• HOME
  • 著書/論文
  • 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準の改正と実務上の影響 ~経済上の利益の提供による利用者の誘引の禁止等~

Publication

ニュースレター

指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準の改正と実務上の影響 ~経済上の利益の提供による利用者の誘引の禁止等~

著者等
齋藤理長谷川紘宇波壮一郎(共著)
出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T Health Care Law Update ~薬事・ヘルスケアニュースレター(法律救急箱)~ No.42(2026年6月)
業務分野
キーワード

※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

はじめに

 健康保険法(大正11年法律第70号。その後の改正を含み、以下「健康保険法」といいます。)等の医療保険各法※1に基づく指定訪問看護※2に関して、2026年6月1日に実施された診療報酬改定※3に伴い、「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」(平成12年3月31日号外厚生省令第80号。その後の改正を含み、以下「基準省令」といいます。)が2026年3月5日付で改正され、同年6月1日に施行されました(以下「本改正」といいます。)。

 本改正は、保険医療機関との関係で「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(昭和32年厚生省令第15号。その後の改正を含み、以下「療担規則」といいます。)において明示的に規定されていた健康保険事業に関する経済上の利益の提供による誘引の禁止等の定めについて、指定訪問看護事業者にも同様の規定を設けることを内容とするほか、特定の主治医及び事業者等への誘導の対償としての財産上の利益の収受の禁止を規定するものであり、指定訪問看護事業者に対する実務上の影響が少なくないことから、その概要と実務上の影響をお伝えします※4

改正の概要

 本改正では、以下の条項が追加されました。

①適正な手続の確保(基準省令5条の2)

指定訪問看護事業者は、その担当する指定訪問看護の提供に関し、厚生労働大臣又は地方厚生局長若しくは地方厚生支局長に対する申請、届出等に係る手続及び訪問看護療養費に関する費用の請求に係る手続を適正に行わなければならない。

②健全な運営の確保(基準省令5条の3)

指定訪問看護事業者は、その担当する指定訪問看護の提供に関し、健康保険事業及び後期高齢者医療制度の健全な運営を損なうことのないよう努めなければならない。

③経済上の利益の提供による誘引の禁止(基準省令5条の4)

  1. 指定訪問看護事業者は、指定訪問看護を受ける者(以下「利用者」という。)に対して、第13条の規定により受領する費用※5の額に応じて当該指定訪問看護事業者が行う収益業務に係る物品の対価の額の値引きをすることその他の健康保険事業及び後期高齢者医療制度の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供により、当該利用者が自己の指定訪問看護事業者において指定訪問看護を受けるように誘引してはならない。
  2. 指定訪問看護事業者は、他の事業者又はその従業員に対して、利用者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業及び後期高齢者医療制度の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、利用者が自己の指定訪問看護事業者において指定訪問看護を受けるように誘引してはならない。

④特定の主治医及び事業者等への誘導の禁止(基準省令5条の5)

指定訪問看護事業者は、指定訪問看護の提供に関し、利用者に対して特定の医師を指定訪問看護の指示を行う主治の医師とするべき旨、又は次に掲げるサービスを提供する事業者及び施設(以下この条において「事業者等」という。)を利用するべき旨の指示等を行うことの対償として、主治の医師又は当該事業者等から金品その他の財産上の利益を収受してはならない。

  1. 介護保険法第41条第1項本文に規定する指定居宅サービス事業者(介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第11項に規定する特定施設入居者生活介護の事業を行う者に限る。)
  2. 介護保険法第42条の2第1項に規定する指定地域密着型サービス事業者(同法第8条第20項に規定する認知症対応型共同生活介護、同条第21項に規定する地域密着型特定施設入居者生活介護及び同条第22項に規定する地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の事業を行う者に限る。)
  3. 介護保険法第8条第25項に規定する介護保険施設
  4. 介護保険法第53条第1項に規定する指定介護予防サービス事業者(介護保険法第8条の2第9項に規定する介護予防特定施設入居者生活介護の事業を行う者に限る。)
  5. 介護保険法第54条の2第1項に規定する指定地域密着型介護予防サービス事業者(同法第8条の2第15項に規定する介護予防認知症対応型共同生活介護の事業を行う者に限る。)
  6. 介護保険法第46条第1項に規定する指定居宅介護支援事業者
  7. 介護保険法第58条第1項に規定する指定介護予防支援事業者
  8. 前各号に掲げる事業者等と併せて利用する事業者※6であって、当該事業者等と特別の関係にある事業者※7

実務上の影響

 本改正による実務上の影響として、以下のものが考えられます。

1. 医師及び他事業者との間における経済上・財産上の利益の授受に係る規制の強化

 本改正により、指定訪問看護事業者と医師及び他事業者との間における経済上・財産上の利益の授受に関して、詳細な規制が明示的に設けられるに至りました。本改正に関する厚生労働省の解釈通知(「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」(令和8年3月5日保発0305第20号。以下「基準省令通知」といいます。))によりますと、これらの規制の要件該当性については、契約書における文言等の形式的な要素にとどまらず、関係者との間の取引の実態に則したきめ細やかな分析を行うことが求められています※8※9。従前より、ホスピス業界を中心とした指定訪問看護事業者においては、提携する医療機関や他の事業者との間で、形式的には業務委託契約等と銘打ちつつも、取引の実態としては利用者の紹介に応じた成果報酬が設定される利用者紹介契約の性質を有する取引がなされる事例も見受けられ、その妥当性が危ぶまれてきたところですが、今後はこのような取引自体が基準省令への違反と判断される危険性が高まります。

2. 違反の効果

 基準省令への違反は健康保険法等において指定訪問看護事業者の指定取消事由のひとつとされています(健康保険法95条2号)※10。基準省令5条の2及び5条の3(上記改正①及び②)はいずれも訓示的な定めのようにも見受けられますが、これらの規定は、当局によるより広範な監督権限の裏付けとされる可能性がある点にも留意が必要となります。

 特に、基準省令通知は、基準省令5条の3(上記改正②)との関係で「厳に慎むべき」事項の例として、「特定の指定訪問看護ステーションと保険医療機関等が不正な金品の授受を行い経済的に結びつくこと」のほか、「指定訪問看護に付随して指定訪問看護ステーションがリベート、バックマージン等を受け取る等の行為」を明示的に掲げています。当該記載は、その文言上、適用の対象となる財産上の利益の収受の性質について、基準省令5条の5(上記改正④)のように特定の主治医や事業者等への利用者の誘導に限定していないようにも読めることから、具体的にどのような場面が想定されているかについて今後の当局の動向も注視する必要があります。

おわりに

 本改正により、指定訪問看護事業者は、関係者との間の経済上・財産上の利益の授受に関してより慎重な対応が求められます。また、指定訪問看護事業者を対象とするM&A取引におけるデュー・ディリジェンス等の場面においても、これらの基準省令の遵守についてはより慎重な検討を要するものと考えられます。

脚注一覧

※1
高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)、その他の医療保険各法としての船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)、地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)及び私立学校教職員共済法(昭和28年法律第245号)。これらの医療保険各法においても健康保険法88条を参照する等の建付にて同様の定めがありますが、詳細については紙面の制限上割愛します。

※2
健康保険法88条第1項は、「訪問看護」を、「疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にある者・・・に対し、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者が行う療養上の世話又は必要な診療の補助」と定義し、訪問看護を行う事業を「訪問看護事業」と定義した上で、厚生労働大臣が指定する者が訪問看護事業を行う事業所により行われる訪問看護を「指定訪問看護」と定義しています。指定訪問看護事業者は、指定訪問看護を実施した場合には、指定訪問看護に要した費用について、指定訪問看護を受けた者(利用者)等の被保険者に対して「訪問看護療養費」として保険者等から支給されるべき額の限度において、被保険者に代わり直接保険者等から受給することができることとされており、医療保険各法に基づき保険給付を受給することとされています。

※3
指定訪問看護事業者との関係においては、厚生労働省の公表する「令和8年度診療報酬改定について 【訪問看護ステーション向け】」が網羅的な解説として参考になります。なお、今般の診療報酬改定においては、指定訪問看護事業者による同一建物(単一建物)に居住する利用者への漫然かつ画一的な頻回訪問等を通じた不適切な訪問看護療養費の請求を防止する等の観点から、①訪問看護管理療養費の見直し(月の初日の評価を充実するとともに、月の2日目以降については、訪問看護管理療養費1と2を統合し、施設基準の届出を不要とするとともに、1月当たりの訪問日数及び単一建物に居住する利用者数に応じて評価を細分化する。)、②同一建物に居住する利用者への訪問看護の評価の見直し(訪問看護基本療養費(II)等を算定する場合の訪問看護の時間は30分以上を標準とし、20分を下回るものは算定できないこと、同一敷地内の建物も同一建物とすること等の規定の新設のほか、訪問看護基本療養費(II)等やその加算について、1月当たりの訪問日数や建物内の訪問看護実施人数等に応じたきめ細かな評価への見直し。)、③包括型訪問看護療養費の新設(高齢者向け住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションが、当該住まいに居住する利用者に対して、24時間体制で計画的又は随時の対応による頻回の訪問看護を行った場合に1日当たりで算定する包括型訪問看護療養費の新設。)がなされました。また、これに伴い、「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保発0305第19号)においても、「訪問時の利用者側のやむを得ない事情により標準の実施時間を下回る指定訪問看護の実施となった場合等を除き、標準の実施時間を下回る指定訪問看護の実施が、同一日に、同一の利用者に複数回又は複数の利用者に行われるなど、頻繁に行われている場合には、指定訪問看護を実施したとは認められない」、「指定訪問看護の実施に当たっては、…利用者の心身の状況等に応じて妥当適切に行い、漫然かつ画一的なものとならないよう、看護目標及び訪問看護計画に沿って行うこと」、「利用者の心身の状況等を踏まえずに一律に指定訪問看護の日数、回数、実施時間及び人数…を定めることや、定期的な指定訪問看護を実施していない者が指定訪問看護の日数等を定めることは認められない」、「指定訪問看護の提供に当たっては、目標達成の程度及びその効果等について評価を行い、その内容を訪問看護記録書に記録すること。また、必要に応じて訪問看護計画書の見直しを行い、指定訪問看護の改善を図る等に努めなければならない」等の定めが設けられることとなりましたが、詳細については紙面の都合上割愛します。

※4
これまで、保険医療機関については、公的な保険財源に係る請求の適正性等を確保する観点から、療担規則において①適正な手続の確保(療担規則2条の3)、②健全な運営の確保(療担規則2条の4)及び③経済上の利益の提供による誘引の禁止(療担規則2条の4の2)が明示的に定められていました。しかし、同じく医療保険各法に基づき保険給付を受ける指定訪問看護事業者については、基準省令上これらに対応する定めが存在せず、療担規則に定める上述の規制は明示的には及んでいませんでした。昨今、指定訪問看護事業者において、同一建物(単一建物)に居住する利用者への漫然かつ画一的な頻回訪問等を通じた不適切な訪問看護療養費の請求が疑われる事案が相次いでいたこと、また、従前より、高齢者向け住まい(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅等)における入居者の医療・介護サービスの利用に当たって、特定の医療機関や介護サービス事業所によるサービス提供に限定され、又はこれに誘導されていることが問題視されていたことも相まって、今般の診療報酬改定に伴い、基準省令が改正されるに至りました。

※5
健康保険法等に基づき算定される基本利用料から所定の訪問看護療養費等を控除した額等の、基準省令13条に基づき利用者に対して直接請求することが可能とされる利用料を想定したものとなります。

※6
基準省令通知は、「併せて利用する事業者」に該当する場合の具体例として、以下の者がこれに該当するとしています。

  1. 患者が基準省令5条の5第1号及び第2号並びに同条第4号から第7号までに掲げるサービスを利用するとき、同時に患者が居住する高齢者向け住まい等を設置・運営する事業者の事業を利用する場合 当該高齢者向け住まい等を設置・運営する事業者
  2. 患者に基準省令5条の5第1号から第7号までに掲げる事業者等を紹介・斡旋する事業者により、利用者が当該事業者の紹介を受け、紹介先の同条第1号から第7号までに掲げる事業者等を利用する場合 当該紹介・斡旋する事業者

※7
基準省令通知は、基準省令5条の5第1号から第7号までに掲げる事業者と他の事業者の関係が以下のいずれかに該当する場合に、当該事業者と当該他の事業者は「特別の関係にある」と認められるものであるとしています。

  1. 以下のいずれかに該当する場合。

    1. 当該事業者の開設者が、当該他の事業者の開設者と同一の場合
    2. 当該事業者の代表者が、当該他の事業者の代表者と同一の場合
    3. 当該事業者の代表者が、当該他の事業者の代表者の親族等*である場合
    4. 当該事業者の理事・監事・評議員その他の役員等のうち、当該他の事業者の役員等の親族等の占める割合が10分の3を超える場合
    5. (イ)から(ニ)までに掲げる場合に準ずる場合(人事、資金等の関係を通じて、当該事業者が、財務上又は営業上若しくは事業上、緊密な関係にある範囲の事業者を言い、当該他の事業者の経営方針に対して重要な影響を与えることができると認められる場合に限られる。具体的には以下のアからオの場合を含む。)
      1. 当該事業者が当該他の事業者の最終親会社等である場合
      2. 当該事業者が当該他の事業者の最終親会社等の子会社等である場合
      3. 当該事業者が当該他の事業者の最終親会社等の関連会社等である場合
      4. 当該事業者又は当該事業者の親会社、子会社等の関連会社(以下「関連会社」といいます。)が、当該他の事業者(関連会社である場合を含む。)と当該事業者の運営に関するフランチャイズ契約を締結している場合
      5. 当該事業者又は関連会社が、当該他の事業者(関連会社である場合を含む。)と経営等に関するコンサルテーション等を委託している事業者である場合
  2. 上記①のほか、次の(イ)及び(ロ)に掲げる場合

    1. 患者が居住し、又は退院後に居住する高齢者住まい等を設置・運営する事業者が、基準省令5条の5第1号及び第2号並びに第4号から第7号までに掲げる事業者との間に契約その他の金銭の授受関係又は利用者の募集を共同・連携・委託して行うといった関係を有する場合
    2. 基準省令5条の5第1号から第7号までに掲げる事業者等が、当該事業者に対して利用者を斡旋すること等を行う事業者との間に契約その他の金銭の授受関係又は利用者の募集を共同・連携・委託して行うといった関係を有する場合

ここで、「親族等」とは、親族関係を有する者のほか、事実上婚姻関係と同様の事情にある者、使用人及び使用人以外の者で当該役員等から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者、これらの者の親族でこれらの者と生計を一にしている者とされています。

※8
基準省令通知は、基準省令5条の4(上記改正③)の解釈として、以下の指針を示しています。

  1. 金品を提供し、利用者の誘引を行っている場合の具体例として以下のものが挙げられること。
    1. 他の事業者及びその従業員に対して、指定訪問看護ステーションが所定の金額を支払うこと等により、特定の同一建物に居住する利用者の紹介を独占的に受けて、それらの者に対して一律に指定訪問看護を行っている場合
    2. 指定訪問看護ステーションが紹介業者等に対して金品の提供を行い、高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年法律第26号)5条第1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅、老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条第1項に規定する有料老人ホーム又はマンション等の集合住宅等(高齢者向け住まい等)に居住する者の紹介を受けて、当該居住者に対して訪問看護を行っている場合
    3. その他、金品を提供し、利用者の誘引を行っている場合
  2. 金品の提供は、指定訪問看護ステーションと他の事業者の間で契約書に基づき明示的に行われる場合のほか、指定訪問看護ステーションの土地建物賃貸料に金額が上乗せされて提供される場合や、指定訪問看護ステーションと併せて利用する他の事業者等から間接的に提供される等、様々な方法により行われる場合があること。

※9
基準省令通知は、基準省令5条の5(上記改正④)の解釈として、「金品その他の財産上の利益」とは、「金銭、物品、便益、労務、饗応等を指すものである」としています。

※10
基準省令通知においても、基準省令に定める基準を下回るに至った場合、「地方厚生(支)局の指導等の対象となり、この指導等に従わない場合には、当該指定を取り消すことができるものである」ことが明示されています。

本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。


全文ダウンロード(PDF)

Legal Lounge
会員登録のご案内

ホットなトピックスやウェビナーのアーカイブはこちらよりご覧いただけます。
最新情報をリリースしましたらすぐにメールでお届けします。

会員登録はこちら

弁護士等

薬事・ヘルスケアに関連する著書/論文

ヘルスケア・病院・介護に関連する著書/論文

  • HOME
  • 著書/論文
  • 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準の改正と実務上の影響 ~経済上の利益の提供による利用者の誘引の禁止等~