ニュースレター
フィリピンにおける外資規制の最新動向/第13次ネガティブリストの施行
箕輪俊介
- コーポレート
- 一般企業法務
- M&A
- M&A/企業再編
- 海外業務
- アジア・オセアニア
- フィリピン
Publication
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。
EUは外国投資に関するルールの抜本的な見直しを進めており、欧州投資を計画する日本企業は十分に注意を払う必要があります。まもなく、数年にわたる立法交渉を経て、現行の規制に代わるEUの新たな外国投資審査の規制が、新しいEU規則として法制化される見通しです。欧州企業への投資において、長年にわたりEU域外で最も積極的な投資家の一つである日本企業にとって、今回の改正は重要な意味を持ちます。
現行のEUの対内直接投資審査規則(EU’s Foreign Direct Investment (FDI) Regulation)は、2020年10月から施行されていました。同規則によって、国家安全保障上のリスクとなり得る外国投資に関する情報を、EU加盟国と欧州委員会が共有するための協力メカニズムが整備されたものの、加盟国による審査メカニズムの構築は任意とされていました。
この結果、EU域内では制度の整備状況が国ごとに異なる「断片化した」状況が生じました。現行規則に基づく規制の施行後、対内直接投資審査のメカニズムを運用している加盟国の数は11カ国から24カ国へと増加したものの、その実施状況には大きなばらつきがありました。
2026年6月8日に、新規則がEU理事会で採択されました。今後同規則は、EU官報上の公布を経て、公布の20日後に施行される予定です。同規則の適用開始は、施行日の18ヶ月後が予定されています。
現行制度下では、日本企業が行ってきた案件の質の高さを反映して、一部の例外を除いて、日本企業による投資のほとんどは無条件で承認されてきました。しかし、新規則による現行規則の改正により、規制環境は今後、日本企業を含むあらゆる投資家にとってより厳格なものへと変わろうとしています。
新規制では、全ての加盟国は、国内の審査メカニズムを整備し、特定分野への外国投資について事前 審査制度を設けることが義務付けられます。27カ国の全加盟国が、新規則発効後適用開始までの18ヶ月間の経過期間内に、この新たな枠組みを各加盟国において実施する必要があります。 そのため、投資家は、現行制度下のように一部の加盟国における比較的緩やかな制度に依拠することはできなくなります。
特に重要な変更点は、「外国投資」の定義の見直しです。従来、EU域内で設立された法人を通じて行われる投資は、EUの投資審査の対象外とされていました。しかし新規制では、この抜け穴が塞がれ、EU域外の投資家が支配するEU設立法人による投資についても審査の対象に含まれます。さらに、新規制の下で、加盟国は、EU域外の投資家が少数株主であるEU法人による投資についても、審査の対象に含めることができます。欧州で事業を展開してきた日本企業は、従来は現地設立の子会社を用いたスキームにより投資審査の対象外となる余地がありましたが、今後はかかる方法によって審査を回避することができなくなります。
新規則では、EU加盟国が契約締結前の事前承認を義務付けるべき分野のミニマムリストを定めています。対象分野には、以下が含まれます。
また、加盟国は各国の制度において、ミニマムリストに、追加で規制の対象となる分野を設定することも可能です。
全ての加盟国は、自国内で行われるあらゆる外国投資について、当該取引が上記の事前承認が義務付けられる特定分野に該当しない場合でも、職権で審査に付すコールイン(Call-in)権限を持ちます。この権限は、取引完了後少なくとも15ヶ月間行使できるとされています。したがって、特定分野に該当しないように考えられる案件であっても、当局への事前通知後又は取引完了後に審査対象となる可能性があります。企業は取引を計画する段階から、こうした継続的な規制リスクを織り込む必要があります。なお、Call-inの可能性を回避するための任意審査制度を設けることは、加盟国に義務付けられていません。
新規制は2段階のプロセスを導入しています。第1段階(初期審査)は45暦日以内に完了することとされており、延長は認められていません。第2段階(詳細調査)については、EUレベルでは決まった期限は定められておらず、期間の設定は各加盟国に委ねられています。また、複数の加盟国に対して同時に届出が必要となる取引については、それぞれ届出を行うタイミングの調整が求められます。
新規制は、EU域内への投資に関して、加盟国及び欧州委員会が情報を共有するための協力メカニズムを強化します。共通のEUデータベースが整備され、届出の審査結果に関する透明性は一段と高まる見込みです。さらに、9カ国以上の加盟国からの要請があった場合、外国投資に関する電子届出のための任意の共通ポータルが設立される予定です。特に国が関与している投資家や制裁対象の投資家が関与している、又は過去に審査の潜脱が判明した投資家が関与している一定の投資案件については、欧州委員会及び他の加盟国への通知が義務付けられます。
日本企業はEUにおいて概ね良好な立場にあり、日本は技術及び産業サプライチェーンにおけるパートナーと認識されています。これまで、EUの審査メカニズムの下で審査対象となった多くの案件は、是正措置なしに承認されてきました。したがって、一般的な日本企業による投資について状況が劇的に変化する可能性は低いと見られます。他方で、特に次項以降の点については注意が必要です。
日本企業は、新規制が特に重視する分野、すなわち半導体、自動車用電子機器、産業機械、ロボット工学、医薬品及び重要原材料において、幅広く事業を展開しています。デュアルユース品や軍事専用品の重要性も、今後高まる可能性があります。例えば、欧州のEV用電池メーカーに投資する日本の自動車グループや、欧州の重要鉱物のサプライヤーに関与する商社などに、従来は不要であった場面で事前承認が義務付けられるようになります。
オランダやドイツ、その他のEU域内の持株会社のスキームを通じて欧州での事業基盤を構築してきた日本の多国籍企業も少なくありません。従来はこうしたスキームにより、EU域内での取引が投資審査の対象とならずに進められる場合がありましたが、新規制の下では状況が変わります。法務部門及びM&Aチームは、既存のグループ構造を改めて点検し、今後予定している取引について、保有スキームや実行方法が審査対象になり得るかを見直す必要があります。
全ての加盟国に広範なCall-in権限が付与されるため、特定分野外の取引であっても、新規制に基づく審査等のリスクは残ります。物流、金融サービス、消費財などの分野で投資を行う日本企業は、特定分野ではないからといって、審査の対象外とは必ずしもいえない点に留意する必要があります。
新規則は、国が支配する企業や国有企業に特に着目した規制となっています。上記2(f)における加盟国による欧州委員会及び他の加盟国への通知義務に加えて、立法時の説明資料にも、明文で、安全保障と公序の観点から、外国投資家が直接又は間接的に非EU国の政府に支配されているかが審査において考慮され得るとの記載があります。日本のような友好国の政府による支配が審査上どのような意味合いを持つかは、今後の政策動向を注視する必要がありますが、政府機関が相当な持分を保有する日本企業は、これらの類型に該当するものとして、より厳格な審査が行われ得ることを前提に十分準備する必要があります。この点、政府の関与が間接的又は部分的な場合であっても、各局面において各加盟国による重要な考慮要素になり得ることには注意が必要です。
特に、欧州における広域的な買収やJV取引において、複数のEU加盟国に対象資産を有する取引を行う日本企業にとっては、複数加盟国で並行して届出手続を調整することが求められます。複数加盟国における届出に伴って複雑さを増す実務上の調整やスケジュールへの影響については、取引計画の初期段階から早めに検討しておく必要があります。
このようなEUの制度改革は、世界的な傾向と合致しています。投資審査は世界的に厳格化しており、日本企業は複数の法域にまたがる規制環境に対応する必要があります。日本自身も、2026年5月に改正外為法が成立し、事後介入措置が非指定業種にも導入されるほか、従来よりも政府機関横断的な日本版CFIUS制度の導入が見込まれ、外国投資審査規制を大幅に強化しています。
このように、対内・対外双方の投資審査が同時期に強化されていることは、各国政府が国境を越える資本移動をどのように扱うかについて、より幅広い構造的変化が進んでいることを示しています。様々な規制環境下で事業を展開する日本企業にとって、EUでは対内投資家として、日本では自国の規制に基づく監視対象として、コンプライアンスの負担は多方面で増大しています 。
現時点では、EUの外国投資審査規則は未施行であり、経過期間中は各加盟国に国内制度を改正する時間が与えられます。しかし、2028年前半になると見込まれている新規則の施行日を待って準備を先送りすることは、得策ではなく、まずは以下のステップによる対応が考えられます。
EUは引き続き日本からの投資に門戸を開いており、EUの新たな外国投資審査規則もその扉を閉ざすためのものではありません。他方で、取引の前提は変わりつつあり、準備不足によって生じるリスクは、取引にかかる時間だけでなく、取引の確実性、さらには場合によっては最終的な帰結にまで波及し得る形で増大しています。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
ニュースレター
箕輪俊介
論文/記事
(2026年6月)
澤山啓伍、ホアイ・トゥオン(共著)
ニュースレター
鹿はせる、犬飼貴之、船越聖二(共著)
ニュースレター
石原和史
ニュースレター
箕輪俊介
論文/記事
(2026年6月)
澤山啓伍、ホアイ・トゥオン(共著)
ニュースレター
鹿はせる、犬飼貴之、船越聖二(共著)
ニュースレター
石原和史
ニュースレター
鹿はせる、洲脇結衣(共著)
ニュースレター
鹿はせる、犬飼貴之、船越聖二(共著)
論文/記事
(2026年6月)
若江悠、大澤大(共著)
ニュースレター
本田圭、松田岳志、室憲之介(共著)
メディア
(2026年7月)
伊佐次亮介(コメント)
メディア
(2026年7月)
伊佐次亮介(コメント)
メディア
(2026年7月)
伊佐次亮介(コメント)
ニュースレター
リー・ユエン・ヤオ
ニュースレター
本田圭、松田岳志、室憲之介(共著)
論文/記事
(2026年4月)
福原あゆみ
ニュースレター
本田圭、松田岳志(共著)
ニュースレター
福原あゆみ