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『インドビジネス法詳説』
商事法務 (2025年10月)
長島・大野・常松法律事務所(編)、池田順一、松永隆之、鐘ヶ江洋祐、井本吉俊、山本匡、洞口信一郎、田中亮平、安西統裕、水越政輝、中所昌司、鍋島智彦、早川健、梶原啓、熊野完、一色健太、小西勇佑、高橋和磨、錦織麻衣、シェジャル・ヴェルマ(共著)、ラシミ・グローバー(執筆協力)
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※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。
消費者庁に設置されていた「ステルスマーケティングに関する検討会」が、2022年12月2日、報告書案(以下「本報告書案」)を公表しました。
近年の消費生活のデジタル化の進展に伴い、インターネット広告市場は、マスメディア4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の広告市場規模を上回るなど拡大が著しく、特に、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)上で展開される広告については、その傾向が顕著となっています。このような状況の中で、広告主が自らの広告であることを隠したまま広告を出稿するなどの、いわゆるステルスマーケティングの問題がより一層顕在化していることが指摘されています。
これまでも、日本弁護士連合会が2017年2月16日付けで「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」を公表したほか、一般社団法人日本インタラクティブ広告協会やWOMマーケティング協議会が自主規制を定めてステルスマーケティングを防止する取組みを行ってきました。しかし、諸外国ではステルスマーケティングに対する法規制が存在する一方で、日本においては、現状、ステルスマーケティングによってなされた表示内容が著しく優良・有利であると誤認させるものであれば、事業者が優良・有利誤認表示をしたものとして景品表示法(以下「景表法」)に違反することになりますが※1、景表法はステルスマーケティングという手法自体を規制していません。
そこで、本報告書案においては、適切な表示を実現する観点から、ステルスマーケティングを景表法上の規制対象として指定することが提言されました。本報告書案について、2022年12月15日まで意見の募集が行われ、その結果を踏まえて、報告書として取りまとめられることが予定されています。
景表法は、「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的と」し(景表法第1条)、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示」を規制しています(景表法第2条第4項)。
そして、景表法が禁止しているのは以下の表示であるところ、ステルスマーケティングの手法、すなわち広告であるにもかかわらず広告であることを隠す行為は、それだけでは以下の表示には該当せず、規制されていません。
本報告書案は、以下の観点から、結論として、ステルスマーケティング(広告であるにもかかわらず広告であることを隠す行為)に対する景表法による規制の必要性があると提言しました。
本報告書案において、ステルスマーケティングに対する具体的な規制の在り方について、以下の提言がなされました。
本報告書案において、景表法第5条第3号に基づきステルスマーケティングを規制する告示の案として、以下の内容が妥当であると提言されました。すなわち、景表法第5条第3号に基づく告示において、以下の行為をステルスマーケティングとして禁止することが提言されています。
「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの。」
本報告書案において、上記(1)の告示案に関する運用基準の方向性について、以下のとおり整理されました。告示案は、①事業者の表示であり、かつ、②一般消費者が当該表示であると判別することが困難であることの2つの要件から構成されているため、各要件の解釈・適用についての方向性を示すものです。
「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」となるのは、事業者が「表示内容の決定に関与した」とされる場合である(平成20年5月23日東京高裁判決(株式会社ベイクルーズによる審決取消請求事件))。
(i) 「事業者が表示内容の決定に関与した」とされるものについて
(ii) 「事業者が表示内容の決定に関与した」とされないものについて
「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」かどうかについては、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうかを表示内容全体から判断することになる。
(i) 一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていないものについて
(ii) 一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているものについて
ステルスマーケティングについては、消費者から批判を受けやすいものであるものの、これまでは、その表示内容自体が実際よりも優良または有利であると誤認させる場合でなければ基本的に景表法の規制対象となりませんでした。しかし、本報告書案に従い指定告示の指定が行われた場合は、ステルスマーケティングという手法自体が一般的・包括的に規制されることになりますので、各企業において、ステルスマーケティングに該当する、又は該当すると疑われ得るような方法がとられていないか、自社の広告の体制を見直すことが求められます。また、各企業において、今後、ステルスマーケティングにあたる表示が行われないよう表示を管理するルールや体制を整える必要も生じると思われます。さらに、SNSや口コミサイトを提供している事業者にとっても、利用規約の修正等により、ステルスマーケティングに該当するような投稿や口コミが自己のサイトになされないように確保する必要性がより一層高まることとなります。
指定告示の指定にあたっては運用基準が定められることが想定されており、また施行までに準備・周知期間が設けられると思われますので、今後は、消費者庁から発表されるであろう報告書の最終案、指定告示の内容に加えて運用基準等にも注意し、その内容をよく検討し、これらに沿った対応が求められるものと考えられます。
※1
事業者が指示したインフルエンサーの当該商品に関するSNSの投稿も含めて、事業者による優良誤認表示であると認定した例として、令和3年11月9日付け株式会社アクガレージ及びアシスト株式会社に対する措置命令。
※2
平成14年6月7日東京高裁判決(更生会社株式会社カンキョー管財人による審決取消請求事件)において、「およそ広告であって自己の商品等について大なり小なり賛辞を語らないものはほとんどなく、広告にある程度の誇張・誇大が含まれることはやむを得ないと社会一般に受け止められていて、一般消費者の側も商品選択の上でそのことを考慮に入れている」との経験則が示されています。
※3
アフィリエイト広告等に関する検討会の報告書や指針等の改正に関する詳細な解説は、森大樹、カオ小池ミンティ、小林菜摘「『アフィリエイト広告等に関する検討会報告書』をふまえた企業対応」(ビジネス法務2022年9月号)、NO&T Client Alert 2022年7月15日号・テクノロジー法ニュースレター 2022年7月No.23「アフィリエイト広告等に関して講ずべき表示の管理措置等を踏まえた指針等の改正」、NO&T Client Alert 2022年3月1日号・テクノロジー法ニュースレター 2022年3月No.9「アフィリエイト広告等に関する検討会の報告書の公表」をご参照ください。
本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスを構成するものではありません。また見解に亘る部分は執筆者の個人的見解であり当事務所の見解ではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。個別具体的事案に係る問題については、必ず弁護士にご相談ください。
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