訟を提起する必要性が出てくる可能性がないかどうか、今後の122条関税を巡る米国での訴訟の進展を注視していくことも重要と考えられます。
米国において、輸入者(Importer of Record)ではないものの、米国子会社、販売会社、顧客又はサプライヤーを通じて、実質的に122条関税のコストを負担している日系企業もあるところです。
このような下流購入者については、自らCBPに対して直接還付請求を行う立場にない場合が多いため、輸入者であるサプライヤーやグループ会社との契約関係や連携を早い段階で精査し、将来還付が行われた場合の還付金の帰属や、契約上、122条関税を含む追加関税の負担者がどのように定められているかについて、必要があれば見直しや調整を行うことが有益であることも考えられます。
第2次トランプ政権は、より長期的かつ広範な関税措置の根拠として、1974年通商法301条に基づく複数の調査を開始しています※4。これらの調査では、強制労働への対応不足や産業の過剰生産能力などが問題とされています。
301条は、調査の結果として課される関税について、122条のような明確な期間制限や税率上限を置いておらず、122条関税の失効前後に、301条調査の結果を公表し、これを根拠に新たな追加関税措置を導入する可能性があります。
米国向け輸出・米国輸入を行う企業としては、122条関税の上訴動向だけでなく、進行中の301条調査の対象範囲、コメント手続、対象産品リストの公表時期等についても、継続的に情報を確認する必要があります。とりわけ、対象品目の範囲、除外品目の範囲、また、品目毎に異なる可能性がある税率については、調査進行中からリアルタイムでの情報収集を行うことで、自社への影響の予想に役立つ可能性があります。
本判決は、IEEPA関税に続き、第2次トランプ政権による関税措置について、米国裁判所が大統領権限の限界を示した重要な判断といえます。
もっとも、本判決はCITの判断であり、政府は既にCAFCに上訴しています。また、CITによる差止命令は原告らに限定されており、さらにCAFCにより行政上の停止が認められているため、122条関税の徴収が直ちに全面的に停止される状況にはありません。
122条関税を納付している、又は納付する可能性のある企業としては、今後の上訴審の動向を注視しつつ、自社又は米国子会社の輸入エントリ、納付済み関税額、清算状況、protest期限等を整理し、将来的な還付請求や異議申立てに備えることが重要です。
また、米国向け輸出取引において実質的に122条関税のコストを負担している日本企業においては、Importer of Recordである米国子会社、販売会社、顧客又はサプライヤーと連携し、将来還付が行われた場合の取扱いを含め、契約上・実務上の対応を確認しておくことが望まれます。
※1
2026年2月20日にIEEPA関税を違法と判断した連邦最高裁判決については、国際通商・経済安全保障ニュースレター「IEEPA関税を違法とする連邦最高裁判決とその影響・対応」(2026年2月)もご参照ください。
※2
2026年2月20日付け大統領布告第11012号については、こちらをご参照ください。
※3
清算(liquidation)、再清算(reliquidation)等関税に関する基本的な考え方については、国際通商・経済安全保障ニュースレター「IEEPA関税を違法とする連邦最高裁判決とその影響・対応」(2026年2月)3.(2)もご参照ください。
※4
2026年3月11日に米国通商代表部が開始した1974年通商法301条調査については、国際通商・経済安全保障ニュースレター「日本を対象とする1974年通商法301条調査の開始 ~見通しと日本企業としての対応ポイント~」(2026年3月)もご参照ください。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
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