(1) 当局の調査プロセス
所管当局(EU域外での強制労働の疑義については欧州委員会、加盟国内での疑義については当該加盟国の所管当局)は、強制労働の疑いがある製品について調査を行い、FLRで定める強制労働禁止への違反が認定された場合、製品のEU市場からの排除を命じる決定を下すことができます※5。調査から決定までの大まかな流れについては以下のとおりです。
※本ガイドライン13頁の図を基に作成
調査は、予備段階の調査(予備調査)と本調査の二段階で行われるところ、当局はまず予備調査として、証拠隠滅のおそれ等手続を妨げる事情がない限り、後述する事業者への情報提供要請等を行い※6、事業者からの回答受領後30営業日以内に「実質的な懸念(substantiated concern)」の有無を判断し、これが認められた場合に本調査へ移行します。本調査でも同様に事業者への情報提供要請等が行われ※7、当局が強制労働により生産等された製品であるかの調査を実施します(当局は追加の情報収集のための現地調査を行う権限も有しています)。本調査は、原則として調査開始日から9ヶ月を超えない合理的期間内に終了しなければならないとされており、強制労働禁止の違反については当局側に立証責任があるとされています(FLR 20条)。
なお、本ガイドラインでは、事業者が予備調査の段階において、強制労働の状況に対処するための適切な措置を講じていることを証明した場合には、当局はプロセスの複雑さ、強制労働終了の実現可能性、関与する利害関係者の数、当該事業者の規模・リソースを考慮した上で、当該措置を完了し強制労働を終わらせるための合理的な期間を定めることができるとされており、当該期間内に予備調査の根拠が解消された場合には本調査に進まないことが示唆されています(本ガイドライン4.5.3.2)。そのため、企業としては予備調査の対象となった場合には、強制労働リスクに対して適切なデュー・ディリジェンスを実施していることを示していくことが重要であると考えられます。