論文/記事
Chambers Global Practice Guides International Trade 2026 Japan – Law & Practice
(2025年12月)
鹿はせる、近藤亮作、小泉泰聖(共著)
- 国際通商・経済制裁法・貿易管理
- M&A
- M&A/企業再編
Publication
ニュースレター
米国輸出管理規制アップデート~エンティティ・リストの更新とFAQsの公表~(2021年1月)
米国輸出管理規制アップデート~2024年12月対中国向け半導体輸出規制の拡大~(2025年3月)
米国輸出管理規制アップデート~AI・先端半導体に関する新たなガイダンスの公表(前編)~(2025年8月)
※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。
2023年10月17日、米国商務省産業安全保障局(the U.S. Department of Commerce’s Bureau of Industry and Security、以下「BIS」といいます。)は、2022年10月に施行された中国による先端コンピュータチップの調達、スーパーコンピュータの開発及び維持、並びに先端半導体の製造に関する能力を制限することを目的とした輸出管理規則(Export Administration Regulations、以下「EAR」といいます。)を強化するための暫定最終規則(以下「2022年暫定最終規則」といいます。)※1を改訂する、新たな2つの暫定最終規則案(Export Controls on Semiconductor Manufacturing Items※2及びImplementation of Additional Export Controls: Certain Advanced Computing Items; Supercomputer and Semiconductor End Use; Updates and Corrections Interim Final Rule※3。以下総称して「本暫定最終規則」といいます。)を公表しました※4。2022年暫定最終規則では対中国向けの輸出につき著しい規制強化がなされていましたが、本暫定最終規則では、従前の規制の迂回を防止しEARによるコントロールの実効性を高める観点から、先端コンピューティング及び半導体製造装置関連の規制の明確化・更なる規制強化が図られています。なお、本暫定最終規則は2023年11月17日から施行が開始されていますが、2023年12月18日までパブリックコメントが募集されています。
また、BISは、本暫定最終規則の公表にあわせて、先端コンピュータ関連の計13社の中国企業を新たにエンティティ・リスト※5に掲載することを公表しています。
本ニュースレターではこれらの点を含むEARに関する最新のアップデートについて紹介します。
本暫定最終規則は計400ページを超える内容となっているため、本ニュースレターの性質に照らしてその詳細を取り扱うことはできませんが、特に注目すべき2022年暫定最終規則からの変更点は以下のとおりです。なお、本暫定最終規則は2022年暫定最終規則に対してBISに寄せられた各質問に対する回答を含んでおり、EARの解釈についての重要な指針を示しているため、特に半導体及びスーパーコンピュータ関連のサプライチェーンに関与する企業においては、本暫定最終規則の内容を正確に理解する必要があります。
2022年暫定最終規則は、一定の技術的要件を満たす集積回路のみを規制対象としており、当該技術的要件を下回る集積回路については、原則輸出許可(ライセンス)を取得することなく引き続き中国向けの取引を行うことが可能とされていました。他方、本暫定最終規則は、近年の技術革新を踏まえ、2022年暫定最終規則にて新たに追加されたECCN 3A090が規定する先端コンピューティング用集積回路の技術的要件を緩和し、規制対象の範囲を拡大しています。具体的には、対象となる集積回路につき”interconnect bandwidth”の技術的要件を除外し、新たに”performance density”(一つ又は複数の集積回路のパフォーマンス値の合計を用いた基準)の要件※6等が追加されています。
更に、新たな許可例外プログラムが創設され、ECCN 3A090及び4A090に含まれる一定の集積回路(技術的要件を一定の範囲内で下回るハイパフォーマンスではない集積回路)について、カントリー・グループ※7で「D:1」、「D:4」又は「D:5」に指定された国への輸出・再輸出・国内移転の許可例外を設けるとともに、マカオ又はカントリー・グループで「D:5」に指定された国(中国を含みます。)に輸出・再輸出する場合は事前に通知が必要とされ、米国政府は当該通知から25日以内に、新たな許可例外の適用を認めるか、輸出許可を求めるか決定することとされています。このような技術的要件の変更及び通知プログラムの導入により、より広範な先端コンピューティング用集積回路がEARの規制対象に含まれることとなります。
本暫定最終規則は、中国企業の子会社への輸出を通じたEARの迂回を防止するため、以下の新規制を導入しています。
半導体製造装置関連の規制に関する、2022年暫定最終規則からの主要な変更点は以下のとおりです。
米国人(US Person)※12による中国所在の半導体製造施設向けサービスに対する規制内容が、マカオ又はカントリー・グループで「D:5」に指定された国(中国を含みます。)の施設を含む形で拡大・明確化されています※13。
BISは、2023年10月17日、米国の国家安全保障及び外交政策上の利益に反する活動に従事していることが判明した人工知能(AI)向けの半導体開発を手掛ける中国スタートアップの上海壁仞智能科技(Biren Technology)及びGPUデザインに特化した摩尔线程(Moore Thread Intelligent Technology (Beijing) Co.)の2社とその子会社(合計13社)をエンティティ・リストに新たに追加しました。これにより、これらの会社に対して集積回路を製造・提供している半導体製造工場は、事前に輸出許可が求められることとなります。
上記のとおり、本暫定最終規則は、米国政府が中国向けの高度な集積回路や半導体製造装置の輸出に対して、引き続き強い姿勢で臨むことを示したものであり、今後更なる追加措置が行われることも予想されます。また、2023年4月19日付でファーウェイ向けの直接製品規制に違反したとして米国のハードディスクドライブ製造企業であるシーゲイト・テクノロジーに対して3億ドルの罰金が課されるなど※14、近時EAR違反に対する非常に重い罰則が課される事例が見受けられ、米国政府が強制措置を含め、EARに関連するコンプライアンスを向上させたいという明確な意思を有していることが伺われます。そのような状況において、米国・中国の双方でサプライチェーンに組み込まれる日本企業にとっては、影響のある法令のアップデートに関して、引き続きその最新の動向について注視する必要があります。
※5
エンティティ・リストとは、EARのもとで整備されている、米国の国家安全保障や外交政策に反する活動に関与していると考えられる個人、法人及び団体等のリストのことをいいます。エンティティ・リスト及びエンティティ・リスト掲載者への輸出規制の詳細は、当事務所発行の米国最新法律情報No.53「米国輸出管理規制アップデート~エンティティ・リストの更新とFAQsの公表~」(2021年1月)をご確認ください。
※6
当該要件の追加は、複数の集積回路の処理能力を総合して見た場合には規制対象となる1つの集積回路と同等の処理能力を有するものの、複数の集積回路に分散していることによって各集積回路が2022年暫定最終規則の定める技術的要件を満たさず、その結果ECCN 3A090の適用を回避しようとする動きが見られたため、これに対処するためのものとされています。
※9
2022年暫定最終規則では、先端コンピューティング用の直接製品に関する新規制において、無許可で対象となる直接製品の輸出・再輸出・国内移転を行うリスクを回避するために、問題となる製品のサプライヤーから、当該製品が当該規制要件を満たす直接製品かどうかの確認書(certification)を受領することができる旨が規定され、当該確認書のフォームが本暫定最終規則に付属されていました。
※10
シリコン、炭素ドープシリコン、シリコンゲルマニウム用に設計された特定の装置やイオンビーム蒸着装置等が含まれることとされています。
※11
当該集積回路として、(A)非平面トランジスタアーキテクチャーを使用する又は16/14ナノメートル以下の製造技術ノードを使用するロジック集積回路、(B)128層以上のNAND型メモリ集積回路、又は(C)18ナノメートルハーフピッチ以下の製造技術ノードを使用するDRAM集積回路が指定されています。
※12
(i)米国籍の個人若しくは米国永住権を有する個人(いずれも所在地を問わない。)、(ii)米国内の個人、団体、その他の組織(国籍を問わない。)、又は(iii)米国の法令にしたがって設立された法人(その外国の支店、事務所等を含む。)と定義されています。
※13
2022年暫定最終規則では、米国人(US Person)による、中国の半導体施設での集積回路の開発又は製造に向けた一定の行為が新たに許可の対象とされていました。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
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