ニュースレター
令和7年度医療用医薬品の販売情報提供活動調査事業報告書について ~製薬企業主催の講演会等における実務上の留意点
萩原智治、鈴木謙輔(共著)
- 薬事・ヘルスケア
- 医療・製薬・ライフサイエンス
Publication
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2026年8月28日、厚生労働省は、令和7年度医療用医薬品の販売情報提供活動調査事業報告書を公表しました※1・2。本事業は、モニターとなる医療機関等から、製薬企業等による販売情報提供活動のうち適切性に疑義のある事例を収集し、有識者による検討を経て、その結果を公表するものです。調査対象には、MRによる対面・オンラインでの情報提供のほか、製薬企業主催の講演会、医学専門誌、製薬企業のウェブサイト等も含まれています。
令和7年度には、モニター調査において、延べ6件の医薬品に関する情報提供について広告違反が疑われ、違反が疑われた項目は延べ11項目でした。令和6年度の延べ18件・23項目から件数は減少しており、件数・項目ともに、調査事業が開始して以来、最小を記録しました。
違反が疑われた11項目のうち、最も多かったのは「エビデンスのない説明を行った」事例で4件、次いで「有効性のみを強調した(副作用を含む安全性等の情報提供が不十分な場合も含む)」事例が2件でした。このほか、誇大な表現、未承認の効能効果・用法用量、事実誤認のおそれのある表現、他社製品に関する不適切な表現等が取り上げられています。違反が疑われた項目の総数は前年度から減少した一方、科学的根拠の示し方や、有効性と安全性のバランスという基本的な点は、引き続き主要な論点となっています。
また、今回の報告書では、製薬企業主催の講演会における情報提供が複数取り上げられています。具体的には、演者である医師が未承認の効能効果等に言及した事例や、十分なエビデンスを示さずに有効性に関する説明を行った事例等です。報告書は、演者が製薬企業の従業員ではない場合であっても、製薬企業が主催し、その依頼を受けて講演が行われる場合には、講演内容について製薬企業が相当程度関与することが通常であるとして、原則として製薬企業による販売情報提供活動・広告行為とみなされ、製薬企業による違反行為となる場合があるとの考え方を示しています。
このほか、著名な医師・研究者の見解や感想を紹介する形であっても、それ自体が科学的根拠に代わるものではないことが示唆されています。報告書には、統計学的な検討が行われていない試験結果について、臨床試験に関与した医師の見解を引用して有効性を説明した事例が掲載されています。
今回の報告書を踏まえると、製薬企業においては、従来のMR向け研修やプロモーション資材の審査に加え、主催・協賛する講演会についても、これまで以上に慎重に、法令や販売情報提供活動ガイドラインを踏まえた対応を講じる必要があると考えられます。講演スライドの事前確認だけでなく、演者への依頼内容、質疑応答で取り扱う範囲、未承認情報を扱う必要がある場合の位置づけ、不適切な情報提供が生じた場合の訂正等の事後対応等について、営業部門、メディカル部門及びコンプライアンス部門がそれぞれ明確に理解し整理しておくことが考えられます。
また、「著名な医師が述べている」「他の医療機関で評価されている」といった説明については、誰の発言であるかだけでなく、その内容を裏付ける客観的・科学的根拠があるかを確認することが重要と考えられます。有効性を説明する際には、安全性その他の重要な情報とのバランスにも配慮し、説明時間の制約がある場合を含め、情報提供全体として誤解を生じさせない構成となっているかを確認することが望まれます。
令和7年度の件数減少は、業界における継続的な取組の一つの表れとも考えられます。他方で、今回示された事例は、講演会の企画・運営や口頭説明など、記録に残る資材の審査だけでは対応しにくい場面について、改めて社内運用を確認するための参考になるものといえます。
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