1. 全体像
「医療DX」という用語が政府の中で広く用いられるようになったのは、2022年秋頃からのことです。2022年10月には内閣官房に「医療DX推進本部」が設置され、これに対応する形で2022年9月には厚生労働省で「「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム」が立ち上げられました。さらに、2023年7月には厚生労働省に「医療DX推進室」が設置され、現在まで厚生労働省の医療DX政策を統括・推進しています。
厚生労働省は、「医療DX」を以下のように定義していますが、この定義のみでは、具体的に何を指し示しているのか、必ずしも明らかではありません。
保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤(クラウドなど)を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること
医療DXの内容を具体的に理解するにあたって、医療DX推進本部は2023年6月に「医療DXの推進に関する工程表」を公表しています。それ以降現在に至るまでの医療DX施策は、概ねこの工程表に沿った形で進んできています。工程表の中でも特に強調されているのが「全国医療情報プラットフォーム」の構築です。「全国医療情報プラットフォーム」については、厚生労働省は「全国医療情報プラットフォームの全体像」という資料を公表しており、電子処方箋管理サービスや電子カルテ情報共有サービス、オンライン資格確認システム等の位置づけや相互の関係、医療・介護データの二次利用に向けた基盤の創設、PHRの活用等について記載されています。
「医療DXの推進に関する工程表」と「全国医療情報プラットフォームの全体像」の二つの資料を読み解くことが医療DX施策を理解する上での第一歩かつ当面のゴールといってよいでしょう。
● 医療DXの推進に関する工程表
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/iryou_dx_suishin/pdf/suisin_zentaizo.pdf
● 全国医療情報プラットフォームの全体像
