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「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会 取りまとめ報告書 ―生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針―」のポイント(上)

著者等
東崎賢治小槻英之井原諄富永有美(共著)

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出版社
長島・大野・常松法律事務所
書籍名・掲載誌
NO&T IP Law Update ~知的財産法ニュースレター~ No.44/NO&T Media, Entertainment and Sports Legal Update メディア・エンタテインメント・スポーツニュースレター~ No.2(2026年8月)
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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。

1 はじめに

 法務省に設置されていた「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」(以下「本検討会」といいます。)は2026年8月7日付で「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会 取りまとめ報告書 ―生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針―」(以下「本報告書」といいます。)を公表しました※1

 生成AIが急速に普及したことにより、誰でも容易に他人の肖像、声等を無断で利用してあたかも当該他人が自ら出演、発声したかのように認識できる画像、映像や音声を生成することが技術的には可能となりました。そのような中で、パブリシティ権の侵害が認められる場合について最高裁として初めて判示したピンク・レディー事件最高裁判決※2の担当調査官を務めた中島基至判事(以下、同判事が執筆した同判決の判例解説※3を「ピンク・レディー事件調査官解説」といいます。)が、2025年1月に発表した論文※4の中で、人の声の精神的価値を保護する人格権に由来する権利である「人声権」という新たな法的概念を提唱するなどしたこともあり、肖像、声等の法的保護について近時活発に議論されていました。

 生成AIの学習段階、生成・利用段階において肖像が使用される場合について、2024年5月にAI時代の知的財産権検討会が公表した「AI時代の知的財産権検討会 中間取りまとめ」※5において、他人の肖像使用に係る肖像権侵害の判断基準や、著名人等の顧客吸引力を有する肖像等の使用に係るパブリシティ権侵害の判断基準については、一般的な場合と同様に考えられ、生成AIに特有の問題はないとされていました※6。しかし、これらの権利はピンク・レディー事件最高裁判決をはじめとする判例により保護を認められ、判例上形成されてきたという性質上、特に、裁判例がない生成AIによる肖像、声等の無断利用事案について、権利侵害に当たる範囲が不明確であると指摘されていました。本検討会は、そのような中、従来の判例法理を踏まえ、パブリシティ権や、肖像等をみだりに利用されない権利の侵害の成否、損害賠償請求の範囲等の不法行為法の解釈適用上の論点やその考え方について必要な整理を行い、当該事案により生ずる民事責任に関して予測可能性を高めることを目的に2026年4月に設置され※7、本報告書が公表されました。本報告書は、これらの内容について解釈指針を示すものであり※8、法的拘束力はないものの、生成AIの利用に伴うパブリシティ権及び肖像等をみだりに利用されない権利の侵害の成否等につき、想定事例の検討を含めた詳細な検討を行っており、実務上参考にすべきものといえます。

 なお、肖像、声等の無断利用事案では、不正競争防止法も問題となり、この点については経済産業省経済産業政策局知的財産政策室が2025年に「肖像と声のパブリシティ価値に係る現行の不正競争防止法における考え方の整理について」という資料を公表しています※9が、本ニュースレターにおいては、本号及び次号にわたり、本報告書の主な検討の対象とされている事項のうち、本号ではパブリシティ権の侵害、次号では肖像等をみだりに利用されない権利の侵害、それぞれの、特に侵害の成否を中心に本報告書の内容を解説します。

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